若い人こそ、年金を未払いにしてはいけないわけって?
配信日: 2020.04.21
しかし実は、若い人ほど年金に入っておいた方が良いと考えるべき理由もあるのです。
執筆者:北垣愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
証券アナリスト、FP1級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級
国内外の金融機関で、マーケットに関わる仕事に長らく従事。
現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、マーケットに関する情報等を発信している。
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年金は万が一の病気や事故への備えにもなる
年金制度には、高齢になってから受け取る老齢年金以外にも、障害年金と遺族年金があります。
障害年金とは、病気やけがなどによって一定の障害を受けた場合に受け取れる年金です。障害基礎年金では、障害の重症度により1級と2級に区分され、1級では年に97万5125円、また2級では同78万100円を受け取ることができます(2019年度現在)(※2)。
会社員などで厚生年金にも加入している場合には、障害厚生年金も受け取ることができます(障害厚生年金には3級の区分もあります)。さらに、1級と2級の加入者で子どもがいる場合には、子どもに対する上乗せもあります。そしてこれら障害年金は、原則として障害が続く限り受け取ることができるのです。
この障害年金は、若い人ほどありがたみが感じられるはずです。
体の障害で仕事ができず、収入がなくなったとしても、蓄えがあれば何とかしのげます。しかし、若い人にはまだそれほど貯蓄がないのが普通です。また、長く続くような障害を負った場合には、若い人ほど長期間年金が生活をサポートしてくれることになります。
しかし当然のことですが、この障害年金は国民年金を未払いでいると受け取ることができません。年金制度が信頼できないからといって年金を未払いにしていると、万が一の時の備えも放棄することになってしまいます。
民間の保険でも、働けないときの収入を保障する就業不能保険などがありますが、基本的に掛け捨てであり、給付金の支払いは最長で保険期間の満了時までです。障害基礎年金の額は生活するのに決して十分ではないかもしれませんが、障害がなくなるまで当てにすることができるありがたい制度なのです。
障害基礎年金の受給条件など、くわしく知りたい方は、日本年金機構のホームページ(※2)を確認してみてください。
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残された配偶者や子どもたちの助けともなる
遺族年金も同様に、若くて、まだ貯蓄が多くない人にとって、よりサポートの重みが増すと思われます。遺族年金は、加入者の受給期間や家族構成によって支給要件や支給額が異なり、かなり複雑な制度となっています。
しかし、年金加入者が亡くなった場合、子どもがいれば、配偶者に遺族基礎年金が最低限支払われます。会社員で厚生年金にも入っていれば、遺族厚生年金も上乗せして支払われ、遺族厚生年金については子どものいない妻であっても支給対象となります。
それ以外にも、寡婦年金や死亡一時金といった制度もあり、支給要件に合致すれば遺族が給付を受けることができます。制度の詳細について知りたい方は、日本年金機構のホームページ(※3)などをチェックしてみてください。
ここで押さえておきたいのは、若くして子どもを残していくことになったとしても、その子どもが18歳になるまでは年金を通じて多少の生活費を遺してあげられるということです。
2019年度時点の遺族基礎年金額は、年に78万100円と子の加算分です(第1子と第2子の加算額は各22万4500円。第3子以降の加算額は各7万4800円)。
ただし年金を未納していれば、この遺族年金も遺してあげることはできません。
経済的にきついなら、免除制度という手もある
年金制度の持続性について、問題があることは間違いありません。将来受け取る年金額が今よりも減額されることはほぼ確実と思われます。
しかし、国民年金の財源の半分は税金です。このため、年金制度がなくなることはないと考えられます。そして、先に述べたように、障害年金や遺族年金といった、いざという時に頼れる制度もあるのです。
ただそれでも、年金保険料の支払いが経済的に難しいという人もいるかと思います。その場合は、保険料の免除や猶予といった制度の利用が検討できます。どちらも申請が必要で、所得水準などの条件が合えば、保険料の支払いをしなくても年金の加入が続けられます。
免除と猶予では受給資格期間や年金額の計算において違いがあり、またどちらも将来の老齢年金の減額にはつながります。しかし、障害年金や遺族年金を受け取る上では問題ありません。
一方、同じ保険料を支払わない場合でも、未納であれば、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金も受け取ることができません。未納と、免除や猶予では、決定的に制度上の扱いが違うのです。
経済的な問題があったとしても、簡単に未納せず、免除や猶予の手続きを検討してみる必要があります。
まとめ
若くて収入がまだ少ない人ほど、年金保険料の支払いは負担に感じるはずです。しかし、そうした人にこそ、頼りになる保険的な役割も年金制度は持っています。
いざという時に制度の援助を受けられるようにしておくためにも、制度維持のために使われている税金の払い損にならないためにも、国民年金にはきちんと加入しておくことをお勧めします。
出典・参考
(※1)厚生労働省年金局 平成 30 年度の国民年金の加入・保険料納付状況
(※2)日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
(※3)日本年金機構 遺族年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
執筆者:北垣愛
マネー・マーケット・アドバイザー