更新日: 2022.04.25 その他年金

【2022年4月年金改正(1)】75歳まで繰下げが可能に!繰下げのメリットと注意点を解説!

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

【2022年4月年金改正(1)】75歳まで繰下げが可能に!繰下げのメリットと注意点を解説!
2022年4月に年金制度改正法が施行され、日本の年金制度は大きく変わります。主な改正点の1つは老齢年金の受給に関することです。高齢化で定年後も働く人が増えたため、就労状況に応じて年金を受給しやすくなる、などの改正が実施されます。
 
老齢年金に関する主な改正点はいくつかありますので、4回に分けて説明します。本記事では1回目として、「繰下げ上限年齢の引き上げ」について解説します。繰下げによるメリットや注意点も紹介しますので、老後の資金対策に役立ててください。
FINANCIAL FIELD編集部

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老齢年金の繰下げと年金額の計算方法

まず最初に、老齢年金の繰下げ制度と繰下げ後の年金額の計算方法について解説します。
 

・老齢年金の繰下げとは

老齢年金の繰下げとは、年金の支給開始時期を遅らせることです。老齢年金は原則65歳から支給が始まりますが、2022年3月までは支給開始時期を66歳から70歳に変更できます。支給開始は遅くなりますが、その代わりに支給金額が増額します。
 
65歳のときに十分な収入があり年金なしでも生活できるなら、繰下げをしておき、収入がなくなった後に増額した年金を受け取るといった選択ができます。
 

・繰下げ後の老齢年金額

老齢年金を繰下げすると、1ヶ月当たり0.7%年金額が増えます。65歳でもらう年金額を200万円と仮定した場合、繰下げ後の年金額は次の通りです。

●66歳まで繰下げた場合:年金額=200万円×(100%+0.7%×12ヶ月)=216万8000円
●70歳まで繰下げた場合:年金額=200万円×(100%+0.7%×60ヶ月)=284万円

70歳まで繰下げた場合、65歳からの5年間は年金をもらえませんが、70歳以降は年間84万円(42%)も年金額が増えるのです。
 

繰下げ上限年齢の引き上げとメリット

次に、繰下げ上限年齢に関する改正内容と、改正によるメリットについて解説します。
 

・繰下げ上限年齢は75歳に引き上げ

2022年4月より繰下げできる年齢の上限が、70歳から75歳に引き上げられます。繰下げ受給するまでの期間が延びたため、次の通り年金の増額率もアップします。

●70歳まで繰下げた場合:増額率=0.7%×60ヶ月=42%
●75歳まで繰下げた場合:増額率=0.7%×120ヶ月=84%

 

・繰下げ受給と損益分岐点

繰下げした場合としなかった場合の総受給額が等しくなる年齢を、「損益分岐点」といいます。損益分岐点の年齢は、何歳まで繰下げるかによって異なります。

●70歳まで繰下げた場合:損益分岐点は81歳
●75歳まで繰下げた場合:損益分岐点は86歳

75歳まで繰下げた場合、損益分岐点は86歳となります。つまり、85歳までに死亡すると65歳から受け取った方が総受給額が多くなり、損をします。一方で、長生きして87歳以上になれば、受給開始を繰下げたほうが総受給額が多くなり、得をします。
 

・繰下げ受給のメリット

繰下げ受給のメリットは、長生きすれば年金の総受給額が多くなることです。
 
いつ亡くなるかは明確には分かりませんが、考える際には平均余命がひとつの参考になります。厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」では、65歳時の平均余命は男性が20. 05年、女性が24. 91年です。つまり、65歳で年金受給権が発生したとき、平均で男性は約85歳、女性は約90歳まで生きられるということです。
 
65歳男性が受給開始を70歳まで繰下げ(損益分岐点は81歳)を選択し、平均余命の通り85歳で死亡したとすると、65歳から年金を受給したケースより総受給額が多くなります。
 
また、早く亡くなれば老後の生活資金は少なくて済みますが、長生きするほどお金がかかります。人生100年時代といわれる長寿社会の中で、繰下げの活用は長生きリスク(長生きして老後資金がなくなること)への備えにもなります。
 

老齢年金繰下げの注意点

最後に、老齢年金の繰下げを検討するときの注意点を紹介します。
 

・加給年金と振替加算は増額されない

注意点の1つ目は、繰下げしても加給年金や振替加算は増額しないことです。
 
加給年金や振替加算は、厚生年金に20年以上加入していた人やその配偶者など一定要件を満たした人に支給される老齢年金への加算です。
 
とくに、配偶者に対する加給年金を受け取れる人は注意しましょう。受給できるのは本人が65歳になってから配偶者が65歳になるまでに限定されています。繰下げによって年額約39万円の加給年金が全く受け取れないこともあるからです。
 

・1952年4月1日以前生まれの人は70歳まで

注意点の2つ目は、「1952年4月1日以前生まれの人」は70歳までしか繰下げできないことです。年金制度改正法が施行される前に70歳になった人は、改正法が適用されません。
 
ただし、70歳以上の人でも「受給権発生日が2017年4月1日以降の人」は75歳まで繰下げ可能です。65歳時点で受給要件を満たしていない人が、厚生年金に加入するなどして2017年4月1日以降に受給権が発生したケースなどです。
 

長生きリスクを考慮して繰下げを検討しよう

2022年4月に年金制度改正法が施行され、繰下げ上限年齢が70歳から75歳に引き上げられます。年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、75歳まで繰下げをすると年金額が84%も増えます。
 
老後の家計収支や繰下げによる総受給額の増減見込み、長生きリスクを考慮して繰下げ制度利用の検討をしましょう。
 
出典
厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」
 
参考
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
日本年金機構「令和4年4月から年金制度が改正されます」
日本年金機構「年金の繰下げ受給」
日本年金機構「加給年金額と振替加算」
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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