事故で後遺症が残りました。年金の未納期間がありますが障害年金は受給できますか?
配信日: 2022.05.16
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2つがあり、受給要件などが異なります。万が一の際の重要な収入源となる障害年金について理解を深めておきましょう。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
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障害年金とは
公的障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2つがあります。このうち障害基礎年金は、主に個人事業主・学生・主婦などが加入する国民年金から障害を事由に給付される年金、障害厚生年金は、厚生年金適用事業所で雇用されているサラリーマンなどの労働者が対象となる年金となります。
障害基礎年金と障害厚生年金の大きな違いは受給対象者と障害の状態にあります。
まず、受給対象者については、障害厚生年金は基本的に労働者が受給対象となりますが、障害基礎年金では直接保険料を支払っている方のほか、国民年金に加入する前の20歳未満の方、60歳以上65歳未満の年金制度未加入期間の方も受給対象者となります。
また、障害の状態については、障害年金を受給するには一定の障害状態となった認定を受ける必要があります。
障害基礎年金では他人の介助がなければ日常生活のほとんどができない「障害の程度1級」と日常生活が極めて困難で労働によって収入を得ることができない「障害の程度2級」に該当する必要があります。障害厚生年金とは異なり、日常生活には支障がないが労働には大きな制限が加わる「障害の程度3級」では受給要件を満たすことはできません。
このように障害基礎年金は受給対象者が幅広い反面、受給要件を満たす障害の状態が厳しく定められています。
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障害年金の受給可否は障害の初診日までの納付状況で判断
障害年金の受給要件として、一定の障害の認定を受けるほかに保険料の納付状況も審査対象となります。
障害厚生年金の保険料は給与から天引きされて納付されるため、その扶養配偶者が対象となる国民年金の3号被保険者は保険料の未納が生じにくい仕組みとなっていますが、学生や個人事業主などご自身で保険料を納付する必要のある1号被保険者の保険料は約7割しか納付されていません。
基本的に保険料が未納であることはリスクとなりますが、未納期間があると直ちに受給資格を失うというわけでもありません。
障害基礎年金の保険料についての受給要件は、原則として20歳未満の場合は保険料納付が不要で、それ以外の方の場合は障害の初診日の前々月までの保険加入期間で保険料を納付した期間と免除期間を合算し、これが加入期間の3分の2以上あることが必要となります。
例えば、40歳の誕生月に障害の初診日が生じた場合、20歳から39歳10ヶ月までの238ヶ月のうち保険料の納付期間と免除期間が159ヶ月以上あれば受給要件を満たすことができます。
また、現在は特例措置が定められており、65歳未満の方で障害の初診日が令和8年(2026年)の4月1日以前にある場合は、初診日の前日を起点に初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納期間がなければ障害基礎年金を受給できるようになっています。
障害年金を安心して受け取るためには、特例期間が定められているうちに原則の条件を満たせるように保険料の納付を進めるとよいでしょう。また、金銭的な理由で納付が難しい場合は免除制度を利用し、未納期間が生じないようにしておきましょう。
まとめ
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2つがあり、障害基礎年金は幅広い受給対象となっている代わりに障害の程度が1級・2級でないと受給要件を満たすことができません。また、保険料納付期間にも定めがあり、障害の初診日までの被保険者期間の間に保険料の納付期間と免除期間が全体の3分の2以上が必要となります。
また、現在は特例措置により初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納期間がなければ障害基礎年金を受給できるようになっていますが、これは令和8年4月1日までの時限措置のため注意が必要です。
未納期間があると障害基礎年金の受給などにリスクを生じてしまうため、保険料の納付が難しい場合は免除制度を利用するなどし、未納期間が生じないようにしておきましょう。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表