更新日: 2022.05.31 厚生年金
【2022年4月年金改正(4)】繰上げ減額率の見直しで何が変わる? 繰上げ制度のメリット・デメリットも紹介!
繰上げ制度のメリットとデメリットも紹介しますので、年金の受け取り方法に迷っている人は参考にしてください。
執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)
社会保険労務士・FP2級
老齢年金の繰上げとは
まずは、老齢年金の繰上げ制度について説明します。
・繰上げとは受給開始年齢より早く年金を受け取ること
老齢年金の支給開始年齢は、原則65歳(※)です。繰上げとは、本来の支給開始年齢よりも早く年金を受け取れる制度です。支給開始時期は、60~64歳までの期間となっており、月単位で選べます。
※「特別支給の老齢厚生年金」を受給できる人(1961年4月1日以前生まれの男性、1966年4月1日以前生まれの女性)は、生年月日に応じて60歳~64歳支給開始
・繰上げすると支給額は減る
老齢年金を繰上げ受給すると、年金の支給額は減額されます。
1ヶ月あたりの減額割合を「減額率」といい、2022年3月までの減額率は「0.5%」でした。65歳から5年(60ヶ月)前倒しして支給開始年齢を60歳にすると、年金額は30%(=0.5%×60ヶ月)減ります。
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老齢年金の繰上げ減額率の見直し
2022年4月に繰上げ減額率が見直されました。
・繰上げ減額率が「0.4%」に
法改正により、繰上げ減額率が0.5%から0.4%に引き下げられました。ただし、新しい減額率が適用されるのは、2022年4月1日以降に60歳になる人(1962年4月2日以後生まれの人)です。
日本年金機構のホームページをみると、繰上げ時の年齢別にいくら年金が減額されるかすぐに分かります。
図表1
出典:日本年金機構 年金の繰上げ受給
・繰上げによる支給額の計算
モデルケースを使って、繰上げしたときの年金支給額を試算しましょう。65歳の支給額を200万円としてシミュレーションします。
・ケース(1):1962年4月1日以前生まれの人が60歳(60ヶ月繰上げ)から受給
支給額=200万円×(100%-0.5%×60ヶ月)=140万円
・ケース(2):1962年4月2日以後生まれの人が60歳から受給
支給額=200万円×(100%-0.4%×60ヶ月)=152万円
年金制度改正前後で、支給額は10万円以上の差があります。
老齢年金繰上げのメリット
繰上げのメリットは、65歳前から年金を受け取れることです。60歳で退職した場合など、65歳前の生活費として年金を使えます。
また、65歳を過ぎてすぐに死亡した場合、繰上げしたほうが年金の総支給額が多くなります。前述のモデルケース(2)に該当する人が66歳で死亡した場合、総支給額は次の通りです。
・65歳に年金開始:200万円×1年間=200万円
・60歳繰上げ受給:152万円×6年間=912万円
老齢年金繰上げのデメリット
繰上げのメリットと比較して、デメリットは多岐にわたります。日本年金機構のホームページに詳しく記載されています。
図表2
出典:日本年金機構 年金の繰上げ受給
65歳までに遺族年金や障害年金、寡婦年金をもらえる場合など、繰上げで損をするケースもありますが、確率はあまり高くありません。大きなデメリットは、年金額が減って一生涯、支給額が増えないことです。
厚生労働省の2022年簡易生命表によると、65歳時の平均余命は男性約20年、女性約25年です。平均すると、65歳の男性は85歳まで、女性は90歳まで生きることになり、その間は年金を受給します。モデルケース(2)を使って、繰上げの有無による総支給額を比較します。
・65歳に年金開始:200万円×20年間=4000万円
・60歳繰上げ受給:152万円×25年間=3800万円
・65歳に年金開始:200万円×25年間=5000万円
・60歳繰上げ受給:152万円×30年間=4560万円
繰上げして65歳までにもらった年金をすぐに使うと、65歳以降に使える年金は、85歳まで生存した場合は3040万円、90歳の場合は3800万円です。貯蓄を取り崩しながら生活する場合、繰上げの影響で貯蓄が底をつくリスクが高まります。
老齢年金の繰り上げは慎重に検討しよう
2022年4月、1962年4月2日以後生まれの人の繰上げ減額率は0.4%に引き下げられました。繰上げ利用者にとっては、支給額の減額が少なくなるので有利な改正です。
しかし、さまざまなデメリット(とくに一生涯続く年金額の減額)を考慮して、繰上げの利用は慎重に検討しましょう。
出典
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和4年4月から年金制度が改正されました
生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 老齢年金の繰上げ・繰下げ受給について知りたい
厚生労働省 令和2年簡易生命表の概況
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級