更新日: 2023.04.19 その他年金

年金の「繰下げ・繰上げ受給」を撤回することはできる?一度選択したら、死ぬまで受け取り方はそのままなの?

執筆者 : 柘植輝

年金の「繰下げ・繰上げ受給」を撤回することはできる?一度選択したら、死ぬまで受け取り方はそのままなの?
働き方や年金額の変化によって年金の繰下げ受給と繰上げ受給について検討される方も少なくないようです。しかし、その後の事情の変化によっては一度選択した繰下げや繰上げを撤回したくなるかもしれません。それが不安でどうすべきか判断できない方もいらっしゃるようです。そこで、年金の繰下げ受給と繰上げ受給について確認していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金の繰下げ受給と繰上げ受給の概要

まずは繰下げ受給と繰上げ受給について確認していきましょう。年金は現在原則65歳から受給が始まります。しかし、個人の判断で60歳から75歳までの間で受け取り時期を1ヶ月単位で変更することができます。
65歳よりも遅くすることを繰下げ受給、65歳よりも早くすることを繰上げ受給といいます。
 
繰下げ受給は1ヶ月繰下げるごとに0.7%増額、繰上げ受給は1ヶ月繰上げるごとに0.4%減額され、その金額を将来にわたり受け取り続けることになります。なお、繰下げ受給と繰上げ受給は国民年金と厚生年金、どちらにも適用できます。
 

年金の繰下げ受給と繰上げ受給は一度選ぶと撤回できない

繰下げ受給と繰上げ受給、どちらの場合も一度行った選択(受け取り)を撤回することはできません。
 
繰下げ受給を選択すればその時点で将来にわたり増額された年金を受け取り続けることが、繰上げ受給を選択すれば将来にわたり減額された年金を受け取り続けることが確定します。その金額が変わることはありません。そのため、繰下げと繰上げ、どちらを選ぶかは慎重に考える必要があるのです。
 
参考までに、令和3年度において繰下げ受給を選択した方はわずか1.2%、繰上げ受給を選択した方はわずか0.6%と、ほとんどの方が通常どおり65歳から年金を受け取っているようです(特別支給の老齢厚生年金の受給権者を除く)。
 
ここから分かるのは繰下げ受給と繰上げ受給を選択される方はごくごく少数派であるということです。
 

繰下げ受給を選んでもよい場合は?

心身ともに元気なうちは働き、リタイア後は年金と貯蓄だけで生活したいと考えるのであれば繰下げ受給を選んでもよいでしょう。75歳まで繰下げると84%増額された年金を受け取ることができ、その先年金と貯蓄など資産の切り崩しだけで生活できる可能性が高まります。
 
しかし、年金は課税対象であるため健康保険料や住民税などの税負担が増えます。それによって思ったほど収入が増えないこともあります。とはいえ、事情が変わればいつでもその時点で請求手続きをして受給を開始できるため、基本的に繰下げ受給を選んで後悔することはあまりないでしょう。
 

繰上げ受給を選んでもよい場合は?

60歳以降少しでも早く年金を受け取らないと生活できないというような場合は繰上げ受給を選択してもよいでしょう。また、健康面などで早期に亡くなる可能性が高い場合も繰上げ受給を選んでもよいでしょう。
 
しかしながら、繰上げ受給は受給額が減ることになるため、後悔する可能性も高く、選ぶ際は特に慎重になる必要があります。やむを得ない事情があるのでなければ、就労などで収入を増やして極力65歳から年金を受け取れるようにするのが無難です。
 

年金の繰下げと繰上げの選択は慎重に

年金の受け取り方について繰下げ受給と繰上げ受給のどちらを選ぶにせよ選択は一度きりです。特に受給額が減少する繰上げ受給は後悔する可能性も高いです。年金の繰下げ・繰上げに悩んだときは、その選択によって一度決まった年金額は死ぬまで続くものと考え、慎重に選択をするようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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