更新日: 2023.11.29 その他年金

「年金が少なくて生活できない!」そうならないために、今から年金額の確認と対策をしよう!

執筆者 : 前田菜緒

「年金が少なくて生活できない!」そうならないために、今から年金額の確認と対策をしよう!
年金額には、その人がどのような働き方をしてきて、いくら稼いできたかが反映されています。働き方や年収が老後の年金額を決定するため、人それぞれ年金額が違うわけですが、その仕組みがやや難しいため、自分の年金額が分からない人は多いものです。そこで2つの世帯をモデルに年金額を試算して、老後の対策を考えます。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

https://www.andasset.net/

会社員夫とパート主婦世帯のケース

Aさんは40代会社員、新卒で入社した会社で働いています。定年は60歳ですが再雇用で65歳まで働く予定です。妻は、現在は扶養内で働くパートですが、大学卒業後から結婚までの5年間会社員でした(当時の平均年収は約300万円)。
 

・Aさん夫婦の年金額を計算する。

年金には基礎年金と厚生年金の2種類があります。基礎年金は、20歳から60歳まで保険料をきっちり納めると65歳から約80万円の年金を受け取ることができます。Aさん夫婦は2人とも免除や未納はないため、基礎年金を約80万円受け取れます。
 
次に厚生年金を計算します。厚生年金は厚生年金に加入経験がある人が受け取れる年金で、金額は年収と厚生年金加入期間に比例し、下記の計算式から概算の年金額を算出できます。
 
(1) 厚生年金加入期間中の平均年収 × (2) 厚生年金加入年数 × 0.55%
 
Aさんは65歳まで働く予定ですから、(1)は入社から65歳までの平均年収です。(2)は入社から65歳までの年数42年(65歳-23歳)です。仮に(1)が500万円だとすると、老後の厚生年金は、
 
500万円×42年× 0.55% = 115.5万円
 
基礎年金80万円と合計すると、約200万円の年金になることが分かります。
 
一方、妻は扶養内で働いていますから現在は厚生年金に加入していません。結婚前は会社員として5年間厚生年金に加入していたため、老後の厚生年金は、
 
300万円×5年×0.55%=8.25万円
 
基礎年金と合わせて約88万円の年金になることが分かります。
 
夫婦合わせて年金は毎月約24万円ですが、 税金と社会保険料を差し引くと手取りは21~22万円程度になるでしょう。
 

フリーランスのおひとりさま世帯のケース

Bさんは、現在フリーランスとして働いている40代のおひとりさまです。大学卒業後10年間年収400万円程度で会社員として働いていましたが、退職後はフリーランスとして働いています。
 

・Bさんの年金額を計算する。

Bさんも年金に未納や免除はなく、基礎年金は約80万円です。一方、フリーランスは厚生年金に加入しません(できません)から、厚生年金加入期間は会社員時代の10年間のみとなります。老後の厚生年金を計算すると、
 
400万円×10年×0.55%=22万円
 
基礎年金と厚生年金を合計すると約100万円です。100万円なら税金はかかりませんが、社会保険料は納める必要があります。手取りとしては、月に7~8万円程度になるでしょう。
 

老後資金対策を考える

それでは、Aさん夫婦とBさんの老後資金対策を考えます。
 

対策その1 ~老後の不足額を計算する~

自分の老後の年金額が分かりました。生活するには、あと月にいくら必要か考えて老後のトータル不足額を計算します。95歳まで生きるとして、その不足金額を30年分します。その金額が老後のトータルの不足金額です。
 

対策その2 ~貯める~

iDeCoやNISAを活用して、老後の不足額を埋められるよう資産形成をすることが重要です。効果的に資産形成ができる制度があるのですから、利用しないともったいないですね。
 

対策その3 ~会社の制度を知る~

これは、Aさんの夫に当てはまることですが、会社に退職金制度や企業年金制度はないか確認してみましょう。自分の会社の退職金制度を知らない人は多いものです。まずは会社の退職金制度を確認し、できればその金額も確認しましょう。会社のシステムから金額をシミュレーションできる場合もあります。
 

対策その4 ~働き方を変える~

Aさんの妻とBさんは、厚生年金に加入していないため年金額が少なくなっています。Aさんの妻は扶養の範囲を超えて働くことで厚生年金に加入できます。扶養を超えて働くことで今の収入も増やせますし将来の年金額も増やせます。
 
Bさんの場合は法人化して厚生年金に加入する、フリーランスとして活動しつつも厚生年金に加入して働ける職場を見つけるなどの方法が考えられます。厚生年金に加入できるチャンスがあるなら、検討してみるとよいでしょう。
 

老後資金の対策は年金額を知ることから

老後の資金対策は、まずは年金額を知ることから始まります。この金額が分からなければ、準備していたとしても足りなかったり、多すぎたりということになります。ライフプランを作ってみると、老後への備えが多すぎて、現役時代はカツカツだけど、意外にも老後は余裕がありすぎる家庭は少なくありません。
 
このような家庭は、会社の退職金制度を知らなかったという家庭によく見られます。老後のために貯金しすぎて今が苦しいのは本末転倒です。年金額はねんきんネットでシミュレーションできますし、今回お伝えした計算式で概算金額を算出しても良いでしょう。まずは自分自身の年金を知ることからはじめましょう。
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

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