更新日: 2021.09.29 その他年金

障害年金のウソ? ホント?(3) 「失業手当とは併給できない?」

執筆者 : 和田隆

障害年金のウソ? ホント?(3) 「失業手当とは併給できない?」
障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気付きます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。
 
第3回は「失業手当とは併給できない? 」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「働ける」と言ったり、「働けない」と言ったり

失業手当は、就業先を退職して、次の就業先が見つからないときに受給できるもので、「雇用保険の基本手当」といいます。受給の条件は「働く意思や能力があるが働けない」「求職活動をしている」などです。
 
一方、障害年金の受給の条件は「病気やけがにより長期的に日常生活や就業に支障があること」です。そうすると、就業に関していえば、2つの条件は相反するように見えます。失業手当を受給するときは「働ける」と言い、障害年金を受給するときは「働けない」と言っているようです。このため「失業手当と障害年金は併給できない」と思われるのでしょう。
 
しかし、これは正しくありません。もともと、失業手当と障害年金の間には受給調整の仕組みがないので、失業手当を受給するときに「働ける」と言い、障害年金を受給するときに「働けない」と言っても、構わないのです。問題は、そうした使い分けをすることに、何か不正直なことをしているような後ろめたさを感じるところにあると思われます。
 

堂々と併給できる

失業手当と障害年金は併給できます。失業手当の受給の条件である求職活動には種類があって、一般就労としての就職を希望するものと障害者枠での就職を希望するものがあります。後者を希望すれば、仕事の内容や就労条件に制限がつきますが、ともかく「働ける」という条件は満たせます。障害年金の受給条件とも大きな矛盾はありません。
 

「就職困難者」に認定されると有利になる

むしろ、有利な点もあります。障害を持っていて「就職困難者」に認定された場合は、雇用保険の基本手当の受給期間を一般の離職者の場合より長くしてもらえたり、求職活動の回数が少なくてもよいとされたりするなどの特典があります。例えば、給付期間は、次の表のとおりです。
 

 
仮に、被保険者期間が3年の一般離職者と就職困難者を想定して比較してみると、一般離職者が90日なのに対し、就職困難者は300日、あるいは、360日です。ずいぶん差がありますね。
 

障害者手帳を準備するのが原則

就職困難者に認定されるには、障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)の提示が求められます。てんかんや統合失調症などの精神疾患の場合は、障害者手帳の代わりに医師作成の診断書でもよい場合があります。こうした取り扱いは、地域によって異なりますので、詳しくは、お近くのハローワークにご相談ください。
 
なお、失業手当の所定給付日数を残して再就職をした場合は「常用就職支援手当」を受給できます。このため、早めに再就職をすると、それだけ恩恵があります。
 

すぐに求職活動ができないときは……

ところで、離職後、病気や障害で直ちに求職活動ができない場合もあると思います。離職日の翌日から原則として、1年間である受給期間内に働くことができない状態が30日以上続いた場合は、「体調が良くなれば、求職活動をする」という趣旨の「受給期間の延長」を申請しておくと、最長4年間まで、失業手当を受給する資格を延長してもらえます。求職活動ができない場合は、忘れずに申請しておきましょう。
 

「失業手当とは併給できない」はウソ

「障害年金と失業手当は併給できない」は「ウソ」と言えそうです。
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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