更新日: 2023.01.06 国民年金

国民年金はさかのぼって「追納」したほうがおトク? 追納のメリットや注意事項とは?

執筆者 : 柘植輝

国民年金はさかのぼって「追納」したほうがおトク? 追納のメリットや注意事項とは?
過去に納付の猶予や免除を受けていた国民年金の保険料について、追納すべきか悩むケースは少なくありません。追納によって受け取れる年金は増額できるものの、将来の不透明さや目の前の生活など不安な点も多くあるからです。そこで、国民年金保険料の追納のメリットや注意点をまとめました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

国民年金保険料の追納とは

国民年金の保険料について、納付の猶予や免除を受けていた期間がある場合、10年以内であれば後から保険料をさかのぼって納めることができます。これを追納といいます。
 
例えば、学生時代に学生納付特例制度で国民年金保険料の支払いについて猶予を受けていた方は、社会人になって安定した収入を得られるようになってから保険料を追納できるということです。
 
国民年金(老齢基礎年金)の支給額は、20歳から60歳までの国民年金の全加入期間(480月)で保険料を納めた場合に満額となり、保険料納付済み期間が480月に満たないときは、その期間に応じて受け取れる年金額が減少していきます。
 
また、保険料の納付猶予や学生納付特例の適用を受けていた期間は、年金の受給資格期間には含まれますが、年金額には反映されません。
 
つまり、追納とは過去に保険料の納付猶予や免除を受けていた方が、将来受け取る国民年金を満額に近づけたい場合に行うものになります。なお、保険料の追納は任意であり、追納しないことでペナルティーなどが課されるわけではありません。
 

追納のメリット


国民年金保険料を追納するメリットは、節税しながら将来受け取る年金額を満額に近づけることができる点です。
 
国民年金保険料は、全額が社会保険料控除の対象となります。そのため保険料を追納した分、課税対象となる所得が減って所得税や住民税の負担が軽減されます。
 
下記の条件を例にして、追納を行った場合のメリットを確認してみます。
 

・年収500万円で所得税と住民税の税率は10%
 
・追納する保険料は、学生納付特例制度で納付猶予を受けていた令和元年度(19万7160円)と平成30年度(19万6440円)の2年(24月)分

 
追納によって得られる節税効果は、所得税と住民税で合計7万8000円程度と想定されます。また、将来受け取る年金額は年間で3万8890円増加し(令和4年度の年金額より)、仮に25年間で年金を受け取った場合、合計額は97万2250円です。
 
このように、納付の猶予などを受けていた約40万円の保険料を追納することで、8万円近い節税ができ、生涯にわたって受け取る年金額を年間4万円近く増やせます。
 

追納の注意事項

追納を行う場合は注意点もあります。前述したとおり、追納ができるのは猶予や免除の適用を受けてから10年以内(追納が承認された月の前10年以内)の保険料に限られています。
 
また、猶予や免除を受けた期間の翌年度から起算し、3年度目以降に保険料を追納する際は、当時の保険料に一定の加算額が上乗せされます。
 
図表


出典:日本年金機構 「国民年金保険料の追納制度」
 
年金は生きている間にしか受け取れません。年金の受給前、または受給開始後の早い段階で亡くなってしまうなど、思ったような結果にならないことも当然あり得ます。
 

追納については十分に検討が必要なケースも

国民年金保険料の猶予や免除を受けていた期間がある方で、将来受け取る年金を少しでも増やしておきたい方や、節税をしたいという方には追納がおすすめです。
 
一方、現在の生活に金銭的な不安があったり、投資信託などを利用して効率よく資産運用が行えたりするるような方は、追納する金額や増やせる年金額にもよりますが、本当に追納すべきなのかよく検討する必要もあるでしょう。
 

国民年金保険料を追納すると節税もできてお得である

国民年金保険料の追納は、将来の老齢基礎年金額を満額に近づけることができるほか、社会保険料控除によって所得税・住民税が軽減されるという点でお得な制度といえます。
 
ただし、状況によっては追納を行うことで、現在の生活に支障が出ることもあります。追納には10年以内という期限のほか、経過期間に応じて上乗せされる加算額も発生するため、早めに検討するとともに、疑問や不安な点がある場合は年金に詳しい社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどに相談してみてください。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
 
執筆者:柘植輝
行政書士
 

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