更新日: 2021.02.02 年末調整

令和2年の年末調整は一体何が変わる? わたしたちに影響があることを教えて!

監修 : FINANCIAL FIELD編集部 / 執筆者 : 松木優子

令和2年の年末調整は一体何が変わる? わたしたちに影響があることを教えて!
今年も早いもので、そろそろ年末調整の時期が近づいてきました。税制改正に伴い、令和2年からいくつか変更点があることはご存じですか? 控除額が変わったり「ひとり親控除」が新設されたりするなど、ほぼ全ての人に関わってきます。どんな点が変わるのかしっかり確認をして、書類の記入漏れなどがないようにしましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

監修:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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松木優子

執筆者:松木優子(まつき ゆうこ)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。フリーライター。

来店型保険ショップ元コンサルタント。首都圏郊外の地域密着店や、都市部の富裕層が多い店舗で、年間約150組のお客様のコンサルタントを担当。

 

基礎控除額が上がる

基礎控除額はこれまで一律38万円でしたが、令和2年より合計所得金額に応じて下記のように変更されます。

基礎控除額 基礎控除額
合計所得金額 改正後 改正前
2400万円以下 48万円 38万円(所得制限なし)
2400万円超~2450万円以下 32万円 38万円(所得制限なし)
2450万円超~2500万円以下 16万円 38万円(所得制限なし)

国税庁 「令和2年分 年末調整のしかた I 昨年と比べて変わった点」を基に筆者が作成
 
合計所得金額が2400万円以下の方は基礎控除額が10万円増えますが、逆に2400万円を超える方は基礎控除額が減り、2500万円を超える方は基礎控除自体が適用されなくなります。
 

給与所得控除額が下がる

一律で控除してくれる基礎控除額が基本的に上がる代わりに、所得に応じて控除してくれる給与所得控除額が下がります。

給与所得控除 給与所得控除
給与の収入金額(A) 改正後 改正前
162万5000円以下 55万円 65万円
162万5000円超~180万円以下 (A)×40%-10万円 (A)×40%
180万円超~360万円以下 (A)×30%+8万円 (A)×30%+18万円)
360万円超~660万円以下 (A)×20%+44万円 (A)×20%+54万円
660万円超~850万円以下 (A)×10%+110万円 (A)×10%+120万円
850万円超~1000万円以下 195万円 (A)×10%+120万円
1000万円超 195万円 220万円

国税庁 「令和2年分 年末調整のしかた I 昨年と比べて変わった点」を基に筆者が作成
 
給与所得控除は平成25年以降、上限額が段階的に引き下げられており、令和元年は収入金額1000万円が上限でしたが、令和2年は850万円となります。つまり収入850万円超の方は税負担が増えます。しかし、その中で次のいずれかの条件に該当する場合は「所得金額調整控除」の対象となり、税額が税制改正前から大きく増えないように調整されます。
 
・本人が特別障害者である
・23歳未満の扶養親族がいる
・特別障害者である同一生計の配偶者または扶養親族がいる

 

各種所得控除を受けるための所得金額の上限が上がる

配偶者控除や扶養控除を受ける場合、対象者の合計所得金額に上限が設けられていますが、これが引き上げられます。それにより、例えば扶養控除を受けるためにパート勤務時間を減らしていた方は勤務時間を今後増やせる可能性も出てきます。

合計所得金額 合計所得金額
扶養親族等の区分 改正後 改正前
同一生計配偶者 48万円以下 38万円以下
扶養親族 48万円以下 38万円以下
源泉控除対象配偶者 95万円以下 85万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者 48万円超~133万円以下 38万円超~123万円以下
勤労学生 75万円以下 65万円以下

国税庁 「令和2年分 年末調整のしかた I 昨年と比べて変わった点」を基に筆者が作成
 

「ひとり親控除」の新設

これまでシングルマザーやシングルファザーの世帯が控除を受ける際は「寡婦(夫)控除」といって、配偶者と離婚・死別・生死不明となった場合しか適用されず、未婚の方は対象外でした。しかし、未婚のひとり親に不公平が生じないよう「ひとり親控除」が設けられました。控除額は一律35万円、条件は次のとおりです。
 
・生計を一にする子がいる
・合計所得金額が500万円以下
・事実上、婚姻関係と同様の状態にある人がいない

 
ひとり親控除に該当しない方(離婚や死別したが子がいない、子以外の扶養親族がいるなど)は、これまでどおり「寡婦(夫)控除」が適用となり27万円が控除されます。ただし、寡夫控除は廃止されるので男性にはひとり親控除が適用され、女性の場合も合計所得金額が500万円以下であるなどの条件が課せられます。
 

※財務省「『令和2年度税制改正』(1)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し」より筆者が作成
 

年末調整の申告書の様式が変わる

ここまで解説したとおり、令和2年より大きく変わる点がいくつかあります。それに伴い、「給与所得者の配偶者控除等申告書」は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」として、1枚の用紙に統合されました。
 

出典:国税庁 「令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
 
色分けするとこのようになります。
 
国税庁 「令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を基に筆者が作成
 
記入が必要な箇所は各々の状況によって異なります。詳しい記入方法は勤務先の担当者に確認をするか、国税庁のホームページで確認することをおすすめします。
 
出典
国税庁 「令和2年分 年末調整のしかた I 昨年と比べて変わった点」
国税庁 「令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
財務省 パンフレット「令和2年度税制改正」(1)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
 
執筆者:松木優子
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。フリーライター。

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