更新日: 2021.09.08 その他年金

繰下げ受給の上限年齢が75歳までになったことによる影響は? 繰上げ受給は損する?

執筆者 : 柘植輝

繰下げ受給の上限年齢が75歳までになったことによる影響は? 繰上げ受給は損する?
年金を繰り下げ受給できる年齢が、最長75歳までとなることが決定しました。これにより、私たちの年金はどのような影響を受けるのでしょうか。年金の繰り下げ受給と繰り上げ受給について見ていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金の繰り下げ受給が75歳までとなるのはいつから?

2022年4月からは、現在60歳から70歳の間で選択できる年金の受給開始時期の上限が拡大され、75歳まで繰り下げできるようになりました。
 
繰り下げをすると1ヶ月当たり0.7%、繰り下げた期間に応じて年金額が増額されます。例えば、75歳まで繰り下げたとすると、本来よりも84%増額された年金を将来にわたって受け取れるということになります。
 

年金の繰り下げが75歳までになることによる影響は?

年金の繰り下げが75歳まで可能となることで私たちに何か大きな影響があるかといえば、繰り下げを選択しない方にとっては特に大きな影響はないといえるでしょう。
 
働き方やライフプランに応じて年金の受給開始時期の選択肢が広がり、選択によっては年金の受給額を大幅に増やせるという意味ではプラスの影響があるといえます。
 
しかし、年金の繰り下げをして受給額を増やしたとしても、請求前に亡くなってしまえば、それ以降の年金は一切受け取れなくなってしまいます。また、額面上は年金が増えるものの、その分、税金や社会保険料など引かれる金額も高くなるため、思ったほど実際の年金額は増えないというのが現実です。
 
その他、明確にマイナスとなり得る要素があるとすれば、在職老齢年金(厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受給している場合、給与・賞与と年金額に応じて年金の一部または全部が支給停止される仕組み)の影響を受ける部分は繰り下げの対象にならないこと、繰り下げ中は加給年金(一定の条件の配偶者が65歳まで加算される年金)が支給されないといったことでしょう。
 
ただ、これらも年金の繰り下げを選択しない方には特に影響はないため、過度に気にする必要もないといえます。
 

年金の繰り上げ受給は損?

年金の繰り下げ受給の相談があると、必ずといっていいほど繰り上げ受給の話題にもなり、繰り上げ受給は損になるのかといった質問も出てきます。
 
この点については、繰り上げ受給が損であるとは一概には言い切れません。確かに年金の繰り上げをすると、1ヶ月につき0.5%(2022年4月以降は0.4%)減額された年金額を生涯にわたって受け取り続けることになり、一見すると大きく損をするように思えます。
 
しかし、人はいつ亡くなってしまうかも分からないですし、経済状況によっては年金を繰り上げ受給すべきという場合もあります。長期的に見たとき、年金の繰り上げは減額分だけ損をするという点については事実ですが、その他の面を含めると、必ずしも損をしているとは言い切れません。
 
年金の繰り上げ受給を考えているが損をしてしまうのではないかと悩んだときは、減額される金額面だけではなく、早期にお金を手元に用意できるというメリットや、お金を必要とする理由などから総合的に判断するようにしてください。
 

年金の繰り下げと繰り上げについては慎重な判断を

今後は年金の繰り下げ受給の上限が75歳までになるとはいえ、私たちの年金に大幅な変化が生じるわけではなく、あくまでも受給開始時期の選択肢が広がっただけに過ぎません。
 
年金の繰り下げと繰り上げについては、年金額のみから損得が語られることもありますが、それでは本質をつかんだ考えができているとは言いにくいでしょう。
 
年金の受給を75歳まで繰り下げられるようになったことで、繰り下げや繰り上げについてどうするか悩んだときは、減額分や増額分だけでなく、受給開始時期を変えることの必要性など総合的に考えるようにしてください。
 
出典
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
厚生労働省 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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