更新日: 2024.11.09 その他年金
母が60歳から年金を繰上げ受給していました。長期的に見れば「損」だと思うのでやめてほしいのですが、途中でキャンセルできますか?
親が繰上げ受給をすると、年金額が減少するためやめてほしいと考える子どももいるでしょう。今回は繰上げ受給のキャンセルや注意点などについてご紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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繰上げ受給後の取り消しは不可能
日本年金機構によると、一度繰上げ受給を開始するとあとからキャンセルはできません。繰上げ請求した翌月分から年金の受給が始まり、受給額は亡くなるまでずっと繰り上げた金額です。
昭和37年4月2日以降生まれの方の場合、繰上げ受給を利用すると、65歳から繰り上げた月数に応じて0.4%ずつ受給金額が減っていき、60歳まで繰り上げると24%減少した金額を受け取ります。
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65歳から受け取り始めたときと比べて損をするのは何歳から?
今回は、65歳で受け取る年金が150万円と仮定して、繰上げ受給をした場合としなかった場合の金額を比較しましょう。もし今回のケースで60歳まで繰り上げると、年金額は24%減少した114万円です。
同条件で、60歳から繰上げ受給したときと65歳から受け取り始めたときの年金総額の差を表1にまとめました。
表1
受給総額 | ||
---|---|---|
60歳から受給 (60ヶ月繰上げ) |
65歳から受給 (繰上げなし) |
|
65歳時点 | 570万円(60ヶ月分) | - |
70歳時点 | 1140万円(120ヶ月分) | 750万円(60ヶ月分) |
75歳時点 | 1710万円(180ヶ月分) | 1500万円(120ヶ月分) |
80歳時点 | 2280万円(240ヶ月分) | 2250万円(180ヶ月分) |
81歳時点 | 2394万円(252ヶ月分) | 2400万円(192ヶ月分) |
82歳時点 | 2508万円(264ヶ月分) | 2550万円(204ヶ月分) |
※筆者作成
なお、日本年金機構によると、年金は「受給権が発生した月の翌月分」からが支給対象となり、原則として前月までの2ヶ月分が偶数月の15日に支給されます。そのため、実際に支給されるタイミングが表1よりも数ヶ月程度遅れる可能性がある点に注意が必要です。
表1の結果のとおり、60歳まで繰上げ受給をした場合、81歳ごろに通常よりも受給総額が少なくなります。
厚生労働省の「令和5年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳です。もし母親が平均寿命まで生きるとすると、繰上げ受給をした方が損をするでしょう。
しかし、すでに繰上げ受給を請求済みの場合は取り消せないので、少なくなる分は必要に応じて貯金や子どもからの仕送りなどでカバーをする必要があります。
繰上げ受給の注意点
繰上げ受給を選択すると、受給総額が減少するだけでなく、寡婦年金や繰上げ受給後の事後重症などによる障害年金を受け取れなくなります。
寡婦年金とは、10年以上継続して婚姻関係にあり、国民年金保険の保険料納付期間および免除期間が10年以上あった夫が亡くなった際に、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻が60~65歳の間で受け取れる年金です。もし夫に先立たれている場合、寡婦年金を受け取った方が、妻自身の年金額を減少させずに済みます。
また、治療中の病気がある方などの場合、60歳以降に症状が悪化して障害年金の対象になるケースもあるでしょう。しかし、繰上げ受給をした日以降の事後重症などによる障害年金は受給できません。持病がある方などは、繰上げ受給を申請する前に家族と相談した方がよいでしょう。
60歳になってから年金を増やす方法
もしまだ繰上げ受給をしていないのであれば、60歳から国民年金に任意加入できる可能性があります。
任意加入とは、国民年金を満額納付していないため老齢基礎年金を満額受給できない方などが、条件に当てはまっていれば60歳以降でも任意で国民年金に加入できる制度です。日本年金機構によれば、任意加入できる条件は次のように定められています。
・日本在住の60~65歳未満
・老齢基礎年金の繰上げ受給をしていない
・20~60歳未満までの保険料納付月数が480ヶ月(40年)未満
・厚生年金保険や共済組合などに加入していない
任意加入をすると、国民年金の納付月数を増やせるため、受給する年金額が増えます。母親が年金額の少なさから繰上げ受給を検討している場合は、任意加入も検討するよう伝えましょう。
繰上げ受給はキャンセルできない
繰上げ受給は申請してしまうと、あとからキャンセルはできません。生涯にわたって減額された年金を受け取ることになります。繰上げ受給をしても、81歳になると65歳から受け取った場合の金額よりも総額が少なくなるため、慎重に決めましょう。
もし母親がまだ繰上げ受給を選択しておらず、国民年金を満額納付できていないなら、国民年金の任意加入も選択肢のひとつです
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 老齢年金の請求手続き
日本年金機構 任意加入制度
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命(2ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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