更新日: 2022.02.17 その他年金

現役時代高収入だった会社員ほど、老後の生活レベルにギャップを感じるのはなぜ?

現役時代高収入だった会社員ほど、老後の生活レベルにギャップを感じるのはなぜ?
会社を退職して老後を迎えると「生活のレベルが落ちた」と感じる人も多いでしょう。特に現役時代に高収入だった人ほど、生活レベルのギャップを強く感じやすい傾向にあります。
 
そのようなことが起こるのは、日本の公的年金の制度設計が大きな理由です。
 
ここでは、現役時代の収入と公的年金の金額の関係をもとに、現役時代に高収入だった会社員ほど、老後の生活レベルにギャップを感じる理由を解説します。ぜひ、年金制度の理解と、老後の資金計画に役立ててください。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

新井智美

監修:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com

老齢年金は現役時代の所得が高いほど「所得代替率」が低い

 
現役時代の年収に対する公的年金(主に厚生年金)の受給額の比率を「所得代替率」といいます。
 
会社員の公的年金の所得代替率は、現役時代の年収が高い人ほど小さくなる仕組みです。そのため、現役時代の年収が高い人ほど、働いて得ていた収入と年金収入との間の開きが大きくなり、現役時代と老後との家計や、生活のレベルのギャップを感じやすくなります。
 
公的年金の所得代替率は「年収○万円の場合は○%」というように、決まった割合が定められているわけではありません。
 
目安として一定のモデル世帯が設定されており、モデル世帯より収入が低ければ所得代替率が上がり、高ければ下がる仕組みです。
 
モデル世帯の収入はそのときの男性の平均賃金です。厚生年金に加入してモデル世帯の賃金水準で40年間就業した夫と、40年間専業主婦の配偶者がもらえる基礎年金と夫の厚生年金の金額を、モデル年金といいます。
 
例えば、2019年度のモデル世帯の収入およびモデル年金は、図表1のとおりです。
 
図表1

賃金 43万9000円
(年収526万8000円)
年金月額 22万円
(夫の厚生年金9万円・夫婦の基礎年金13.0万円)
所得代替率 61.7%

 
この例では、夫婦2人世帯の場合、約527万円よりも世帯年収が高くなるほど、老後と現役時代の生活レベルにギャップが生じやすいといえます。
 

年収が高いと所得代替率が低くなる理由

 
年収が高いと所得代替率が下がる大きな理由は、日本の公的年金制度が基礎年金(国民年金)と厚生年金の2階建てであるためです。
 
現役時代の収入に応じて支給額が変わる老齢厚生年金に対して、老齢基礎年金は納付月数が同じであれば、収入にかかわらず同じ額の年金が支給されます。そのため、現役時代の収入額の差は、年金受給額に反映されません。
 
この仕組みは、現役時代の収入や世帯構成による格差の軽減を目的としています。所得が低いほど所得代替率を高くすることで、老後への十分な備えが困難な低所得世帯の生活を、公的年金が支えられるよう工夫されているわけです。
 
年金には、加入者が支払った税金の一部が国庫負担として投入されています。高所得者ほど税金を多く支払っていることから、間接的に高所得者から低所得者へ所得の分配が行われるという構図です。このような制度設計を「所得の再配分」と呼ぶこともあります。
 

【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資

【PR】J.P.Returns

おすすめポイント

・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる

年収によって所得代替率はどのくらい違うのか

 
2019年度のモデルをもとに、収入によって所得代替率はどのくらい変わるのかをみてみましょう。
 
厚生労働省「2019(令和元)年財政検証結果レポート」によると、収入ごとの年金月額と所得代替率は図表2のとおりです。
 
図表2

月額賃金 年金月額 所得代替率
21万9500円 17万5000円 98.1%
32万9250円 19万8000円 73.8%
43万9000円 22万円 61.7%
54万8750円 24万3000円 54.4%
76万8250円 28万8000円 46.1%

 
月額賃金21万9500円と76万8250円を比べると、月額賃金の差が約55万円あるのに対して、年金額の差は10万円しかありません。
 
また、月額賃金76万8250円の所得代替率は50%を下回っており、老後の年金収入は現役時代の賃金の半分以下しか見込めない計算です。
 
現役時代に高収入だった人が、老後の生活レベルにギャップを感じるのも、無理のないことでしょう。
 

年金受給額は所得と比例しないことに注意が必要

 
日本の公的年金制度は、現役時代の収入が多い人ほど、現役時代の収入に対する年金額の比率が小さくなる仕組みです。そのため、現役時代に高収入であった人ほど、老後の収入とのギャップが大きくなります。
 
年金額が年収に比例して増えるわけではないことを念頭に置き、収入に余裕がある現役のときに、貯蓄や資産運用など、老後に生じる収入のギャップを埋める対策をとることが大切です。
 
出典
厚生労働省 いっしょに検証! 公的年金より 所得代替率の見通し~実際、「どのくらい」受け取れるのか
厚生労働省 2019(令和元)年財政検証結果レポート
厚生労働省 2019(令和元)年財政検証結果レポートより 「第1章 2019(令和元)年財政検証及びオプション試算の概要」
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集