65歳で貯蓄は「2000万円」。年金を「75歳」まで繰り下げれば、貯蓄だけで生活できる?
配信日: 2023.06.25
本記事では、受給開始を10年繰り下げた場合、貯蓄した2000万円で生活していけるかを試算していきます。
執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
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10年間で約844万円不足する
「繰下げ受給」制度で年金受給を75歳に設定した場合には、制度を利用しない場合に比べて将来的な受給額を84%増やすことができます(※実際の増加率は個々の状況、今後の制度変更により異なる場合があります)。それでは実際に受給開始時期を10年間繰り下げた場合、その間の生活資金はどれくらい必要になるのでしょうか。
総務省が発表した「家計調査報告(家計収支編)2022年平均結果の概要」によると、65歳以上で夫婦無職世帯の平均消費支出は約23万7000円と発表されています。もし、23万7000円で10年間生活していく場合は、75歳まで2844万円(23万7000円×12ヶ月×10年)を要します(※あくまで平均値に基づく試算です。以下同じ)。
貯蓄が2000万円だとすると、差し引き844万円が不足する計算となります。
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生活費が足りない場合の対策
75歳までの10年間で生活費が844万円不足するならば、どのような対策が考えられるでしょうか。
対策の1つとして、老齢基礎年金だけ繰り下げず、65歳から受給するということが挙げられます。
前述のとおり、2000万円を取り崩して75歳までの10年間生活していくには毎月約7万円不足します。この7万円を補填(ほてん)する役割として「老齢基礎年金」が挙げられます。
公的年金には主に「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2種類があり、老齢基礎年金と老齢厚生年金どちらかだけを繰り下げることも可能です。この老齢基礎年金は、令和5年度は満額で79万5000円となり、月に約6万6000円受給できます。
このように、毎月不足する7万円を老齢基礎年金の6万6000円で補填(ほてん)すれば残りは4000円となり、日々の節約などでカバーできる可能性が上がります。
また、本記事は「貯蓄だけで暮らしていけるか」という疑問を出発点としていますが、不足分を補填(ほてん)する有効な選択肢としてはやはり、働き続けて収入源を確保することが挙げられます。
例えば月7万円の不足を補うためには、時給1000円として月20日、1日あたり3.5時間の労働で達成できます。1日3.5時間の労働であれば、午前中だけ労働し、午後からは自由に趣味や生きがいなどの時間にあてるというふうに、時間を使い分けることができるかもしれません。
老後の収入と支出を事前に把握しておくことが大事
今回の試算結果には介護費用や、車の買い換え、病気やけがによる出費、自宅のリフォーム費用などは考慮されていません。これらの費用を考慮する場合は、2000万円以上の貯蓄を目指すことや、老後も一定期間は働くなどの対策が必要になります。
充実した老後を送るため、予想される収入と支出を把握しておき、ライフスタイルに合わせた老後計画を立てることが重要です。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2022年(令和4年)平均結果の概要
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種