年金の繰り上げ・繰り下げはどのように決めたらいい?

配信日: 2022.04.22

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年金の繰り上げ・繰り下げはどのように決めたらいい?
老齢基礎年金・老齢厚生年金などの「公的年金」は、退職後の老後に生活費の足しとなる収入です。原則として、年金は65歳から受け取りが可能ですが、生涯現役で働く方や早期で退職する方など、全ての方が一律に65歳から年金が必要になるとはかぎりません。
 
年金の「繰上げ受給」「繰下げ受給」で、年金の受給開始年齢を被保険者の状況などによって柔軟に選択できます。そこで、この記事では年金の繰り上げ・繰り下げをどのように決めるべきかを解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

年金の繰り上げ・繰り下げとは?

年金は65歳からの受給だけではなく、「繰上げ受給」や「繰下げ受給」で、受給開始の年齢を60~75歳までの期間に変更できます。年金を繰り上げ・繰り下げて受給すると、受給開始の年齢によって本来の65歳からの年金支給金額よりも減額・増額されます。
 
ここでは、年金の繰り上げ・繰り下げの仕組みを解説します。また、令和4年度から改正された内容についてもあわせて解説していきます。
 

年金の繰上げ受給とは?

年金の繰上げ受給とは、年金の支給開始日を60~64歳の間に繰り上げて受け取ることです。繰上げ受給の請求をした場合、請求時点の年齢によって年金が減額されます。
 
また、一度繰り上げ請求をしたら、生涯にわたって減額された年金を受給することになるため注意が必要です。そして令和4年4月から、老齢年金の繰り上げ減額率が下記のとおりに見直されました。
 
なお、対象となる方は令和4年3月31日時点で、59歳以下の方(昭和37年4月2日以降生まれの方)で、60歳以上の方(昭和37年4月1日以前生まれの方)についての変更はありません。


・昭和37年4月1日以前生まれの方:減額率=繰り上げ請求した月から65歳到達月の前月までの月数×0.5%

・昭和37年4月2日以降生まれの方:減額率=繰り上げ請求した月から65歳到達月の前月までの月数×0.4%

また、この改正によって、60歳時点で繰り上げ請求をした場合の最大減額率が、これまでの30%から24%に見直され、繰上げ受給のデメリットが改善されました。
 

年金の繰下げ受給とは?

年金の繰下げ受給とは、66歳以降に支給開始日を繰り下げて受け取ることです。繰り下げた期間に応じて年金額が増額されます。また、増額率はその後変更されませんので、生涯にわたって増額された年金を受け取ることができます。
 
そして、令和4年4月より、繰下げ受給の上限年齢がこれまでの70歳から75歳に引き上げられました。受給開始日を75歳までに繰り下げられるのは、次の要件を満たした方です。


・昭和27年4月2日以降生まれの方
・平成29年4月1日以降に受給権が発生した方

66歳以降も現役で働かれる方には、受取金額が有利になる繰上げ受給は有効な制度です。
 

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年金の繰り上げ・繰り下げを決める基準を試算

原則として、年金を繰上げ受給すると本来の受給金額よりも減額され、繰下げ受給すると本来の受給金額よりも増額されます。減額・増額された年金額は一生涯変わりませんので、繰り上げ・繰り下げを決めるには、しっかりした基準をもって選択するべきです。
 
ここでは、繰り上げ・繰り下げで、本来の年金よりも受給金額が少なくなる・増える基準となる年齢を試算します。
 

繰り上げた場合、81歳で本来の受給額よりも少なくなる

繰上げ受給の場合、令和4年度から減額率が見直され、60歳からの繰上げ受給で最大の24%減額されました。老齢基礎年金の額を2022年の改定月額「6万4816円」を基準とすると、受給期間が21年経過した81歳段階で、本来の年金受給額よりも少なくなります。


・60歳から繰上げ受給:77万7792円×0.76(24%減額)×21年=1241万3560円

・65歳から受給:77万7792円×16年=1244万4672円

 

繰り下げた場合、87歳から本来の受給額よりも多くなる

繰下げ受給の場合、令和4年度から75歳まで繰り下げ可能な年齢が拡大され、75歳からの繰下げ受給で最大増額率が84%とされました。老齢基礎年金の額を2022年の改定月額「6万4816円」を基準とすると、受給期間が12年経過した87歳段階で、本来の年金受給額よりも多くなります。


・75歳まで繰り下げて受給:77万7792円×1.84(84%加算)×12年=1717万3647円

・65歳から受給:77万7792円×22年=1711万1424円

ただし、上記のような受給額の単純比較以外に、所得税などの税金や社会保険料などにも影響されます。当然、年金を多く受給すれば、より多くの税金の負担がかかることを念頭に置く必要があります。
 

年金の10年繰り下げで受給額が84%増! 健康状態や収入で判断しよう

年金の繰り上げ・繰り下げを活用すれば、原則とされる65歳より早く年金をもらう、65歳時に支給が開始される年金額よりも増額された年金を受け取るという、それぞれのライフステージにあわせた受給方法が選べます。
 
例えば、10年繰り下げて受給した場合は受給額が84%増額されますので、人生100年時代に年金の受給開始を繰り下げて有利な額を受け取るのも選択肢のひとつです。
 
自分が何歳まで生きるかというのはコントロールができない点ですが、健康状態や何歳まで働くかを基準に、年金の受給金額や税金・社会保険料などを計算して、年金の受給年齢を十分に考えましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和4年4月から老齢年金の繰上げ減額率が見直されました
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 令和4年4月から老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられます
厚生労働省 令和4年度の年金額改定についてお知らせします
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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