更新日: 2022.05.12 厚生年金

「特別支給の老齢厚生年金」は働いている人ももらえるの?

「特別支給の老齢厚生年金」は働いている人ももらえるの?
一定の要件を満たす方には、65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金が支給されます。一方、在職老齢年金制度では、年金額と報酬額に応じて年金が一部または全部支給停止となることがあります。
 
今回は、特別支給の老齢厚生年金と在職老齢年金について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

特別支給の老齢厚生年金とは

昭和60年の法改正に伴い、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。その際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度が「特別支給の老齢厚生年金」です(※1)。
 

特別支給の老齢厚生年金の受給要件

以下の要件を満たした方は、特別支給の老齢厚生年金を受給することができます(※1)。


・男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
・女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
・老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること。
・厚生年金保険などに1年以上加入していたこと。
・生年月日に応じた受給開始年齢に達していること。

 

特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢

生年月日に応じて特別支給の老齢厚生年金を受給できる年齢は、下表のとおり定まっています(※1)。
 


(※1を基に筆者作成)
 

受給できる年金額は

昭和24年4月2日以降に生まれた男性および昭和29年4月2日以降に生まれた女性に支給される特別支給の老齢厚生年金の年金額は、年金の加入期間や過去の報酬などに応じて下式で算出された報酬比例部分になります(※1、2)。
 
報酬比例部分=平均標準報酬額×0.005481×加入期間
 
平均標準報酬額とは、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入期間で割って得た額です。なお、平成15年3月までの加入期間に関する計算式は異なります。
 

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在職老齢年金とは

65歳未満で在職し厚生年金の被保険者となっている場合、受給している特別支給の老齢厚生年金額と報酬額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。
 
下図のとおり基本月額(A)と総報酬月額相当額(B)との合計額が47万円を超える場合は下式で求められる額が支給停止されますが、合計額が47万以下の場合は年金が全額支給されます(※1、3)。
 


基本月額(A)とは、報酬比例部分の年金額を12で割った額になります。また、総報酬月額相当額(B)は、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12月で割った値に、その月の標準報酬月額を足した額になります。
 

働きながら特別支給の老齢厚生年金を受け取れるケース

前述した在職老齢年金において、基本月額と総報酬月額相当額に応じて支給される年金額の関係は、下表のとおりとなります。
 


 
例として、基本月額12万円(年金額144万円)の方が、総報酬月額35万円以下で働いた場合は特別支給の老齢厚生年金は全額支給されますが、総報酬月額60万円以上になると年金は全額支給停止となります。
 
また、総報酬月額が35万円から60万円の間にある方は、年金の一部が支給停止されます。従って、高額所得者でない限り、働きながらでも特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。
 

まとめ

昭和36年4月1日以前に生まれた男性および昭和41年4月1日以前に生まれた女性には、一定の要件を満たすと特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。働きながらこの年金を受給する場合は、在職老齢年金により年金額と報酬額によっては年金の一部または全部が支給停止となります。
 
しかしながら、令和4年4月からその基準が緩和されましたので、高額所得者でない限り働きながら特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。
 
なお、特別支給の老齢厚生年金は、繰下げることができませんので受給開始年齢に達し「年金請求書」が届いたら必ず請求手続きをしてください。
 

出典

(※1)日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
(※2)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
(※3)日本年金機構 令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されました
 
※2022/5/12 図表の表記を修正いたしました。
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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