更新日: 2023.10.30 その他年金

60歳専業主婦、離婚を検討しています。年金も生活費にと考えていますが、年金分割制度とはどういうものですか?

60歳専業主婦、離婚を検討しています。年金も生活費にと考えていますが、年金分割制度とはどういうものですか?
専業主婦で中高年になって離婚しようと考えているものの、いざ離婚後の生活資金がネックとなり、ためらう人も多いでしょう。年金分割制度は、専業主婦が離婚した場合の老後の生活費の保障として役立つ制度です。
 
本記事では離婚時の年金分割制度の概要や利用条件、分割後の年金の計算方法、注意点などを分かりやすくまとめました。ぜひ参考にして、制度の利用を検討しましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

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離婚時の年金分割とはどのような制度なのか

離婚時の年金分割制度とは、婚姻期間中の厚生年金を分割して自分の年金として受給できる制度です。婚姻期間中における厚生年金の納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)を分割し、年金受給時には分割後の記録にもとづいて算出された年金額がそれぞれ支給されます。
 
年金分割制度の対象となるのは厚生年金の報酬比例部分のみで、基礎年金には影響しません。年金分割を希望する場合は、事前に(離婚前も可)日本年金機構から「年金分割のための情報通知書」を取り寄せ、その内容にもとづいて手続きを進める必要があります。
 

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年金分割には「合意分割」と「3号分割」がある

離婚時の年金分割には、離婚の当事者同士の合意や裁判手続きで厚生年金の按分割合を決める「合意分割」と、第3号被保険者であった側が一方的に相手方の厚生年金の2分の1を請求できる「3号分割制度」の2種類の制度があります。それぞれどのような制度なのか、適用条件や手続きの内容、利用時の留意点を詳しく見てみましょう。
 

合意分割とは

合意分割とは、当事者同士の合意または裁判によって定めた按分割合に従って、婚姻中の保険料納付記録を分割する制度です。次の条件に当てはまる場合に、合意分割制度を利用できます。
 

・婚姻期間中の厚生年金記録がある
・双方の合意または裁判手続き(※)で按分割合を定めた

 
※按分割合が合意に至らない場合は、当事者の一方の請求で裁判所が按分割合を定められます。

 
合意分割の請求をしたい場合は、標準報酬改定請求書を記入して、マイナンバー、婚姻期間、当事者の生存、按分割合を証明する書類を添えて年金事務所に提出しましょう。
 

3号分割とは

3号分割とは、専業主婦など国民年金の第3号被保険者であった方の請求により、相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で2等分できる制度です。次の条件に当てはまる場合に、3号分割制度を利用できます。
 

・婚姻期間中に平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間中の厚生年金記録がある
・分割される方が請求対象期間を年金額の基礎とする障害厚生年金の受給権者ではない

 
合意分割の請求をしたい場合は、標準報酬改定請求書に記入して、マイナンバー、婚姻期間、当事者の生存を証明する書類を添えて年金事務所に提出しましょう。
 
なお、合意分割を請求した人が3号分割の条件にも当てはまる場合は、同時に請求があったと見なされるため、別途手続きする必要はありません。
 

年金分割をすると年金額はどうなる?

年金分割をすると、分割後の年金は以下の方法で計算されます。
 
■分割により年金記録を分けた人
相手に分割した標準報酬月額・標準賞与額を差し引き、残りの標準報酬月額・標準賞与額にもとづいて計算されます。
 
■分割を受けた人
自身の標準報酬月額・標準賞与額に相手方から分割を受け、厚生年金記録を加えた標準報酬にもとづいて計算されます。
 
すでに年金を受給中の場合は、年金分割を請求した月の翌月分から、計算し直した年金額が支給されます。50歳以上で年金の受給資格期間を満たしている人や障害厚生年金を受給している人は「年金分割のための情報通知書」の請求時に見込額の試算が可能です。
 

年金分割を利用するときの注意点

離婚時の年金分割請求をするときには、特に次の3点に注意が必要です。
 

・請求の期限は原則2年以内
・配偶者が自営業だと請求できない
・自身の受給資格期間が不足していると分割した年金も受け取れない

 
「相手の年金ももらえるはずだったのにアテが外れた」とならないよう、ルールを確認しておきましょう。以下で、それぞれ説明します。
 

請求の期限は原則2年以内

年金分割の請求期限は、原則として以下を行った日の翌日から起算した2年以内です。
 

・離婚をしたとき
・婚姻を取り消したとき
・事実婚関係を解消したとき

 
ただし、按分割合を決める裁判や調停が長引き2年が経過してしまう場合などは、さらに6ヶ月以内に結果が確定すれば請求が認められます。また、当事者の片方が裁判などによる按分割合決定後、分割手続き前に亡くなった場合は、死亡日から1ヶ月を期限として分割請求が可能です。
 

配偶者が自営業だと請求できない

年金分割は、厚生年金を対象とする制度です。そのため、配偶者が自営業者などで厚生年金の加入期間が全くない場合は分割の請求ができません。
 
また、配偶者が国民年金基金に加入していた場合も年金分割の対象にはならないため、財産分与の対象として権利を主張する必要があります。
 

自身の受給資格期間が不足していると分割した年金も受け取れない

年金分割後の標準報酬額にもとづいた老齢年金を受給するには、自身の厚生年金加入期間や国民年金の保険料納付期間などが、定められた受給資格期間を満たしている必要があります。受給資格期間が不足していると、分割しても年金を受け取れないため注意が必要です。
 

年金分割制度は期限内に請求しよう

離婚時の年金分割は、離婚後の生活保障として大きな意味をもつ制度です。分割制度の利用によって、専業主婦のように働く配偶者のサポートに回っていた人も、公平に年金を受け取る権利が得られます。制度を利用できる期限は原則として2年間と決められているため、離婚が成立したら早めに手続きをし、しっかり分割を受けましょう。
 

出典

日本年金機構 離婚時の年金分割について
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)
日本年金機構 年金分割後の年金見込額を知りたいのですが、どうすれば知ることができますか。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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