更新日: 2024.03.22 その他年金
年金の「差し押さえ」って本当にあるんですか? 正直「どうせもらえない」と思いますし、貯金もなにもないのですが…
しかし、国民年金保険料の納付は国民の義務であり、納付を拒否していれば督促や強制徴収といった対処を取られる場合もあります。本記事では、国民年金保険料未納者に取られる対処と、年金保険料の納付が厳しい人に向けての解決策を紹介します。
執筆者:山本峻(やまもと しゅん)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
差押えは実際に行われている
「差押えはおどしなのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、未納者への強制徴収は実施されており、具体的な件数は図表1のとおりです。
図表1
厚生労働省 令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表します 国民年金保険料収納対策のスキーム(概念図)より筆者作成
コロナウイルス感染症の収束が見え始めた令和4年度に一気に動き出した印象です。では、財産の差押えではどのような処置が取られるのでしょうか。
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差押えに当たって調査される項目
財産の差押えでは、保険料の支払いが終わるまで口座凍結の処置がとられます。差し押さえられた現金などはそのまま未納分へ充当され、動産や不動産は換価処分のうえ、滞納分に充てられます。差押えに当たって事前に調査される項目は次のとおりです。
・勤務先
・取引先の状況
・収入元の状況
・家族構成
・戸籍や住民票の推移の状況
・給料の金額
・所有している動産・不動産・債権、銀行口座およびその取引の内容
・生命保険の契約状況 など
財産調査は国税徴収法第141条に基づいて行われるため、個人情報保護法は関係ありません。未納者は拒否する権利をはく奪されます。給与の差押えの場合、上限は手取り額の4分の1です。手取り額が月44万円を超えるケースでは、上限33万円に固定されます。
つまり、財産差押えは国家権力によって行われるため、支払い能力がある人は年金の取り立てからは逃げられないと考えたほうが良いでしょう。
国民年金保険料を納められない場合の対処法
さまざまな事情によって国民年金保険料を納められない人のために、一定条件を満たすことで救済措置を受けられる場合もあります。
免除および納付猶予
経済的に納付困難な場合は「免除」もしくは「納付猶予」の手続きを行うことが有効です。国民年金保険料の免除を受けられるのは、次のような人です。
・生活保護法の生活扶助を受けている人
・障害年金(1級・2級)を受け取っている人
・所得が一定以下の人(所得水準によって免除される割合は変わる)
また国民年金保険料の納付猶予を受けられるケースとして、次のようなものが挙げられます。
・本人や配偶者の前年所得が一定以下の人は、審査により納付猶予を受けられる
・学生であれば「学生納付特例制度」を利用して納付猶予を受けられる
免除や納付猶予の手続きを行っておけば、その期間は受給資格期間に算入されるうえ、10年以内であれば年金保険料を後から納めることも可能です。そのため今は納付が難しくても、将来年金保険料を支払えるだけの経済力ができた場合は、「後から支払う」ことも検討するとよいでしょう。
一定条件を満たすことでもらえる年金もある
国民年金保険料を全て納めていなくても、一定条件を満たすことによってもらえる年金も存在します。例えば、障害年金や遺族年金などでは「障害認定日」「国民年金納付期間」などの条件により、年金がもらえる場合もあるほか、加算額も変化します。
そのため事故などによる障害が残ってしまったり、生計を維持していた家族が亡くなったりした場合などは、一定条件を満たせば救済措置を受けられることも覚えておきましょう。
まとめ
国民年金の保険料納付は国民の義務であるため、支払えない理由がないにもかかわらず未納を続けていれば、最終的には財産を差し押さえられてしまうリスクがあります。
国民年金保険料の支払いから逃れることは難しいため、経済的な事情で支払えない場合は「免除」「納付猶予」の申請をしましょう。また、万一のために「障害年金」「遺族年金」の内容を確かめてすることが大切です。
出典
厚生労働省 令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表します
e-Gov法令検索 国税徴収法
執筆者:山本峻
2級ファイナンシャル・プランニング技能士