公的年金の併給調整には、例外があるってホント?
配信日: 2021.01.14
また、この制度には例外があります。同時に併給できるのはどのようなケースなのかについて解説します。
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
併給調整ってどんな制度?
そもそも「併給調整ってなに?」と思っている人もいるのではないでしょうか?まずは、併給調整について、どのような制度なのかを押さえておきましょう。
日本の年金制度では、2つ以上の年金を受給できる権利を取得する場合があります。ただし、年金が受給できるのは、原則として、1人につき1年金と決められています。2つ以上の年金の受給権利がある場合、いずれか1つの年金を選んで受給することになり、その他の受給は停止されます。このことを「併給調整」と言います。
ただし、1つというと、国民年金と厚生年金はどうなるの? と思うかもしれませんね。
基礎年金である国民年金から受給できる年金給付と、厚生年金などの被用者年金からの年金給付を同時に給付する場合には、それぞれの年金の支給事由が「老齢」「障害」「遺族」のように、同じ事由によるものならば併せて受給できます。
パターンとして3つがあります。
(1)老齢基礎年金+老齢厚生年金
(2)障害基礎年金+障害厚生年金
(3)遺族基礎年金+遺族厚生年金
そして、この3つのパターンの中から、1つを選択しなければならないという決まりになっています。
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事由が異なる場合はどうなるの?
ただ、支給事由が異なってしまう場合があります。この場合もいずれかの1つを選択しなければなりません。
例えば、遺族基礎年金と遺族厚生年金と障害厚生年金を受け取れる場合です。このようなケースでは、同じ支給事由となっているのは遺族基礎年金と遺族厚生年金ですので、この2つは1つとして認められます。
(1)遺族基礎年金+遺族厚生年金
(2)障害厚生年金
(1)か(2)のいずれかを選択します。
65歳前で障害基礎年金と障害厚生年金と特別支給の老齢厚生年金を受け取る場合では、同じ支給事由となっているのは障害基礎年金と障害厚生年金ですので、この2つは1つとして認められます。
(1)障害基礎年金+障害厚生年金
(2)特別支給の老齢厚生年金
(1)か(2)のいずれかを選択します。
併給調整で例外となるケース
では、併給調整で例外となるのは、どのようなものなのかを確認していきます。
2つ以上の年金を受給できるのは、遺族年金と障害年金です。具体的に、どのような組み合わせになるのでしょうか?
●遺族年金のパターン
65歳以上で老齢基礎年金を受給していて遺族厚生年金も受給できるようになった場合。
(1)老齢基礎年金+遺族厚生年金
(2)老齢厚生年金+遺族厚生年金
(1)か(2)のパターンで受給できます。
ただし、(2)のケースで自分の老齢厚生年金が受給できるようになった場合には、自分の老齢厚生年金よりも年金額が多いときは差額が支払われ、遺族厚生年金よりも老齢厚生年金の支給額が多いときには、遺族厚生年金の支給は全額停止されます。
●障害年金のパターン
老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給していて障害基礎年金が受給できるときには、老齢基礎年金と障害基礎年金を併給できませんが、65歳以降なら老齢厚生年金と障害基礎年金は併給できます。
(1)老齢基礎年金+老齢厚生年金
(2)障害基礎年金+障害厚生年金
(3)障害基礎年金+老齢厚生年金
(1)~(3)のパターンで受給できます。
社会保険事務所で相談しよう
例外パターンは上記以外にもあります。迷ったらそのままにせず、できるだけ早く社会保険事務所に出向いて、どのように受給すると良いのかアドバイスを求めることをお勧めします。
そのままにしておくと、損をしてしまうこともあります。少しでも心当たりがあるのなら、相談してみましょう。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト