更新日: 2019.10.31 その他年金
65歳以降も働き続けると、年金が減ってしまう?「在職老齢年金」とは
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
65歳以上も働いていると年金は調整される
65歳からは老齢基礎年金の支給が始まりますが、調整されるのは65歳未満と同様、老齢厚生年金(報酬比例部分)です。老齢基礎年金、経過的加算額は全額支給されます。
65歳以降の在職老齢年金は、65歳未満より調整が緩やかです。『その月の標準報酬月額+前1年間の賞与/12』を「総報酬月額相当額」と言いますが、それに年金の基本月額(老齢厚生年金月額―経過的加算月額)を加えた金額が、
(1)総報酬標準月額+基本月額≦47万円の場合
→ 年金の停止はありません。
(2)総報酬標準月額+基本月額>47万円の場合
→ 年金停止額 =(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)× 1/2
総報酬標準月額が47万円を超える場合は、超えた分の2分の1が停止されます。ここでいう47万円は、「支給停止調整額」と呼ばれています。毎年、48万円に平成17年度以降の名目賃金変動率を乗じて、1万単位で変動した場合に改定されます。
年金停止額が経過的加算を除く老齢厚生年金を超えるときは、老齢厚生年金は全額停止になります。加給年金(※)も支給されません。
※加給年金とは、厚生年金に20年以上加入している人が、65歳で年金を受け取る時に扶養している配偶者や子がいる場合、年金額に加算されるもの。
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在職老齢年金を受けていて、退職すると?
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給していて、年金の調整を受けていた方が、退職をして1ヶ月経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されます。内容は以下のとおりです。
・年金額の停止がなくなり、全額受給できます。
・年金額の反映されてない退職までの厚生年金に加入していた期間を追加して、年金額が再計算されます。
よって、退職後1ヶ月で、本来受け取る年金を受給できます。また、65歳以降働くことで、厚生年金加入期間が20年を超えた場合、加給年金が支給になる場合があります。
ところで、それまで第3号を扶養していた場合、被保険者が退職後は、被扶配偶者が60歳未満であれば国民年金保険料の支払う必要があります。
また、健康保険に加入できるのは75歳までで、75歳の誕生日に後期高齢者医療の被保険者となります。健康保険の被保険者資格がなくなると、被保険者に扶養されていた人はどこかの健康保険に加入しなければなりません。
就職により被保険者になる、他の家族の被扶養者になる、そうでなければ国民健康保険に加入することになります。
厚生年金に加入しなくて良い70歳以上も在職老齢年金に?
ところで、70歳以上の在職者にも、65歳以上の在職老齢年金制度と同じく、年金の調整があります。
70歳までは厚生年金保険の加入義務があるため、保険料を支払っている分その後の年金が増えますが、70歳からは厚生年金保険の被保険者となりません。よって、在職していても年金その後の年金は増えません。
ただし、年金を受けるための加入期間が足りない場合は、70歳以降でも期間を満たすために厚生年金保険に任意加入できます。これが「高齢任意加入」です。
年金の受給資格期間を満たすと厚生年金保険の高齢任意加入の資格がなくなります。その際の保険料は全額個人負担ですが、事業主の同意があればそれまでと同じように折半で済む場合もあります。
健康保険に加入できるのは75歳までで、75歳の誕生日に後期高齢者医療の被保険者となります。退職や75歳で健康保険の被保険者資格がなくなると、扶養されていた人はどこかの健康保険に加入しなければなりません。
就職により被保険者になる、他の家族の被扶養者になる、そうでなければ国民健康保険に加入することになります。なお、在職老齢年金制度は就労意欲を削ぐ制度のため、見直しがされます(2019年6月21日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2019について」より)。
(引用、参照)
2019年6月21日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2019について」
日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
日本年金機構「か行 高齢任意加入」
厚生労働省「参考資料2 主な年齢の平均余命の年次推移」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者