【FP解説】年金の「知らないと損!」 企業年金の請求を忘れていませんか
配信日: 2020.07.30
そのような理由からか、「さあ、もらおう」とすると、すでに手遅れになっている場合も。「しまった!」と、ほぞをかむ思いをしなくてもすむように、あらかじめ知っておきたい知識の数々をお伝えします。
第17回は「企業年金の請求を忘れていませんか」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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未請求者が約115万人も
「もらい忘れ年金」と聞くと、2007年に大きな話題になった「消えた年金記録」などを頭に浮かべる方が多いことでしょう。この問題は、国民年金や厚生年金保険などの公的年金で起きたことですが、そうではない企業年金でも「もらい忘れ年金」が少なくありません。
企業年金を管理している企業年金連合会によると、年金の受給年齢に達していながら、支払いを求める手続き、つまり裁定請求を行っていない人が、2020年3月末現在で約114万6000人もいるそうです。
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老後の暮らしを支えるためのものなのに
ここでいう企業年金とは、厚生年金基金や確定給付企業年金のことです。どちらも、企業が従業員の老後の暮らしを支えるために設けたもので、年金制度を3階建ての建物に例えて「3階部分」といわれるものです。
ちなみに、1階部分は国民年金、2階部分は厚生年金保険です。厚生年金基金は、一時期は大はやりでしたが、経済環境の変化から解散が進み、現在は、新たな設立は認められていません。
企業年金連合会は、厚生年金基金や確定給付企業年金の中途脱退者、解散した厚生年金基金の加入員の資産などを管理し、年金給付を行っています。
半分以上が裁定請求書の不達者
上記の企業年金連合会の2020年3月末現在の未請求者約114万6000人の内訳は、請求書不達者が約61万9000人、請求保留者が約52万6000人です(四捨五入処理のため、合計数は合いません)。
請求書不達者というのは、年金の受給年齢に達したので裁定請求書を送ったのに、「あて所に尋ねあたりません」などのスタンプが押されて返却されたケースです。
請求保留者は、請求書が返却されなかったので、該当者が受け取ったと思われるものの、待っていても、裁定請求が行われないケースです。
年金制度が複雑すぎるせいかも
未請求となった理由が、厚生年金基金の中途脱退者という場合もあります。
結婚前に短期間、厚生年金基金に加入していた人の中には、退職時に厚生年金基金の加算年金の部分を脱退一時金という形で受け取った人が多く、こうした人の場合、本当は基本年金と呼ばれる部分はまだもらっていないのに、「厚生年金基金は清算済み」と思っている人が多いようなのです。
また、老齢年金が受給できる時期になって、日本年金機構から裁定請求書が送られてくると、この請求書にすべての年金が含まれていると思ってしまう人も少なくなさそうです。年金制度が複雑すぎるせいといえなくもありません。
氏名変更や住所変更は、日本年金機構と企業年金連合会それぞれに対して行わなければならないのですが、上記の理由から、日本年金機構に対してだけ行った人もいることでしょう。
なお、現存の各厚生年金基金でも未請求者の集計を公表しており、2019年3月末現在で約4000人とのことです。
フローチャートで検討してみよう
厚生年金基金と企業年金連合会での未請求者は、2011年3月末には、155万人余りでした。加入者の情報を照合する作業を進めた結果、合わせて約115万人まで減少したわけですが、まだまだ少なくないのです。
「もしかすると、厚生年金基金に加入していたかもしれない」と思われる方は、次のフローチャートで検討してみてください。
そして、企業年金連合会に問い合わせをしましょう。電話番号は0570-02-2666です。問い合わせるときは、氏名、旧姓、生年月日、住所、年金手帳の基礎年金番号などが必要です。
また、かつて勤務していた企業の名称のほか、加入していた厚生年金基金の名称、加入員番号なども分かる範囲で紙に書き出しておくと、問い合わせがスムーズです。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士