更新日: 2022.05.17 その他年金
年金を75歳まで繰り下げると、受給額はどれくらい増える?
そのような場合、必ずしも65歳から年金を受給しなくても構いません。年金受給開始を最大で10年間、75歳になるまで遅らせることができ、受給年齢を繰り下げた分だけ、毎年の年金受給額が増えるメリットがあります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
年金は必ずしも65歳から受給しなくてもよい
年金には、国民年金から給付される「老齢基礎年金」と、法人企業や5人以上の従業員がいる個人事業所(農林水産業、サービス業などを除く)に勤めている人が加入している厚生年金から給付される「老齢厚生年金」があります。
老齢厚生年金を受け取れる人は、老齢基礎年金も併せて受給できます。年金受給年齢はかつて60歳からでしたが、現在は満65歳に引き上げられています。
60歳定年の会社が今も多い中、年金受給開始までの5年間は、貯蓄の取り崩しやアルバイトの収入などで、しのがなければなりません。
一方、定年を引き上げる企業や、雇用を延長したり定年後に再雇用したりする企業も増えつつあります。厚生労働省では、働き方改革の一環として、定年制を廃止するよう呼び掛けています。
こうした社会の変化から、65歳になっても働き続けて収入を得ている人も増えてきました。
ここで注意したいのは、65歳で年金を受給しながら働き続ける場合、1ヶ月あたりの収入額(※1)が47万円を超えると、老齢厚生年金の支給額が減額されてしまう点です。
年金を受給しないでも生活できるくらいの収入がある人は、減額されてまで年金を受け取るのは、損をした気分になるかもしれません。
そのため年金制度では、年金に頼らずに生活できる人のために「年金受給開始年齢を最大75歳まで繰り下げる」ことが可能になっています。
(※1)加給年金額を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分+標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12ヶ月)で算出
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75歳まで繰り下げると毎年の年金受給額は84%増える
年金受給年齢を繰り下げることで受給期間が短くなり、受け取る年金が減ってしまうと思われるかもしれません。しかし、受給年齢を繰り下げた場合、年金受給を繰り下げた月数に応じて、受け取るときの年金が割り増しされるのです。
割り増しされる年金額の計算式は
(受給を繰り下げた月数)×0.7%
となります。
受給開始は最大で、75歳まで繰り下げられます。もし65歳から75歳まで10年間受給を繰り下げた場合、上記の式に当てはめると、
(10年×12ヶ月)×0.7%=84%(※2)
となります。すなわち、毎年受け取る年金の額は、65歳受給時の額と比べて84%増えるということです。
65歳に達した時点で生活に困らない程度の収入があるのなら、その時点で受給開始せず、仕事を完全に辞めて収入が無くなったときに備えて、受給繰り下げを検討してもよいでしょう。
この割り増しは生涯続きますので、75歳以降、長く生きるほど繰り下げによる割り増しの恩恵は大きくなります。
(※2)昭和27年4月1日以前生まれの人、または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している人は、繰り下げの上限年齢は70歳、増額率は最大で42%
老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰り下げは別々にできる
毎年の年金受給額が増えるというメリットに魅力を感じていても、現在の生活を維持するために受給開始を繰り下げるのは難しい、と考える人もいるでしょう。
もし、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受給できる人ならば、どちらか一方だけ受給を繰り下げることが可能です。
繰り下げずに受給を開始した年金は割り増しされませんが、現在の生活を維持しながら、もう一方の年金の受給を繰り下げることで、将来収入が無くなったときに備えることができます。
収入と生活の質を考え、いつ年金を受け取るか考える
これまで、年金は受け取れる年齢になったら受け取るものと思っていた人もいたでしょう。
しかし社会情勢が変わり、受給開始年齢の65歳になった時点でも元気に働き、収入を得ている人もいます。また、寿命が延び老後の人生は長くなりつつあります。
定年後の長い人生を考えるうえで、選択肢の1つとして、年金の受給年齢繰り下げも検討してみてください。
出典
日本年金機構 適用事業所と被保険者
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 平成17年就労条件総合調査結果の概況より「4.定年制等」
厚生労働省 平成29年就労条件総合調査結果の概況より「2 定年制等」
厚生労働省 働き方改革応援レシピNo.106 技能継承のため、定年制廃止を
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部