更新日: 2022.02.24 その他年金
改正在職老齢年金制度を利用したセカンドライフの働き方
その内容について、新たな仕組み「在職定時改定」を中心に学んでみましょう。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
在職老齢年金制度とは
在職老齢年金制度は、仕事を続けながら厚生年金を受給できる制度です。現在の制度では、仕事を続けながら厚生年金を受給すると、年齢によっては年金の受給額がカットされることがあるため、働き方の選択が制限されていました。
現行の制度では、
65歳未満1ヶ月の「賃金」+「老齢厚生年金」が28万円を超えると老齢厚生年金が減額
65歳以上1ヶ月の「賃金」+「老齢厚生年金」が47万円を超えると老齢厚生年金が減額
となっています。
それが2022年4月以降は65歳未満でも減額される基準額が47万円になり、28万円という壁がなくなります。
この結果、60歳以降の定年延長や再雇用の場合に、老齢厚生年金の受給の制限が少なくなり、定年退職後に仕事を続ける人の収入増と就労意欲につながることが期待されています。
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在職定時改定とは
60歳以降も仕事を続ける場合は、厚生年金に引き続き加入して保険料を納めますので、厚生年金の受給額が増えていきます。在職定時改定とは、65歳から70歳になるまでの老齢厚生年金額が、毎年10月分から増える新しいしくみのことです。
現在の制度では、老齢厚生年金の金額が変わるタイミングは次の2回でした。
65歳:65歳になる直前の月までの被保険者期間が、老齢厚生年金の額に反映される。
70歳:「厚生年金の被保険者」が原則70歳までなので、ここで「老齢厚生年金」の額が再計算される。
今回の改正(2022年4月以降適用)により、毎年10月に受給額を改訂して、それまでに納めた保険料が年金額に反映されることになります。図で示すと以下のようになります。
現行制度でのイメージ
改正後のイメージ
この例では、70歳まで月額20万円程度の収入で仕事をした場合、増える年金額は約1.3万円ですから、4年分合計で約13万円になります。
(13万円=1.3×4+1.3×3+1.3×2+1.3)
70歳以降に受給できる年金額は改正前と同じですが、就労していた期間の追加分が翌年から年金に反映されることは、就労意欲にもつながるのではないでしょうか。
また、65歳~70歳まで月額20万円程度の収入で就労した場合の年金額は、毎年約6.5万円増えますので、生涯では相当な金額になります。
年金の繰り下げ受給による増額
70歳まで仕事をするかどうかの選択は個人の考えと健康にもよるものですが、平均寿命などから見ても80歳後半やそれ以上の寿命は普通になっていますので、70歳まで仕事をすることはそれほど難しいことではないかもしれません。
その場合、年金の受給開始時期を繰り下げることで年金額が大幅に増えることになります。今回の改定で、75歳までの繰り下げ受給ができることになりましたが、65歳以降の受給を繰り下げた場合の増額率は以下の通りです。
表は筆者が作成
60歳~75歳の間は、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%の増額となり、受給開始時期は自由に選ぶことができます。
そのほかの厚生年金制度の改正
在職厚生年金の改正のほかにも、2022年4月からは確定拠出年金等の加入年齢の引き上げや加入適用範囲の拡大改正があります。
・確定拠出年金(DC)への加入年齢65歳未満→70歳未満
・個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入年齢60歳未満→65歳未満
・DC・DB(確定給付企業年金)の受給開始時期の選択期間を5年拡大
などがあります。
また、厚生年金や健康保険などの被用者保険の適用範囲が拡げられ、2022年10月からは従業員100人規模の事業所も適用されることになります。
まとめ
「早めにリタイアしてゆっくりと自分の人生を楽しみたい」と思う人も多いでしょうが、「長く仕事をして社会に参加していたい」と思う人も少なくありません。
多様な働き方ができる時代になりつつありますので、在職年金制度やその他の年金制度も上手に使って、ぜひ自分に合ったくらしを選んでください。
出典
(※)厚生労働省年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP