厚生年金適用拡大―106万円の壁は中小企業の短時間労働者にも広がる。
配信日: 2020.08.20
現在、短時間労働者の社会保険加入については「106万円の壁」というものがあります。年収が106万円を超えたら社会保険上の扶養家族から外れ、自分で厚生年金保険料や健康保険料を支払わなければならないというものです。
このルールは従業員が501人以上の大企業に勤める短時間労働者にしか適用されていませんが、年金制度改正により2年後には101人以上、4年後には51人以上の中小企業に勤める人たちにまで適用されます。これは短時間労働者の方々にとってメリット、デメリットのどちらが大きいのでしょうか?
今回は、その点について解説してみたいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大とは?
今現在「106万円の壁」というものがあります。それは、次の条件を全て満たす短時間労働者は社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入しなくはいけないというものです。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金月額が8.8万円以上であること(年収換算で約106万円以上)
(4)学生でないこと
(5)従業員が常時501人以上の会社に勤めていること
このうちの(5)の条件が、
1.2022年10月から「101人以上」
2.2024年10月から「51人以上」
と段階的に変更になります。
また、2022年10月からは(2)の条件における雇用期間が「1年以上」から「2ヶ月超」となります。
従業員が101人以上、51人以上の中小企業に勤めている契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなどの短時間労働者の方々は、上記で示した時期からは(1)~(4)の条件を満たせば厚生年金および健康保険に加入しなければなりません。
すなわち、2022年10月からは「106万円の壁」が従業員101人以上の企業に勤めている人まで広がり、さらに2024年10月からは従業員51人以上の企業にまで拡大することになるのです。
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「106万円の壁」の拡大は、短時間労働者にとって悪いことか?
結論からいうと「106万円の壁」の拡大は、それほど悪いことではありません。
1.夫が会社員で妻がパートタイム労働者の場合
・メリット
妻は厚生年金保険料を支払わなくてはならないが、将来自らの老後資金として老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金をもらうことができるようになる。
・デメリット
社会保険料支払いにより、妻の手取り額が減少する。
夫の健康保険の被扶養者から自分自身が被保険者になって、保険料負担が発生するが、健康保険の条件は変わらない。
2.夫が個人事業主の妻、独身の契約社員・アルバイトの場合
・メリット
国民年金に加入するより条件のいい厚生年金保険に加入することができ、将来自らの老後資金として年金の金額が増える。
国民健康保険に加入するより条件のいい健康保険に加入することができる。保険料も安い。
まとめ
夫が会社員で妻がパートタイム主婦の場合は、保険料が増えますが、老後まで考えると妻の年金の条件が改善されます。具体的な条件を基にメリット計算をする必要があります。
個人事業主の妻、独身の契約社員・アルバイトの人たちは、健康保険と厚生年金を合わせた保険料は少し安くなるか、ほとんど変わりませんが、国民健康保険が健康保険に、国民年金が基礎年金+老齢厚生年金に代わり、条件や年金額がよくなります。
今回の「106万円の壁」の拡大は労働者にとって歓迎すべきものと捉え、将来的な計画を立てるべきでしょう。政府の税制や各種の補助も夫婦共働きを推奨する方向に動いています。
社会保険の「106万円の壁」、税制の「103万円の壁」を意識せず、少しでも働いて収入を多くするのが自分自身に返ってくるものも大きいと考えることをお勧めします。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー