更新日: 2023.04.05 その他年金

年金は「5年遅らせると42%増額」。お得にみえる「繰下げ受給」ってデメリットはあるの?

年金は「5年遅らせると42%増額」。お得にみえる「繰下げ受給」ってデメリットはあるの?
年金は繰上げ・繰下げ受給により60歳から75歳の間で受け取る時期を選ぶことができます。繰下げ受給の場合、5年間遅らせると年金額が42%も増額するなど魅力的なため、気にされている方も多いのではないでしょうか。
 
本記事では、お得にみえる「年金の繰下げ受給」の知っておきたいデメリットについて解説します(※1)。
上山由紀子

執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
 
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
 

5年間繰下げるといくら受給できるの?

令和5年4月分からの年金額は、夫婦2人分で月額22万4482円です。この金額は、夫が平均的な収入で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯をモデルケースとしています(※2)。
 
令和5年度の国民年金(老齢基礎年金)は満額で月額6万6250円です。上記モデルケースでの夫の年金額は、厚生年金と国民年金を合わせて月額15万8232 円(年額189万8784円)となります。
 
ここで、夫は65歳、妻は60歳と仮定し、原則65歳からの年金を夫が5年間繰下げ受給する場合を計算してみます。
 
厚生年金と国民年金を同時に繰下げた場合、夫が受給する年金額は

15万8232円+15万8232円×(0.7%×60月)
=15万8232万円+6万6457円
=22万4689円(月額)
=269万6268円(年額)

5年間の繰下げにより、年金額が大幅に増加しました。これだけ増えれば、老後の生活も豊かになりそうです。
 

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5年間繰下げることのデメリットは?

では、5年間繰下げした結果、どんなデメリットがあるかも考えてみましょう。
 

1.長生きできなければ総年金額は少なくなる

「70歳まで繰下げてから受給した年金額」が「本来の65歳から受給した年金額」と等しくなる年数(損益分岐点)は、以下の計算のとおり11年9ヶ月です。つまり、81歳と10ヶ月以上長生きしなければ、65歳から受給したときよりも総年金額は少なくなってしまいます。

損益分岐点の計算式

65歳で受給する年金を100%とすると、
100%÷0.7%=142.85%
142.85%÷12(ヶ月)=11.9(年)

なお、厚生労働省の調査では、令和3年の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳となっています(※3)。将来的には、もっと平均寿命は延びていくのではないかと考えられます。
 

2.加給年金が受給できない。

加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が65歳到達時点で、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者または18歳到達年度の末日までの間の子(または1級・2級の障害のある状態にある20歳未満の子)がいる場合に支給されるものです(※4)。
 
配偶者の加給年金には特別加算があり、受給権者の生年月日が昭和18年4月2日以後の場合、加給年金額22万8700円と特別加算額16万8800円(令和5年4月から)を合わせた年額39万7500円を受給することができます。
 
厚生年金と国民年金を同時に繰下げている場合、厚生年金とひも付けられる加給年金は受給できません。解決策として、厚生年金と国民年金は別々に繰下げが可能なため、国民年金のみ繰下げることで加給年金も受給できるようになります。
 

まとめ

「年金の繰下げ受給」について、注意することを解説しました。本記事では70歳までの5年間遅らせる場合でお話ししましたが、制度上は75歳まで繰下げ受給が可能です。しかし、繰下げ期間が長くなることで増えた年金額に応じ、介護保険の自己負担割合が多くなることもあります。
 
また、繰下げている間の生活費などの準備も必須でしょう。それでも、「5年遅らせると42%増額」というのは魅力的です。ご自身の年金と老後について、じっくりと検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

(※1)日本年金機構 年金の繰下げ受給
(※2)日本年金機構 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
(※3)厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況 1主な年齢の平均余命 表2平均寿命の年次推移
(※4)日本年金機構 加給年金額と振替加算
 
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP(R)認定者

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