更新日: 2023.05.25 その他年金
夫が「糖尿病」に…。本人は「障害年金」を受け取れると言うけど、糖尿病でも障害年金を受け取れるの?
もし、糖尿病を患ってしまい、生活に支障が出たとき、障害年金を受け取れるのでしょうか。夫が糖尿病になってしまった妻からの相談を基に、糖尿病を対象とする障害年金の受け取りが可能かどうか、解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
糖尿病でも障害年金を受け取れる
糖尿病であっても、障害認定を受けることで障害年金を受け取ることができます。障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に一定以上の制限がかかった場合に現役世代でも受けられる年金です。ここで言う「病気」には糖尿病も含まれます。つまり、夫が糖尿病になったとしても、所定の状態であれば障害年金を受け取ることができるのです。
障害年金の判断基準となる障害等級は1級から3級まであり、その症状に応じて受け取ることのできる年金額が異なっています。障害年金の1級に該当するのは、介護なしでは生活ができないような方です。
2級に該当するのは日常生活が極めて困難かつ、仕事で収入を得ることもできないような方です。日常生活にはほとんど支障はないが、仕事をするには制限がある程度かかるような方が3級に該当します。
そのため、単に夫が糖尿病と診断されただけであり、日常の生活や仕事にもほとんど制限がないような状況では障害年金を受け取ることができないでしょう。
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障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金がある
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金とがあります。夫が厚生年金保険に加入している間に糖尿病の初診日がある場合などの要件を満たす場合は、障害厚生年金と障害基礎年金を受け取ることができます。国民年金のみに加入中の場合は障害基礎年金のみを受け取ることになります。
障害厚生年金は病気やけがの状況に応じて1級から3級まであります。受給金額は1級ならば報酬比例部分の年金額1.25倍となります。2級については報酬比例部分の年金額となります。3級については報酬比例部分の年金額(最低保証金額は令和5年度分で年齢に応じて59万6300円または59万4500円)となります。
なお、障害厚生年金の1級と2級については、対象となる配偶者が存在する場合は配偶者の加給年金も受け取ることができます。
また、3級とは認められない場合でも、一定の状態であれば報酬比例額の年金額を2倍した金額の(116万円6800円の最低保証があります)障害手当金を受け取ることのできる場合もあります。
これに対して、障害基礎年金は1級から2級までとなります。1級の場合は年間97万2250円(令和5年度は年齢により99万3750円または99万750円となる。)に子の加算額を加えた額となります。それに対して2級は77万7800円(令和5年度は年齢により79万5000円または79万2600円となる。)に子の加算額を加えた額になります。
図表1
出典:日本年金機構 障害年金ガイド
1級や2級に該当すると、それなりの金額を受け取ることができます。ただし、糖尿病の場合で1級や2級となると相当な重症であり、夫が糖尿病と診断された程度では障害年金を受給することは難しいでしょう。
糖尿病における障害年金3級の認定基準が変更された
平成28年6月1日より、糖尿病における障害年金3級の認定要件が変更されました。具体的には下記の3つの要件を満たす、治療によっても血糖コントロールの難しいと判断される方が障害年金3級に該当するとされています。
・90日以上のインスリン治療を行っている方
・Cペプチド値、重症低血糖、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群のいずれかが一定の程度ある
・軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるような方など
このように、3級であれば1級や2級と比べると軽度な症状でも障害年金の受給が認められるようになっています。とは言え、夫の病状が労働に制限がかかっていないなど軽微な初期症状にとどまるような場合は、やはり糖尿病にかかったことを理由として障害年金を受け取ることはできません。
障害年金を受給するには?
実際に夫が障害年金を受給するには、最寄りの年金事務所での手続きが必要になります。しかし、申請手続きは複雑な部分もあり、申請前には最寄りの年金事務所や街角の年金相談センターなどでの事前相談を経ることが推奨されています。
そして、障害年金は申請してすぐに受け取れるわけではありません。申請後からおおむね4~5ヶ月後から障害年金の支給が開始されることになっています。障害年金の受給は余裕を持った手続きが必要になります。
図表2
出典:政府広報オンライン 障害年金の制度をご存じですか? がんや糖尿病など内部疾患の方も対象です
糖尿病でも所定の条件の下、障害年金を受け取れることもある
糖尿病であっても症状によっては障害年金を受け取れることがあります。近年では3級の認定基準が明確化されたことで、糖尿病で障害年金を受給できる方の範囲が広がりました。
しかし、障害年金の受給手続きは複雑で難しいものになります。夫が糖尿病にかかり、障害年金が受け取れないか悩んだときは、一度最寄りの年金事務所などへ相談しておくことをおすすめします。
出典
厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要
日本年金機構 障害年金ガイド(令和5年度版)
厚生労働省 障害年金のお知らせ
政府広報オンライン 障害年金の制度をご存じですか? がんや糖尿病など内部疾患の方も対象です
執筆者:柘植輝
行政書士