更新日: 2019.12.25 確定申告
年末調整をしていても確定申告が必要な場合って?9つの事例にあなたは当てはまる?
給与所得者の方は、多くの場合は年末調整をすることでその年分の所得税や住民税等が確定します。つまり、確定申告をする必要がないわけです。
ところが、一定の方については年末調整をした場合であっても、確定申告が必要であったり、確定申告をしたほうが良かったりする場合があります。
本稿では、そのような例をいくつか取り上げてみました。
なお、本稿は令和元年11月1日現在の税制によっていますのでご留意ください。
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。
税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。
中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。
年末調整とは
給与の支払いを受ける人(給与所得者)は、毎月の給与支払時に源泉所得税を控除されています。では、この源泉所得税を1月分から12月分まで合計すれば、その人の年税額となるでしょうか? 答えはノーです。なぜならば、毎月の源泉所得税額には生命保険料控除や地震保険料控除の影響が反映されていないなど、源泉所得税は概算控除といった性格を有するものであるためです。
そこで、給与所得者について正しい所得税額を算出するためには、年末に精算する必要が生じます。精算の結果、控除された源泉所得税の額が過大であれば差額が還付されることになりますし、逆に不足であれば差額が追徴されます。これが年末調整です。
なお、年末調整によって給与所得者の所得が確定しますが、この情報は会社から給与所得者の居住地市区町村へ送られることになっています(給与支払報告)。これによって、給与所得者の住民税も計算されますので、原則として住民税の確定申告もいらないということになるわけです。
確定申告が必要な場合・すべき場合
それでは、給与所得者であっても確定申告が必要な場合や確定申告をすべき場合について、いくつか例を挙げて見てみましょう。
(1)給与が年額2000万円超の場合
1年間の給与収入額が2000万円を超える場合は、そもそも年末調整が行われません。そのため、確定申告を行わなければいけないことになります。
(2)住宅ローン適用初年度の場合
住宅ローン控除の適用初年度は、必ず確定申告をする必要があります。適用2年目以降は、年末調整での控除が可能です。
(3)2ヶ所以上から給与を受けている場合
2ヶ所以上から給与を受けている人は、原則として確定申告が必要です。
例外的に、「メインの給与以外の給与収入金額+給与・退職以外の所得合計額」が20万円以下となる場合は所得税の確定申告が不要ですが、住民税については確定申告不要の制度がありませんので、この場合であっても別途住民税の確定申告が必要です。
(4)副業での収入が年額20万円超の場合
1ヶ所から給与を受けている人で、「給与・退職以外の所得合計額」が20万円を超える場合も、確定申告が必要です。なお、「給与・退職以外の所得合計額」が20万円以下の場合は、所得税の確定申告は不要ですが、住民税についての確定申告が必要です。給与所得者が副業をしている場合は、これに該当するかもしれません。
(5)医療費控除を受ける場合
医療費控除は年末調整で受けることができませんので、確定申告が必要です。セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用を受ける場合も同様です。
(6)ふるさと納税等の寄附金控除を受ける場合
ふるさと納税等の寄附金控除も年末調整で受けることができませんので、確定申告が必要です。ただし、ふるさと納税について「ワンストップ特例制度」を選択している場合は、確定申告不要です。
(7)ソーシャルレンディングへの投資を行っている場合
ソーシャルレンディングへの投資に関わる所得は、原則として雑所得とされます。なお、源泉所得税が控除されますが、そのことを理由として確定申告が免除されるわけではないので注意が必要です。なお、前掲の(3)や(4)に該当する場合があるかもしれません。
(8)災害や盗難などで資産に損害を受けた場合
災害や盗難などで資産に損害を受けた場合は、一定の算式に基づいた雑損控除を受けることができますが、雑損控除も年末調整では受けることができませんので、確定申告が必要です。
(9)不動産の譲渡をした場合
不動産を譲渡した場合も、原則として確定申告が必要です。ここで注意をしたいのは、例えば自宅を売却したところ、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除」という特例を使えば譲渡所得がゼロになる(不動産譲渡に関わる所得税が発生しない)といったような場合です。このような税制上の特例は確定申告をしなければ受けることができませんので、申告を忘れないように気をつけてください。
おわりに
これまで挙げた「確定申告が必要な場合・すべき場合」は、あくまでも一例です。
ご自身の状況にあわせた適切な申告を行うため、ご不明な点があれば、最寄りの税理士会の相談窓口や税務署へ相談してみることをお勧めします。また、確定申告期限が近くなるにつれて、相談窓口も混雑します。早めの対応を心がけましょう。
執筆者:星田直太
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))