更新日: 2021.09.14 その他年金

障害年金のウソ? ホント?(1)「病気やけがの種類は問われない?」

障害年金のウソ? ホント?(1)「病気やけがの種類は問われない?」
障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。
 
そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第1回は「病気やけがの種類は問われない? 」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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あらゆる傷病が対象といえるが……

国民年金法や厚生年金保険法では、疾病や負傷(以下、「傷病」と表記します)で障害の状態になった人に障害年金を支給することを定めていますが、傷病の種類にまでは触れていません。
 
このため、あらゆる傷病が障害年金の対象といえます。もっぱら、労働や日常生活にどの程度に支障があるかによって支給が決まります。
 
ところが、障害年金の認定について具体的な基準を定めた障害認定基準(※)では、一部の傷病を給付の対象から外すことが明記されています。
 

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外されたのは神経症や人格障害など

外された傷病の中で広く知られているのが、精神の障害に分類される「神経症」と「人格障害」ではないでしょうか。神経症とは、強迫性障害、不安障害、解離性障害などです。
 
また、人格障害とは、妄想性人格障害、性同一性障害などです。障害認定基準では、次のように書かれています。

▽ 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱う。

▽ 人格障害は、原則として認定の対象とならない。

 

診断書の記載を工夫してもらう

したがって、傷病名の欄に、例えば「強迫性障害」とか「不安障害」とだけ書かれた診断書を普通に提出したのでは、受給に結び付きません。
 
障害認定基準の文章中にある「原則として」という文言に注目して、神経症の場合、精神病の病態を示していることを診断書にしっかり書いてもらうことが必要です。人格障害の場合も診断書の記載を工夫してもらうことが大切です。
 

ほかにも、対象から外された傷病がある

このほか、給付の対象から外すと明記された傷病としては、神経系統の障害の「疼痛」、肝疾患による障害の「慢性肝炎」、心疾患による障害の「心房細動」と「大動脈瘤」、高血圧症による障害の「高血圧」、鼻腔機能の障害の「嗅覚脱失」などがあります。
 
いずれも、対象から外されるにあたって「原則として」とか「それのみでは」などの条件が付いていますので、関連のある症状などに着目して診断書を作成してもらうことが必要です。
 

批判の声も

これらの傷病を対象外とすることについては、例えば、神経症は長期にわたって重症化する場合があること、人格障害は統合失調症などとの境界があいまいな場合があることなどから、批判の声があります。
 
また、障害認定基準が行政内部の通達であることから、「通達が法律を制限することは許されないのではないか」という法律論もあります。
 
もっとも、障害認定基準については、事実上の障害等級要件としての役割を持っていると広く受け止められていることから、通常の裁定請求では、この障害認定基準に沿って取り組むのが現実的といえるでしょう。
 

支給されにくい傷病もある

なお、当然に支給対象であっても、支給されにくい傷病があります。いわゆる難病に属するものやアルコール依存症などです。
 
難病に属するものとしては、線維筋痛症、脳脊髄液減少症、化学物質過敏症、慢性疲労症候群などが広く知られています。厚生労働省が「障害認定が難しい事例」と名付けて各等級の診断書を公表しているほどです。
 
これらの傷病で障害年金を請求する場合も慎重な準備が必要です。
 

「ホント」だけど……

「病気やけがの種類は問われない? 」の「ウソ・ホント」の判定は、「ホント」だけど、現状では「ホント」とは言い切れない部分もあるということでしょう。
 
※ 2021/09/14 記事を一部修正いたしました。
 
出典
(※)日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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