更新日: 2021.09.06 その他年金
年金受給資格に満たない加入者が死亡した場合、遺族年金はどうなる?
遺族基礎年金、遺族厚生年金にはそれぞれ受給要件があり、これを満たさなければ遺族年金を受け取ることはできません。このとき、遺族の救済措置は無いのでしょうか。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がある
まず、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)の受給要件を確認します。
遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金の受給要件は、以下の3つの要件で構成されています。
(1)加入者要件(死亡した人に関する要件)
(2)受給対象者(年金を受け取る人に関する要件)
(3)保険料納付要件(保険料納付に関する要件)
加入者要件は、以下のいずれかを満たす必要があります。
●死亡時、国民年金の被保険者であった
●死亡時、国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満で、日本国内に住所があった
●死亡時、老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あった
受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人に限られます。
●子のある配偶者
●子
保険料納付要件は、以下のとおりです。
●死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること
(令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がなければ受給可)
遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の受給要件は、以下の3つの要件で構成されています。
(1)加入者要件
(2)受給対象者
(3)保険料納付要件
加入者要件は、以下のいずれかを満たす必要があります。
●死亡時、厚生年金保険の被保険者であった
●死亡時、厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内であった
●死亡時、1級または2級の障害厚生(共済)年金を受け取っていた
●死亡時、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あった
受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人に限られます。
●妻
●子、孫
●55歳以上の夫、父母、祖父母
保険料納付要件は、以下のとおりです。
●死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること
(令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がなければ受給可)
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国民年金には独自給付がある
遺族年金を受けられないときでも、国民年金の独自給付により年金を受けられる場合があります。国民年金の独自給付には「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
厚生年金保険には、このような給付はありません。
寡婦年金の受給要件
寡婦年金の受給要件は、以下の2つの要件で構成されています。
(1)加入者要件
(2)受給対象者
加入者要件は、以下の要件を満たす「夫」です。
●死亡日の前日において、国民年金第1号被保険者 (任意加入被保険者を含む) の保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある
●死亡日までに、老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取ったことがない
受給対象者は、以下の要件を満たす「妻」です。
●夫によって生計を維持されていた
●夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上あった
●繰り上げ受給の老齢基礎年金を受け取っていない
また、以下の点には注意が必要です。
●妻が他の年金を受け取っている場合は、いずれかを選択しなければならない
●寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方を選択しなければならない
死亡一時金の受給要件
死亡一時金の受給要件は、以下の2つの要件で構成されています。
(1)加入者要件
(2)受給対象者
加入者要件は、以下のとおりです。
●死亡日の前日において、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある
●死亡日までに、老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取ったことがない
受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人に限られます。なお、優先順位は第1順位が最も高く、第6順位が最も低くなっています。
●配偶者(第1順位)
●子(第2順位)
●父母(第3順位)
●孫(第4順位)
●祖父母(第5順位)
●兄弟姉妹(第6順位)
また、以下の点には注意が必要です。
●遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されない
●寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方を選択しなければならない
●死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年
まとめ
年金受給資格に満たない加入者が死亡した場合、遺族年金は受給できません。しかし、国民年金には独自給付(寡婦年金、死亡一時金)があり、これらを受給することができる可能性があります。
年金受給資格がないからといって請求を諦めるのではなく、寡婦年金、死亡一時金が受給できるかどうか確認してみるとよいでしょう。
出典
日本年金機構 「遺族年金ガイド」
日本年金機構 「遺族に支払われる年金」
日本年金機構 「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
日本年金機構 「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
日本年金機構 「寡婦年金」
日本年金機構 「死亡一時金」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー