更新日: 2021.08.20 その他年金
別居中の夫が亡くなっていた…。そんな場合、遺族年金はどうなる?
今回は遺族年金の受給要件をおさらいするとともに、別居中の妻や子どもへの対応について解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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遺族年金の受給要件
遺族年金には遺族基礎年金そして遺族厚生年金があり、それぞれで受給要件が異なります。
■遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金を受け取るためには、死亡した人によって生計を維持されていた子どものいる妻(配偶者)、もしくは子どもであることが要件です。
子どもの要件は、18歳になった年の3月31日までであること、その子どもが障害を持っている場合であれば20歳未満で障害年金等級が1級もしくは2級であることです。
■遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の受給要件は、遺族基礎年金と比べ対象範囲が広くなっていることが特徴です。
まず、死亡した人によって生計を維持されていた妻そしてその子どもや孫であることが要件です。子どもの要件は遺族基礎年金と同じです。さらに、支給開始は60歳からですが、55歳以上の夫、父母、祖父母も対象となります。
ただし、子どものいない30歳未満の妻は、5年間の有期給付であることに注意が必要です。
(出典:日本年金機構「遺族年金」(※1))
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生計を維持されていたとは?
遺族年金を受け取るための要件の一番のポイントは、亡くなった人によって生計を維持されていたかどうかです。この生計の維持については、以下のとおりとなっています。
■同居していること
同居していることが要件ですが、別居していた場合でも仕送りなどがある場合は生計を維持されていたとみなされます。また、健康保険の扶養親族である場合も同様です。
■年収が一定額以下であること
配偶者の前年の年収が850万円未満、または所得が655万5000円未満であることが要件となっています。
(出典:日本年金機構「生計維持」(※2))
別居中の妻が遺族年金を受け取れるケースとは?
では、別居中の場合、どのようなケースであれば生計を維持されていたと認められ、遺族年金を受け取ることができるのでしょうか。
■生活費などを振り込んでもらっていた事実が確認できる
例えば、毎月の生活費や養育費などを振り込んでもらっていて、その事実が通帳などで確認できることが必要です。手渡しなどで受け取っていた場合は事実を証明することが難しいことがあり、遺族年金が受け取れない可能性があります。
■単身赴任などで定期的に家に帰ってきている
別居の理由はさまざまです。単身赴任などで別居している場合であれば、定期的に家に帰ってきているなどで生計を維持していることが分かります。
■夫からの暴力から逃れるために別居している場合
夫の暴力などが原因で夫から逃れるために別居している場合であれば、生計を維持していると認められることがあります。
別居中の妻が遺族年金を受け取れないケース
以下のケースに当てはまる場合は、遺族年金を受け取ることはできません。
■経済的な支援を受けていない
別居中の夫から、生活費などの支援を受けていない場合は、生計を維持しているとみなされず、遺族年金を受け取ることができません。
■年収の基準を超えている
妻が働いており、年収および所得の基準(年収850万円未満、所得655万5000円未満)を超えていると遺族年金を受け取ることができません。
まとめ
別居中の妻が遺族年金を受け取るには、死亡した夫によってが「生計を維持している」ことの証明が必要です。
生活費の振り込みなど、経済的な援助を受けているのであれば生計を維持していると認められますし、健康保険の扶養親族となっているのであれば、その保険料を支払ってもらっているという意味からも生計を維持しているということになります。
また、そのほかにも定期的に連絡を取り合っているかどうかも判断基準となります。
単身赴任や病気の療養などで別居している場合は、生計の維持を証明することに大きな問題はないと思います。しかし、離婚協議中などで別居している場合は、生計の維持についての証明ができるようにしておく必要があります。
もちろん、離婚後であれば、妻は遺族厚生年金を受け取ることはできません。子どもがいる場合は子どもが受給要件を満たしていれば、子どもは遺族年金を受け取ることができます。
ただし、この場合に受け取れる遺族年金は遺族厚生年金のみであり、遺族基礎年金は受け取れませんので注意が必要です。
出典
(※1)日本年金機構「遺族年金」
(※2)日本年金機構「生計維持」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員