国民年金保険料に免除期間がある夫。もしものとき、遺族年金は受給できる?
配信日: 2022.05.19
過去に保険料の免除期間がある方が亡くなった場合、遺族の方が遺族年金を受給できなくなるということはあるのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
遺族年金とは
遺族年金とは、国民年金または厚生年金に加入している方が亡くなってしまったとき、その方に扶養されている要件を満たした遺族が受け取れるものです。
亡くなった方が加入している年金が、国民年金であれば遺族基礎年金が、厚生年金の場合は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が支給されます。
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国民年金保険料の免除期間があると遺族年金が受けられなくなる?
国民年金保険料の納付を免除されていた期間があったとしても、遺族年金の受給には影響しません。
免除期間については、保険料を納めていなくても遺族基礎年金の受給資格期間には算入されるからです。そのため、夫が過去に保険料の免除を受けていた場合でも、妻が遺族年金を受けられない可能性があるのではと心配する必要はありません。
なお、国民年金保険料の免除には全額免除のほか、4分の3、半額、4分の1の免除がありますが、どの免除期間であっても同様です。
遺族年金が受けられないのは保険料の未納期間があるとき
残された遺族が遺族年金を受けられない可能性があるのは、国民年金保険料の免除期間がある場合ではなく、未納となっている期間がある場合です。
未納とは、保険料について納付の免除や猶予を受けておらず、納付義務があるのに保険料を支払っていない状態のことです。
ただし、保険料の未納があれば直ちに遺族年金を受けられないというわけではありません。具体的にいつ、どれくらいの未納期間があると遺族年金を受けられなくなってしまうのかは、遺族基礎年金と遺族厚生年金によって異なります。
遺族基礎年金の場合
遺族基礎年金は、以下のいずれかの要件に該当する方が亡くなった場合に遺族の方が受け取れます。
出典:日本年金機構 「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
上記の「1」と「2」は、免除期間を含む保険料納付済期間が、国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要となります。
ただし、死亡日が令和8年3月末日までであれば、亡くなった方が65歳未満の場合は死亡日の前日で、死亡日を含む月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ受給要件に該当するとされています。
また、「3」と「4」については、保険料納付済期間と免除期間、合算対象期間(年金の受給資格期間の計算には反映されるものの、年金額には反映されない期間)の合計が25年以上ある方に限られています。
つまり、亡くなった方が直近1年未満の間に保険料の未納がある場合や、免除を含めた保険料納付済期間などを合わせて25年未満の場合、遺族の方は遺族基礎年金を受けられないことになります。
遺族厚生年金の場合
遺族の方に遺族厚生年金が支給されるのは、亡くなった方が以下のいずれかの要件を満たしている場合です。
出典:日本年金機構 「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
上記の「1」と「2」は前述した遺族基礎年金の「1」「2」と同じく、保険料納付済期間(免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あるほか、65歳未満の方は死亡日のある月の前々月までの直近1年間で、保険料の未納期間がないことが要件です。
「4」と「5」についても保険料納付済期間と免除期間、合算対象期間が合計で25年以上あることが必要となっており、遺族基礎年金と同様に直近1年間に未納期間がある場合や、免除期間を含めた保険料納付済期間などが25年未満のケースでは、遺族厚生年金が支給されないことになります。
夫に保険料の免除期間があっても妻は遺族年金を受けられる
国民年金の保険料が免除されていた期間は、保険料を全額払っていなくても遺族年金の受給資格においては納付されたものとして扱われるため、免除により遺族年金が受けられなくなるということはありません。
しかし、保険料の未納となると話は別で、未納期間があると遺族年金を受け取れない可能性があります。
もし、夫に保険料の免除を受けた期間があり、遺族年金が受給できないと心配になっている方は、免除期間だけでなく、未納となっている期間がないか確認してみてください。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
日本年金機構 か行 合算対象期間
執筆者:柘植輝
行政書士