年金額に影響を与える、マクロ経済スライドってなに?
配信日: 2020.11.13
マクロ経済スライドは年金制度に導入されている仕組みの名称です。年金制度をよく知るためにもマクロ経済スライドについて学んでおきましょう。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
マクロ経済スライドってどんなもの?
マクロ経済スライドとは、賃金や物価の変動に応じて緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みで、平成16年の年金制度改正で導入されました。これにより、現役世代への負担が過度にならないように最終的な保険料の負担額を定め、その範囲内で年金の給付ができるよう調整されることになっています。
具体的には、賃金や物価による改定率から現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことで年金の給付水準を調整します。それでは、賃金・物価の上昇パターンごとにどう動いていくのか見ていきましょう。
賃金・物価の上昇率が大きい場合
賃金や物価がある程度上昇する場合はマクロ経済スライドによる調整が行われ、年金額の上昇はその分抑制されます。
出典:日本年金機構 「マクロ経済スライド」
賃金・物価の上昇率が小さい場合
賃金・物価の上昇が小さく、マクロ経済スライドによる調整で年金額がマイナスとなってしまう場合、年金額の改定は行われません。
出典:日本年金機構 「マクロ経済スライド」
賃金・物価が下落した場合
賃金・物価が下落した場合、マクロ経済スライドによる調整は行われず、年金額は賃金や物価の下落分のみ引き下げられます。
出典:日本年金機構 「マクロ経済スライド」
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マクロ経済スライドのキャリーオーバー制度とは?
マクロ経済スライドによる調整が真価を発揮するのは賃金や物価が大幅に上昇したときです。言い換えれば賃金や物価が大幅に上昇しなければ十分な効果が得られないのです。
そういったときは、あえて物価スライドによる調整を行わず、未調整の部分を翌年度以降に繰り越すよう運用がされています。この仕組みをキャリーオーバー制度といいます。
例えば、景気の後退期に調整できなかった部分を景気の回復期に調整するといった感じです。このキャリーオーバー制度により、これまで以上に世代間の公平を図りつつ将来受け取る年金の給付水準を確保できるようになりました。
キャリーオーバー制度は平成30年4月1日より施行されており、直近では令和元年に平成30年度の未調整分を繰り越し調整する形で実施されました。
マクロ経済スライドの調整頻度は?
マクロ経済スライドによる調整は少なくとも5年に一度行われる財政検証にて年金財政が長期にわたって均衡すると見込まれるまで行われます。マクロ経済スライドにより賃金や物価の変動がより正確に年金へ反映されるよう、このような仕組みになっています。
なお、2020年度においてはマクロ経済スライドの調整により年金額が2019年度に比べて0.2%プラスとなりました。
年金の仕組みは日々変化している
老後の不安や年金への不信感が高まる中、国は国民の老後の生活を守り、年金制度への信頼性を高めようとさまざまな施策を実施しています。その1つがマクロ経済スライドの導入です。マクロ経済スライドにより年金制度が給付と負担の均衡の保たれた制度になるよう調整しています。
年金制度は日々変化しています。老後に備えるという意味でも現行の年金制度について理解しておき、変化があれば都度その仕組みについて理解していくべきでしょう。
出典
日本年金機構 マクロ経済スライド
日本年金機構 年金Q&A(マクロ経済スライド)
厚生労働省 令和2年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者:柘植輝
行政書士