更新日: 2021.09.20 その他年金
夫婦の年代別に見る! 定年後、年金はいくらもらえる?
では、実際に私たち現役世代が年金をもらえるころには、支給額はいくらになっているのでしょうか。生年度別に、夫婦2人が65歳で受け取れる年金について見ていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
経済成長と労働参加が順調に進んだ場合
まずは厚生労働省が発表している資料において、最も経済成長と労働参加が進んだケース、つまり順調に日本が成長していった場合の数値から見ていきましょう。厚生年金と国民年金に分けて確認します。
生年度別に見た将来の厚生年金の標準的な年金額
生年度別に見た将来の厚生年金の標準的な年金額(厚生年金に加入する夫と専業主婦の妻、2人分の国民年金を含む)の見通しについては、下記のとおりになります。
出典:厚生労働省 「2019(令和元)年財政検証関連資料」
2019年度において30歳の夫婦は、年金の受給開始年齢である65歳到達時には月額29万7000円の厚生年金を受け取ることができるという試算になっています。40歳は25万7000円、50歳は24万円とされています。
それぞれの所得代替率(現役世代の手取り収入と比較した年金の割合)は、30歳の夫婦で51.9%、40歳で52.4%、50歳で57.2%です。
生年度別に見た将来の国民年金の年金額の見通し
出典:厚生労働省 「2019(令和元)年財政検証関連資料」
上記の表は国民年金について加入者1人当たりの受給額の試算になっており、夫婦で受け取るのであれば倍額に換算する必要があります。将来の受給額は、2019年度において30歳の夫婦であれば、65歳に達したときに月額15万2000円、40歳と50歳は13万4000円と推定されています。
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経済成長と労働参加が順調に進まなかった場合
次は、経済成長と労働参加が伸び悩んだ場合の数値を見ていきましょう。こちらも厚生年金と国民年金に分けていきます。
生年度別に見た将来の厚生年金の標準的な年金額
出典:厚生労働省 「2019(令和元)年財政検証関連資料」
上記の試算によれば、仮に日本の成長が順調とはいえない場合でも、2019年度において30歳の夫婦は65歳到達時には20万6000円の年金を受け取ることができる見込みです。40歳は20万7000円、50歳は20万9000円となり、所得代替率は30歳夫婦で45.6%、40歳で49.6%、50歳で54.2%です。
経済成長が順調なケースほどではありませんが、ある程度の給付水準は確保できるようなデータになっています。
生年度別に見た将来の国民年金の年金額の見通し
では、経済成長が思うように進まなかった場合の国民年金ではどうでしょうか。
出典:厚生労働省 「2019(令和元)年財政検証関連資料」
上記は国民年金の加入者1人当たりの受給額なので、夫婦2人分に換算すると、2019年度において30歳の夫婦が65歳に達したときに受け取れる年金額は月額10万4000円です。40歳は11万2000円、50歳であれば12万2000円を受け取ることができる試算となっています。
世代間の年金格差は埋まらない
ここまで見てきた将来の年金額の見通しでは、厚生年金の所得代替率は世代を追うごとにどんどん低くなっていくことが分かります。
特に経済成長が順調ではない場合における所得代替率は、2019年度の65歳が60%越えなのに対し、その時点で30歳の方が65歳になるころには45.6%と大きく減少しています。それに加え、単純な年金額も1万5000円ほど減少するであろう試算となっています。
仮に経済が順調に成長していったとしても、単純な年金額は増加しますが、所得代替率は10%近くも下がります。
さらに今後、年金の受給開始年齢が後ろ倒しとならない保証はありませんし、年金保険料が上がっていかないとも限りません。実際、過去には受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられており、直近では年金の繰り下げ受給の上限が75歳まで広がる法改正もなされました。
そういった事情をかんがみると、年金の世代間格差は狭まるどころか、広がっていくのではないでしょうか。
大切なのは老後に向けてどう準備するか
今回、厚生年金と国民年金についての将来の見通しについて紹介しました。これを見て、ただ年金の世代間格差について嘆くだけでは意味がありません。
大切なのは、こうした試算を基に、どう将来へ備えていくかです。現在の若い方ほど年金の世代格差が大きくなるという反面、老後までの時間が長く、それだけ準備期間に使えるということでもあります。
将来の年金見込額はあくまでも参考程度にとらえ、今からどう老後に備えていくべきなのか、できる限り前向きに考えていきたいものです。
出典
厚生労働省 2019(令和元)年財政検証関連資料
厚生労働省 国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し ― 2019(令和元)年財政検証結果 ―
厚生労働省 令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:柘植輝
行政書士