更新日: 2023.04.27 その他年金

65歳の定年より早めに退職して、年金の繰上げ受給で生計を立てたい! 繰上げ受給とは?

執筆者 : 柘植輝

65歳の定年より早めに退職して、年金の繰上げ受給で生計を立てたい! 繰上げ受給とは?
現在年金は原則65歳から受け取る仕組みになっています。しかし繰上げ受給をすることでそれよりも早く年金を受け取ることもできます。
 
その仕組みを利用し、退職を早めたいと考える方もいらっしゃるようです。そこで、繰上げ受給の概要や退職を早めることが可能か考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金の繰上げ受給の概要

年金における繰上げ受給とは、65歳よりも早く年金を受け取るための仕組みです。限界まで繰上げることで60歳から年金を受け取ることができます。
 
しかし、繰上げ受給は良い面だけではありません。1ヶ月繰上げるごとに、受け取る年金は0.4%減額されることになります。
 
減額された年金額は増えることなく、また、一度繰上げ受給を選択すると取り消しもできません。そのため、繰上げ受給をすると生涯にわたって減額された額を受け取り続けることになります。
 
例えば、65歳から厚生年金(国民年金から支給される部分を含む)を毎月20万円受け取れる方が5年(60ヶ月)繰上げて60歳から年金を受け取ったとします。すると、受け取る年金は24%減額された15万2000円となってしまうというわけです。
 

退職を早め繰上げ受給で生活することは可能か

受け取る年金額や定年の年齢にもよりますが、退職を早めにし、繰上げ受給した年金で生活することも不可能ではありません。
 
しかし、繰上げ受給をするということは少なくなった年金を生涯にわたって受け取り続けることになるため、長生きすることによるリスクが高くなります。長生きすればそれだけ生涯で必要な老後の生活費が増えます。
 
さらに、年を取れば取るほど医療費もかかる傾向にあるため生活費以外での支出も増えます。途中から生活が苦しくなって「働いてお金を稼ごう」と思っても、健康状態などの問題からそれが難しいこともあります。
 
加えて、退職を早めることで生涯賃金の額も下がります。それによってこれまで形成してきた資産や年金への依存度が高まるため、不測の事態に対応できるよう特に金銭面での準備を念入りにしておく必要があります。
 
一度繰上げ受給をするとその後事情の変化があっても撤回することはできません。持病などであまり長生きできないと想定される場合を除き、基本的に繰上げには慎重になるべきです。
 

退職を早めて年金の繰上げ受給をするなら備えも必要

もし、受給できる年金額が下がってでも年金の繰上げ受給をし、退職を早めたいというのであればそれなりの準備が必要です。最低でも次のような事項を把握したうえで本当に減額された年金で生活ができるのか検討が必要となります。


・何歳まで生きる予定であるのか
・貯蓄など老後の生活資金がどれくらいあるか
・繰上げ受給によって受け取る年金額はどれくらいになるか
・年間の収支はおおよそどれくらいになるか
・医療費など突発的な支出にはどう対応するか

おそらく多くの方が上記の観点から検討したとき繰上げ受給に不安を感じられることでしょう。もし不安を感じるようであればやめておくべきです。
 
参考までに、生命保険文化センターの実施したアンケートによれば、夫婦2人で老後最低限必要と考える生活費についての回答額は平均で月23.2万円となっています。ゆとりある老後に必要と考える生活費となると月37.9万円となっています。
 
夫婦2人で繰上げ後の年金収入と貯蓄など資産の切り崩しで23万円程度生活費を用意できないのであれば、退職を早めて繰上げ受給した年金で生活するというのは難しいでしょう。
 

 

繰上げ受給を頼りに退職を早める場合は慎重に決断を

年金の繰上げ受給をすると早期に年金を受け取れるようになる代わりに、生涯にわたって減額された年金を受け取り続けることになります。繰上げの選択は取り消すことができません。安易に繰上げをして退職を早めると後悔することにもなりかねません。
 
年金の繰上げ受給を選択する際はリスクについて十分に検討を重ねたうえで実行するようにしてください。
 

出典

生命保険文化センター 「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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