更新日: 2023.04.05 その他年金
年金の受給額を5万円増やしたい! 今からできることって?
公的年金制度は、国内に居住する20歳以上60歳未満の方が被保険者となる国民年金と、会社員などが被保険者となる厚生年金の2階建てになっており、老齢年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金があります(※1)。
本記事では、老齢基礎年金と老齢厚生年金について、年金額を月額5万円増やす方法について解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
老齢基礎年金の額と増やし方
1.老齢基礎年金の額
20歳以上60歳未満の全国民が被保険者となる国民年金では、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができ、その額は20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金や厚生年金の加入期間などにより決まります(※1)。
20歳から60歳になるまでの40年間において、自営業などの第1号被保険者として保険料を納付した期間や、会社員など第2号被保険者またはその被扶養配偶者である第3号被保険者の期間を合わせた期間が480月となると満額の老齢基礎年金を受給することができます(※1)。満額の老齢基礎年金の額は、令和5年度の額で月額6万6250円です(※2)。
2.満額の老齢基礎年金を受け取るためには
老齢基礎年金を満額受給するためには、国民年金保険料の未納期間をなくすことが必要です。学生納付特例制度(※3)などにより保険料を免除された期間がある場合は、追納制度(※4)を利用して保険料を納めましょう。
また、60歳の時点で40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合は、60歳以降も国民年金に任意加入(※5)して老齢基礎年金額を増やすことができます。
3.老齢基礎年金を増やす方法
65歳から満額の老齢基礎年金を受給することができる方が、65歳で年金を受け取らずに66歳以降75歳まで(注)の間で繰下げて受給すると1月につき0.7%年金額を増やすことができます(※6)。
注:昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰下げの上限年齢が70歳まで
【図表1】
受給開始年齢 | 老齢基礎年金額 (令和5年度額) |
増加率 |
---|---|---|
65歳 | 6万6250円 | 0% |
70歳 | 9万4075円 | 42% |
75歳 | 12万1900円 | 84% |
(日本年金機構「年金の繰下げ受給」を基に筆者作成)
したがって、75歳まで老齢基礎年金を繰下げ受給すると、65歳から受給する場合に比して5万5650円年金を増やすことができます。
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老齢厚生年金の年金額と増やし方
1.老齢厚生年金の額
65歳から受給する老齢厚生年金の額は、報酬比例部分と経過的加算および加給年金額の合計額になります。そのうち、厚生年金の加入期間とその間の報酬額によって決まる報酬比例部分が老齢厚生年金の額を大きく左右します(※7)。
報酬比例部分の額は、下式により計算されます(※8)。
報酬比例部分(注)=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数
注:平成15年3月以前の加入期間に関する計算方法は異なる
平均標準報酬額とは、厚生年金の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の合計額を、加入期間の月数で割って得た額です。
また、報酬比例部分の額は、厚生年金に加入していた間の平均年収と加入年数から、下式により概算することができます。
報酬比例部分≒(平均年収×加入年数)×0.005481
平均年収と加入年数から老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額を計算すると、図表2のとおりになります。
【図表2】
《老齢厚生年金(報酬比例部分)の概算表(月額)》
平均年収 | 加入年数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
10年 | 20年 | 30年 | 40年 | 50年 | |
300万円 | 1万3703円 | 2万7405円 | 4万1108円 | 5万4810円 | 6万8513円 |
400万円 | 1万8270円 | 3万6540円 | 5万4810円 | 7万3080円 | 9万1350円 |
500万円 | 2万2838円 | 4万5675円 | 6万8513円 | 9万1350円 | 11万4188円 |
600万円 | 2万7405円 | 5万4810円 | 8万2215円 | 10万9620円 | 13万7025円 |
700万円 | 3万1973円 | 6万3945円 | 9万5918円 | 12万7890円 | 15万9863円 |
800万円 | 3万6540円 | 7万3080円 | 10万9620円 | 14万6160円 | 18万2700円 |
(筆者が加入年数と平均年収から概算)
2.老齢厚生年金を増やす方法
老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は、加入年数と平均年収によって決まりますので、より長く勤務し、より高い収入を得ることで年金額を増やすことができます。
例えば、在職年数40年で平均年収が300万円の方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額が5万4810円ですので、年収を倍の600万円にすることができれば年金月額を5万4810円増やすことができます。
また、在職年数20年で平均年収600万円の方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額が5万4810円ですので、平均年収600万円を維持してあと20年勤務すれば年金月額を5万4810円増やすことができます。
もちろん、老齢基礎年金と同様に老齢厚生年金を繰下げ受給することでも年金額を増やすことができます。例えば、在職年数40年で平均年収が400万円の方が65歳から受け取る老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額は7万3080円ですので、70歳または75歳まで繰下げた場合の老齢厚生年金の月額は、図表3のとおりとなります。
【図表3】
受給開始年齢 | 老齢厚生年金額 (報酬比例部分) |
増加率 |
---|---|---|
65歳 | 7万3080円 | 0% |
70歳 | 10万3774円 | 42% |
75歳 | 13万4467円 | 84% |
(日本年金機構「年金の繰下げ受給」を基に筆者作成)
したがって、75歳まで老齢厚生年金(報酬比例部分)を繰下げ受給すると、年金月額を6万1387円増やすことができます。
まとめ
老齢基礎年金は、40年間の保険料納付済期間を満たすと満額の年金を受け取ることができます。したがって、未納期間などがある場合は、保険料の追納制度や任意加入制度を利用して保険料を納めることで年金額を増やすことができます。
老齢厚生年金(報酬比例部分)は、厚生年金の被保険者としてより長く勤務し、より多い収入を得ることで年金額を増やすことができます。
また、老齢基礎年金および老齢厚生年金ともに、繰下げ受給することで年金額を増やすことができます。
出典
(※1)日本年金機構 老齢年金
(※2)厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
(※5)日本年金機構 任意加入制度
(※6)日本年金機構 年金の繰下げ受給
(※7)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※8)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士