更新日: 2020.07.13 厚生年金

「厚生年金の保険料ってどうやって決まるんですか」新入社員に聞かれたら、答えられる?

執筆者 : 柴田千青

「厚生年金の保険料ってどうやって決まるんですか」新入社員に聞かれたら、答えられる?
初任給はいくらと聞いていたけれど、振り込まれる手取りの金額は少なくなっていますよね。
 
税金や社会保険料が引かれるというけれど、新入社員は残業がなくても4月と5月で手取り額が違うこともあり、なおさら保険料などがどうやって決まるか疑問に思うでしょう。
 
いくらぐらい引かれるとなんとなく知っているだけでなく、税金や社会保険料について自信を持って説明できるようになるため、今回はそのうちの1つ、厚生年金の保険料の決まり方についてご紹介します。
 
柴田千青

執筆者:柴田千青(しばた ちはる)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者

2級DCプランナー/精神保健福祉士/キッズ・マネー・ステーション認定講師/終活アドバイザー

小美玉市教育委員
出産を機にメーカーの技術職から転身。自身の資産管理や相続対策からお金の知識の重要性を知り、保険などの商品を売らないFPとして独立。次世代に伝えるための金銭教育活動とともに、セミナー講師・WEB記事を中心とした執筆・個別相談などを行う。

厚生年金保険料の決まり方

厚生年金の保険料は、給与や賞与に共通の保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。
 
この給与や賞与は支払われる額そのものではなく、毎月の保険料額は「標準報酬月額」、賞与の保険料額は「標準賞与額」に保険料率(平成29年9月から18.3%に固定)をかけます。
 
事業主との折半で負担するので、半分の9.15%が厚生年金保険料として給与から引かれるので、それだけで額面の給与・賞与より1割弱も手取りが少なくなるのです。
 
標準報酬月額や標準賞与額といった言葉は耳慣れないと思いますので、その決まり方についても説明します。
 

(1)標準報酬月額とは

標準報酬月額は、従業員が受け取る給与(税引き前)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定し、厚生年金の場合は1等級8万8000円から31等級62万円に分かれています。
 
この報酬月額には基本給や残業代の他に、税金では対象とならないような通勤手当なども含んだ報酬に加え、宿泊費や食事代といった現物支給のものの額も含まれます。
 
標準報酬月額は毎年1回見直され、7月1日現在で使用される事業所において4~6月に受けた報酬の平均額を標準報酬月額等級に当てはめたものが、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。
 
なんらかの事情で4~6月の報酬が通常より多くなり、標準報酬月額の等級が上がると、その後1年間にわたる保険料が上がることになります。
 
なお新入社員の場合、4~8月はその算定期間の実績(前年4~6月の報酬)がないため、被保険者の資格を取得した日現在の報酬額を、その期間の総日数で割って30倍した額など、一定の方法で算出した額を各月の標準報酬とします。
 

(2)標準賞与額とは

標準賞与額は、税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てたもので、賞与が支給される月ごとに決定されます。
 
支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となるので、賞与が150万円の超えるときは150万円とされ、それ以上の部分に保険料はかかってきません。
 

保険料を納めるタイミングは?

厚生年金の保険料は、毎月の給与および賞与から差し引いた従業員(被保険者)負担分と事業主負担分とを合わせて事業主が納め、その期限は翌月の末日です。
 
賞与では、標準賞与額に関わるその月の賞与から保険料を差し引きます。一方、給与では5月の給与支払日に4月分の保険料を引くというように、前の月の保険料をその月の給与から差し引くことになります。
 
そのため、新入社員の場合は4月には引かれていなかった厚生年金などの保険料が、5月の給与からは引かれるようになるので、報酬額が同じでも手取り額が違ってくるのです。
 

まとめ

保険料の算出や手続きを事業主の方で行うので、引かれていることは分かっていても、その仕組みについて興味を持つことは少ないかもしれません。
 
ですが厚生年金保険料は月々の手取り額に影響するだけでなく、将来受け取る年金額にも関わりますので、自分がいくら払っているのか、またその変化にも目を向けるようにしましょう。
 
出典・参考
日本年金機構 平成29年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 資格取得時の決定
 
執筆者:柴田千青
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者


 

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