55歳専業主婦。今さら、厚生年金に入ってもムダですか?
配信日: 2019.11.21
扶養のままでいて年金保険料を払わなくても、将来同じ金額の年金をもらえる第3号被保険者にとって、年金保険料を払うのはなんだか損した気分になります。令和元年の国民年金保険料は1万6410円です。
それなら、働く時間を増やして会社の厚生年金に加入するのはどうでしょう。しかし、55歳のA子さん、今から厚生年金に入っても年金保険料の掛け損にはならないのでしょうか?
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
厚生年金は1ヶ月でも年金の上乗せができる
国民年金(老齢基礎年金)を受け取るには、年金保険料を納めた期間と保険料免除期間を合わせて10年以上必要です。
10年に満たない場合でも、合算対象期間(昭和61年3月以前に会社員の配偶者だったり、平成3年3月以前に学生だったり、海外に住んでいたり、脱退手当金の対象期間等)を資格期間に加えることができます。ただし、合算対象期間は年金額には反映されません。
老齢基礎年金を受け取る要件を満たしていれば、厚生年金保険の被保険者期間が1ヶ月以上あれば、老齢厚生年金を受け取ることができます。厚生年金の加入期間が10年必要なのではありません。
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A子さんは、今から入ってもムダではない
国民年金第3号の制度は、昭和61年4月から始まりました。第3号被保険者とは、第2号被保険者(厚生年金加入者)に扶養されている配偶者です。
第3号被保険者の期間は国民年金に加入しているとされ、国民年金保険料を払わなくても年金を受け取ることができます。保険料は第2号被保険者全員で負担しています。
A子さんは会社員の夫と結婚して30年になります。結婚前は2年ほど会社員でしたが、結婚してからはずっと専業主婦(国民年金第3号被保険者)です。A子さんは、第2号として2年間、第3号被保険者として30年間と合計32年間の加入期間があります。国民年金を受け取れる要件10年以上を満たしています。
そのため、パート先で厚生年金に加入すれば、加入期間の分が将来の年金に上乗せされます。65歳未満の特別支給の老齢厚生年金を受け取る場合は、厚生年金に1年以上の加入が必要ですが、A子さんは結婚前に加入済みのため受け取ることができます。
どれだけ増える?
厚生年金保険料や厚生年金の受取額は、標準報酬月額により計算できます。保険料率は18.3%で、会社と従業員が折半します。
例えば、最低は等級1の月額8万8000円です。これ以下の給料でも標準報酬月額が8万8000円として保険料を納め、将来受け取る年金も報酬が8万8000円あったとして計算します。
1年間の加入の場合、
8万8000×5.481/1000×12≒5787
となり、約5800円年金が増えます。
令和元年の厚生年金保険料は8万8000円の場合、従業員負担分は1ヶ月8052円、1年間に支払う金額は9万6624円。16年8ヶ月、約17年でもとが取れます。
給与が増えると厚生年金保険料や受け取り年金額も増えます。標準報酬月額11万円の場合に1年間加入すると、受け取る年金は約7000円増えます。
厚生年金に加入期間が長くなれば、その分将来受け取る年金も増えます。増えた分が一生涯続きます。ほかにも、障害厚生年金は、「厚生年金加入中に初診日があり」、「初診日において65歳未満で、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合」に受けられます。
国民年金だけでは障害基礎年金のみですが、厚生年金に加入して1年以上たち、厚生年金加入の時に初診日があれば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受け取れます。
55歳のA子さんが厚生年金に加入しても、まだ十分メリットがあります。
(引用・参照)
日本年金機構「老齢年金ガイド(平成31年度版)」
日本年金機構「国民年金(老齢基礎年金)」
日本年金機構「年金記録の『よくある相談事例』」
日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者