更新日: 2022.05.28 その他税金
消費税10%増税による家計消費への影響は?
本記事では、消費税10%増税による家計消費の影響がどのくらいあったのかを分析していきます。
執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
消費税とは
消費税は、商品の販売やサービスの提供などの取引に対して課税される税金です。1989年に消費税法が施行され、消費税3%の導入、1997年に5%、2013年に8%、そして2019年に10%になりました。消費税導入の目的は、社会保障制度として確立された年金や医療、介護の社会保障給付、さらには少子化対策の経費に充てるためです。
社会保障制度の財源は、保険料が約70%、そのほかを税金と国債の発行で賄っています。少子高齢化の影響によって、社会保障費が増え続けているため、税金と国債に頼る部分も増えてしまいます。
消費税は景気の影響によって消費する量に変動はあるものの、例えば衣食住に関わる消費などは大きく減ることはありません。そのため消費税は景気に影響されにくく、安定的な財源を確保するには効果的な税金といえます。
しかし、消費税が上がる前までは駆け込み需要があるものの、それ以降は消費が少なくなるという特徴があります。景気が拡大している場合であれば、一時的に消費が少なくなるものの、もしも景気が縮小している場合や、景気が一定期間落ち込んでいるデフレーションの状況下においては、消費の減少によってさらなる景気の落ち込みが加速化される問題があります。
消費税10%増税による家計消費の影響は?
総務省統計局が出している世帯消費動向指数(CTIミクロ)から、消費税10%増税が消費にどう影響したのかをみていきます。また、消費税10%増税の比較対象として、消費税8%増税時の家計消費の動向を合わせて確認します。
消費税が増税された月を「増税施行月」として、1年前と1年後の動きを図表1で算出しました。
【図表1】
出典:総務省統計局 世帯消費動向指数より筆者作成
グラフでは増税施行月を「1.00」としており、それを中心として消費の上下を表しています。
青色が消費税8%増税時のもので、2014年4月に施行されました。施行の2ヶ月前をみると、消費が伸びており、駆け込み需要があったことが考えられます。しかし、1ヶ月前をピークとして消費が落ち込み、半年を過ぎたところで消費が少し伸びたことがわかります。
オレンジ色が消費税10%増税時のもので、2019年10月に施行されました。4ヶ月前から駆け込み需要があり、1ヶ月前から消費が落ち込むものの、消費税8%増税のときとは異なり、大きな消費の落ち込みはありません。
また5ヶ月後から消費が落ち込んでいるのは、新型コロナウイルス感染症による影響となるため、消費税10%増税による消費の影響は少なかったといえるでしょう。
消費税8%増税のときのように大きな消費の落ち込みがなかったのは、軽減税率制度の導入といえます。
軽減税率制度とは、特定の商品の消費税を10%ではなく8%の据え置きとする制度です。酒類や外食を除く飲食料品、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞が、消費税の軽減税率の対象となりました。
家計消費の影響は家計にどう関係するのか
消費税増税による家計消費の影響は、景気の動向によって影響の仕方が変わってしまいます。
物価が持続的に下落しているデフレーション下であれば、消費税分の物価が上昇するものの、経済不安などから消費は控えられてしまいます。緩やかに景気が上昇している場合であれば、消費が控えられることで、景気が後退する可能性が出てしまいます。景気の後退は、企業収益の減少につながるため、給与の減少や失業率の増加が起こることから、デフレーションに戻る可能性があります。
一方で、消費税の目的が社会保障費の安定財源となるため、現在の社会保障制度を維持するものとしては一時的に効果があります。しかし現在の社会保障制度を維持するということは、将来的には人口減少があるため、さらなる増税の必要があるという問題に直面することになるでしょう。
つまり、消費税の増税は景気に影響を与えるものの、現在の社会保障制度を維持するものとしては効果があります。
また、消費税8%増税時の消費の落ち込みがあった反省を踏まえて、消費税10%増税時には軽減税率制度を入れたことで、消費の落ち込みを抑え込むことにつながったといえるでしょう。
出典
国税庁 消費税のしくみ
e-Gov法令検索 消費税法
財務省 これからの日本のために財政を考える 増大する社会保障とは何か
総務省統計局 消費動向指数(CTI)の概要、結果等
国税庁 軽減税率制度の概要
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士