更新日: 2020.06.18 国民年金
新型コロナの減収による国民年金保険料免除について
しかし、2020年5月1日から「新型コロナウイルスの影響による減収を理由とする国民年金保険料免除」の受付が始まりました。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
国民年金保険料免除の所得の対象について
国民年金には、保険料免除や若年者猶予・学生納付特例の制度がありますが、いずれも前年の所得(申請の時期が1月~6月の場合には前々年の所得)が審査の基準となります。
また、国民年金の保険料免除に限っていえば、審査の対象となる前年の所得は、本人のみならず配偶者や世帯主の前年の所得までもが審査の対象となっています。そして本人、配偶者、そして世帯主のそれぞれの前年の所得が一定の額以下であれば、国民年金保険料免除の対象です。
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新型コロナウイルスの影響による減収を理由とする、国民年金保険料免除の対象となる所得とは?
新型コロナウイルスの影響による減収を理由とする国民年金の保険料免除を受けるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
(1)令和2年2月以降に、新型コロナウイルスの感染症の影響により収入が減少したこと
(2)令和2年2月以降の所得等の状況から見て、当年中の所得の見込みが現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれること
「見込み」という語句が含まれていることから、前年の所得だけでなく、「将来の所得」が国民年金の保険料免除の審査の対象になるということです。
保険料免除の対象となる期間は?
新型コロナウイルスの影響による減収を理由とする国民年金保険料の免除の期間となるのは、2020年2月から2020年6月までの5ヶ月間です。もし、2020年7月以後も免除を受けることを希望する場合、7月以後に改めて申請することになります。
保険料免除の対象となる所得の額は?
新型コロナウイルスの影響による減収を理由とする国民年金保険料免除の対象となる所得の額は、以下のとおりです。これらの額は国民年金保険料の(一般的な)免除の対象となる所得の額と変わりありません。
●全額免除・納付猶予
(扶養親族等の数+1) × 35万円 + 22万円
●4分の3免除
78万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
●半額免除
118万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
●4分の1免除
158万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
また、保険料免除を申請するにあたり、扶養親族等控除額や社会保険料控除額等は申し出る必要はありません。日本年金機構は、申告済みの確定申告や年末調整から情報を把握するからです。
保険料の免除を受けるとどうなる?
今年度の国民年金保険料の月額は1万6540円です。保険料が全額免除されること、もしくは納付額の一部が免除されることは、新型コロナウイルスの影響により収入が減り、生活が苦しくなってしまった方にとっては助かる制度です。
4分の3免除なら国民年金保険料の負担額は月額4140円、半額免除ですと8270円、4分の1免除は1万2410円です。
ところで、新型コロナウイルスの影響による減収を理由とする国民年金保険料免除を受けた場合、将来どのようなことが起こるのか見てみましょう。
障害基礎年金や遺族基礎年金は満額受け取ることができます。しかし、65歳から受け取る老齢基礎年金については、免除を受けた期間がある場合、老齢基礎年金の満額に比べると原則以下のとおりとなります。
全額免除・・・8分の4
4分の3免除・・・8分の5
半額免除・・・8分の6
4分の1免除・・・8分の7
追納
保険料の免除を申請した場合、将来の老齢基礎年金の額が減ってしまう点には留意する必要があります。
老齢基礎年金の額は、たとえ満額(=今年度は78万1700円)が受給額だとしても、老後資金として決して多いとはいえないでしょう。免除を申請し受理されると、そこからさらに老齢基礎年金の額が減ってしまうことになるのです。
そこで、追納という方法があります。免除となった期間の保険料を、後になって納付するのです。2年以内での追納の場合、その当時の国民年金保険料の額で追納できます。
例えば、今年度の国民年金保険料の月額1万6540円が、ある期間全額免除になったとします。そして、2022年度に全額免除になった期間を追納する場合、月額は変わらず1万6540円のままです。ただし、2022年度以降に追納する場合は、延滞金を上乗せして納付する必要があります。
まとめに代えて
老齢基礎年金は終身で受け取ることができますが、免除を受け減額されてしまうとその老齢基礎年金の額が減ってしまいます。
新型コロナウイルスの影響による減収により保険料が免除になり、その結果、将来の老齢基礎年金の額が減ってしまう……それは、新型コロナウイルスの影響が、老後・亡くなるまでの間もその影響を受け続けることになる、という言い方もできるかもしれません。
もちろん、今の生活が大変厳しいために免除を受けることになるかと思いますので、このような免除制度はうまく活用しましょう。免除期間に生計を立て直し、余裕ができたら追納を利用して、将来の備えもしていけると良いですね。
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役