更新日: 2019.06.19 その他税金

宝くじは愚者の税金? 宝くじを買うことは非合理的な選択なのか

執筆者 : 横山琢哉

宝くじは愚者の税金? 宝くじを買うことは非合理的な選択なのか
年末になると毎年、宝くじの売り場に並ぶ人の姿がマスコミによって報道されます。
 
人気のある売り場は長蛇の列になるので、「よく寒い中、我慢して並べるな」と思っている人もきっと多いでしょう。それだけ、宝くじは根強い人気があるということですね。
 
「宝くじは愚者の税金」などと揶揄(やゆ)されることもありますが、正直なところ、筆者は宝くじを買うことがそのように言われることには少々違和感があります。
 
そこで、今回は宝くじを買うことに対するこうした指摘について考えてみましょう。
 
横山琢哉

執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター

保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。

宝くじを買うべきでないと言われる理由は「還元率」と「当せん確率」

宝くじは買うべきではないと主張する人が理由として挙げるのは、主に還元率と当せん確率です。そこで、それぞれについて考えてみます。
 
宝くじの還元率は他の公営競技と比べて低い
 
宝くじにおける還元率とは、宝くじの売上に対する当せん金の割合です。
 
総務省が作成した資料によると、平成20年度における宝くじの売上は1兆419億円、そのうち当せん金の金額は4758億円なので、還元率は45.7%となります。
 
他の公営競技をみてみますと、競艇、競馬、競輪、オートレースのいずれも75%程度となっています。ちなみにサッカーくじは宝くじと同程度の49.6%です。
 
他の公営競技に比べ、宝くじは購入者から搾取している割合が高いからやめたほうがいいというのであれば、「宝くじを買うより競馬のほうがいい」という言い方にならないのはなぜでしょうか。
 
そのため、単に還元率が低いというだけで「宝くじを買うべきではない」という理由にはならないはずです。
 
宝くじの当せん確率はきわめて低い
 
2018年に発売された年末ジャンボ宝くじの枚数は4億8000万枚(2000万枚×24ユニット)で、そのうち1等7億円の本数は24本です。
 
ここから単純計算すると、1等の当せん確率は2000万分の1です。2等1000万円は72本なので、約667万分の1ということになります。
 
この数字を見る限り、宝くじなんて買う気が起こらないという人が多いというのはうなずけます。しかし、宝くじを買うべきかどうかというのは当せん確率で判断することではありません。
 
たとえばサイコロを1回だけ振るとき、絶対に1の目が出ることはないのでしょうか?もちろんそんなことはありませんよね。
 
では、宝くじを1枚だけ買ったとき、絶対に1等は当せんしないのでしょうか…?
 
もし、確率が低いから絶対に当たらないというのなら、1等に当せんしたすべての人は毎回、車が買えるくらいの大金を投じて宝くじを購入したのでしょうか。
 
結局、宝くじに当せんするかどうかというのは単なる運の問題です。いくら確率が低かろうが当たる人は当たりますし、当たらないと決めつけて買わない人は、絶対に当たることはありません。
 
そのため、生活に支障をきたすような買い方をしているのでもない限り、他人がとやかく言う話ではないのではないでしょうか。
 

保険と宝くじの仕組みは同じ

「保険は不幸の宝くじ」と言われることもありますが、その仕組みはどちらも基本的に同じです。
 
宝くじは多くの人から集めた売上金を、当せんした人に回します。1等の当せん者に7億円もの大金を支払うことができるのは、その裏で当せん金を受け取れない人がたくさんいるからです。
 
同様に、保険も契約者から集めた保険料を不幸があった人に支払います。掛け捨ての保険は大半の人が掛け捨てになるからこそ、一部の人にまとまったお金を支払うことができるわけです。
 
貯蓄型の保険であれば掛け捨てを回避することはできますが、掛け捨ての保険よりも高めの保険料を支払う必要があり、また加入している間はその資金が実質的に拘束されるというデメリットがあります。
 
「保険の掛け捨ては損」と言われることも珍しくありませんが、両者は一長一短なので、自身の状況に合わせて都合の良いものを選択しましょう。
 
出典
総務省「宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率」
宝くじ公式サイト
 
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
 

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