更新日: 2022.03.22 その他年金

ねんきん定期便に記載されている「標準報酬月額」って何? 実際の数字と違うときはどうすればよい?

執筆者 : 新井智美

ねんきん定期便に記載されている「標準報酬月額」って何? 実際の数字と違うときはどうすればよい?
老後の生活資金形成を考えるうえで、自分がどれだけ年金を受け取れるかを把握しておくことは重要です。
 
個人年金保険などでは、受け取れる年金額や期間があらかじめ分かっているものもありますが、公的年金(特に老齢厚生年金)の額は標準報酬月額を基に計算されることから、実際にどのくらいの額が受け取れるのか分からないケースもあります。
 
ねんきん定期便をみることで、ある程度の受給額を把握できますが、その際には標準報酬月額が間違っていないかを併せて確認することが大切です。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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老齢厚生年金とは

現役時代の収入に関係なく一律の金額が支給される国民年金(老齢基礎年金)と異なり、厚生年金は現役時代の収入に基づいた保険料を支払うことで、将来受け取れる額が決まります。その際に利用されるのが「標準報酬月額」です。
 
■老齢厚生年金の仕組み
昭和16年4月2日以後に生まれた人の老齢厚生年金は、「定額部分」「報酬比例部分」「加給年金額」の合計が支給されます。それぞれの計算方法は以下のとおりです。
 
■定額部分
定額部分は次の計算式で求めます。
 
1628円×その人の生年月日に応じた乗率×厚生年金保険加入月数
 
生年月日に応じた乗率は、昭和21年4月1日以降に生まれた方は一律1.000となっています。したがって、これから年金を受給される人の乗率は1.000と考えておいて問題ないでしょう。
 
つまり、定額部分は、1628円に厚生年金保険に加入していた月数をかけることで求められます。
 
■報酬比例部分
報酬比例部分を求めるにあたり、必要となるのが標準報酬月額です。報酬比例部分の額は以下の計算式で求めます。
 
(平均標準報酬月額×その人の生年月日に応じた乗率×平成15年3月までの厚生年金保険加入月数)+(平均標準報酬額×その人の生年月日に応じた乗率×平成15年4月以降の厚生年金保険加入月数)
 
ここで「平均標準報酬月額」と「平均標準報酬額」という2つの言葉が出てきましたが、これらの違いは以下のとおりです。


平均標準報酬月額:平成15年3月までの被保険者期間の各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの厚生年金保険加入月数で割ったもの。

平均標準報酬額:平成15年4月以降の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の厚生年金保険加入月数で割ったもの。

■加給年金額
加給年金額は定額部分を受給している人で、要件を満たす場合に支給されるものです。
 
その要件とは、「厚生年金保険の被保険者期間が20年ある」ことに加え、65歳もしくは定額部分の受給開始年齢到達時、その人に生計を維持されている配偶者や子どもがいることです。
 
そして、この配偶者や子どもに対しても要件が設けられています。


・配偶者の要件:65歳未満であること
・子どもの要件:18歳に到達する年度末日まで(一定の障害の状態にある場合は20歳未満)

また、支給額は決まっており、標準報酬額に影響されることはありません。
 

標準報酬月額とは?

では、これらの厚生年金の計算で利用される標準報酬月額とはどのようなものなのでしょうか。
 
■標準報酬月額と標準賞与額
標準報酬月額とは、毎月会社から受け取る給与などの報酬(月額)を一定の幅で区分したものです。そして標準賞与額は、税引き前の賞与額総額から1000円未満を切り捨てた額です。
 
これらの標準報酬月額や標準報酬額によって、納める厚生年金保険料および健康保険料が決まります。
 
■報酬となるもの
標準報酬月額を求める際の報酬とは、基本給以外の各種手当(家族手当や通勤手当、通勤手当など)を含んだものです。また、年4回以上にわたって支給される賞与がある場合は、その額も報酬に含まれます。
 

標準報酬月額の確認方法

では、自分の標準報酬月額が正しいかどうかはどのように調べたらよいのでしょうか。
 
■標準報酬月額の決まり方
会社から受け取る報酬は、昇給や繁忙期などの影響を受けるため、毎月一定額になるとは限りません。
 
毎年4月~6月の3ヶ月(支払いの基礎となる日がいずれも17日以上あることが条件)の各月の報酬額を3ヶ月で割った額を標準報酬月額として決定します。これを「定時改定」といい、毎年7月1日に決まります。
 
基本的には、その後の報酬月額に大きな変化がなければ、1年間その標準報酬月額が適用され、保険料を算定する際の基礎となります。そして、標準報酬月額は、金額によって32に区分されており、該当する等級にあたる金額がその人の標準報酬月額です。
 
例えば4月~6月の月額報酬の平均額が25万5000円だった場合、その人の標準報酬月額は26万円です。
 

まとめ

基本的に標準報酬月額は4月~6月に受け取った報酬の平均額によって決まります。ねんきん定期便が届いた際には、そこに記載のある金額と自分が受け取った報酬の平均額と大きく異なっていないかを確認することも大切です。
 
もし異なっていた場合は、年金事務所に問い合わせることで調査が行われ、間違っていたと判断された場合には、訂正してもらえます。ねんきん定期便には、直近の標準報酬月額および標準賞与額が記載されています。
 
受け取れる年金額を把握することも大切ですが、記載されている標準報酬月額や標準賞与額に誤りがないかも確認するようにしましょう。
 
出典
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)
全国健康保険協会
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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