更新日: 2020.12.16 年金

夫に先立たれた妻のひとり暮らし、遺族年金だけでは苦しい?

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

夫に先立たれた妻のひとり暮らし、遺族年金だけでは苦しい?
多くの高齢夫婦は、夫が先に亡くなり妻が残されるケースが多いといえます。
 
長い間、妻が仕事をもち厚生年金などが受給できればいいのですが、専業主婦で、本人の受け取る基礎年金が収入の中心だと、生活するには結構大変です。夫の生存中から、何らかの準備をしておく必要があります。
 
特に団塊世代より前の世代では、妻が専業主婦の割合はかなり高いと思われます。
 
黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

執筆者:

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

遺族年金だけでは十分とはいえない

夫が会社員・公務員で、妻が専業主婦の場合、2人とも65歳を過ぎていると、夫は「老齢基礎年金+老齢厚生年金」を、妻は「老齢基礎年金」を受け取ることができます。もし妻が仕事をした期間があると、妻も「老齢厚生年金」を受給できます。
 
妻が専業主婦だと仮定すると、夫の生存中に受け取る年金のモデル額は以下のとおりです。
 
夫「老齢基礎年金(約72万円)+老齢厚生年金(約144万円)」で合計約216万円
妻「老齢基礎年金(約72万円)」で、夫婦合計では、年額約288万円
 
1カ月当たりでは約24万円です。ここからそれぞれの国民健康保険料や介護保険料を引かれ、残りが夫婦2人の生活費です。
 
夫に先立たれた専業主婦の妻は、夫の「老齢基礎年金(約72万円)」と「老齢厚生年金(約144万円)」はなくなります。妻の「「老齢基礎年金(約72万円)」は残り、「遺族厚生年金(約108万円)」(夫の老齢厚生年金の4分の3にあたる金額)を受け取ることになります(夫が厚生年金25年以上加入で、子どもが成人していると仮定)。
 
年額で約180万円、1カ月当たりでは約15万円になります。本人分の健康保険料と介護保険料は引かれますが、遺族厚生年金は非課税で優遇されます。
 
これは妻が専業主婦のケースですが、妻が会社勤めをしていたケースでは、妻が受け取っている老齢厚生年金の額によって変わってきます。
 
次の3つの条件、(1)夫の老齢厚年金の4分の3、(2)妻の老齢厚生年金、(3)それぞれの老齢厚生年金の2分の1を合算、このうちの最大の金額から妻の受け取っている老齢厚生年金額を引いた差額が、妻の遺族厚生年金として支給されます。
 
専業主婦に比べると多く受け取れます。もし妻の老齢厚生年金の受給額が、夫の受給額と同額または上回っていると、遺族年金は受け取ることはできません。
 
自営業者など国民年金に加入し、老齢基礎年金を受け取っている場合は、18歳未満の子どもがいると遺族基礎年金が支給されますが、18歳未満の子どものいない配偶者には支給されません。
 
配偶者も国民年金に加入しており、老齢基礎年金を受給できるためです。そのため、夫が自営業で中心的に働いていた場合、夫が先に亡くなると、妻が夫の仕事を継承できないことが多く、収入面では非常に苦しい事態になります。
 

ひとり暮らしでも変わらない支出も

夫が亡くした専業主婦の場合、前の実例に即していえば、夫婦で1カ月に24万円ほど受け取っていた公的年金は、本人の基礎年金と遺族年金だけになり、合計15万円ほどになります。
 
もし夫自身が、公的年金以外に、企業年金などを受けていると、1カ月の収入は24万円+αで、30万円以上になることも十分に考えられます。妻がひとり暮らしになったときには、夫の企業年金などはなくなり、家計収入は減額されます。
 
もし夫が自営業の人では、遺族年金も受け取れないため、かなり生活は厳しくなると考えられます。
 
一方で出ていくお金は、食費などは家族が減るためにかなり減額されますが、住居費はまったく同じ経費がかかります。戸建て住宅では、屋根や外壁の修繕や庭木に手入れに経費がかかります。
 
賃貸住宅やマンションでは家賃や管理費が、これまでと同程度はかかります。時には、大幅な修繕が必要になるかもしれません。
 
またひとり暮らしに伴うセキュリティの強化や内装の変更など、これまで以上に新たな経費が発生するかもしれません。いずれにせよ、年金収入だけではかなり苦しくなることも十分に想像できます。
 

妻の老後を見据えた早めの資産形成

こうした不安を少しでも解決するには、妻の資産形成を早くから準備すると安心です。65歳の時点では、ある程度メドをつけておきたいものです。特に子どもが成人していても、子どもからの援助は受けない前提で考える必要があります。
 
そのための方法としては、1つは基礎年金の受け取る時期を遅らせ、受取金額を増やすことをお勧めします。通常、基礎年金は65歳から受給できますが、これを5年間遅らせて70歳から受給します。この5年は夫の公的年金や他の収入でやりくりをします。
 
70歳より前に受け取ることも可能ですが、もし70歳受給を選択すると、65歳受給に比べ年金額が42%増額になり、生涯この金額を受け取れます。70歳を超えてからの受給も制度として検討されており、長生きすればするほど有利な仕組みです。
 
次に検討したいのは、個人年金などを50歳ころから準備することです。例えば50歳からでも、イデコを利用することも有効です。イデコは、今後65歳まで加入が認められ、税制上も有利になので、積極的に利用したいものです。できるだけ若い年齢から準備できれば、それだけ毎年の受取額が多くなります。
 
また国民年金の「付加年金」制度を利用しも検討すべきです。少し支払金額を増やすことで、受け取る基礎年金が生涯増額されます。
 
ひとり暮らしになっても、規定の基礎年金以上に毎年受け取るお金があれば、それだけ生活にゆとりが生まれます。自営業の人は「国民年金基金」に加入し、基礎年金に加えて受取額の増額を図ることもできます。
 
さらに、イデコとは別に株式や投資信託を妻名義で保有することも有効です。
 
しかし専業主婦が夫の援助で、一時に多額の株式などを購入すると、贈与税の対象になりますので、年間110万円以下で、比較的堅実な株式や投資信託を購入しておくことです。株式や投資信託には配当金があり、売却せずに保有し続けることで、毎年配当金を受け取れるため、家計の助けにもなります。
 
老人ホームへの入居など、まとまったお金が必要になるときには、これらを売却して資金をつくることができます。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
 

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