更新日: 2022.06.13 控除

離れて暮らす親の支援がしたいけど、税金の控除などはある?

離れて暮らす親の支援がしたいけど、税金の控除などはある?
「離れて暮らす親が年金収入だけでは生活できない」「生活に余裕をもたせてあげたい」などの理由から、支援をしたいと考える人は多いでしょう。
 
親に金銭を渡して支援する場合、贈与税がかからなかったり、扶養控除の対象となったりと、税金の面での負担が軽くなる可能性があります。
 
本記事では、親の生活費を支援する場合の、贈与税や扶養控除のルールや気を付けるポイントをまとめました。支援をする前に制度を確認して、負担が少ない支援方法を検討しましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

離れて暮らす親への生活費支援は贈与税がかからない

一般的には、1月1日~12月31日の1年間に、基礎控除額の110万円を超える財産を個人からもらった場合、贈与税が発生します。そのため、確定申告をして納税しなければなりません。
 
ただし、夫婦や親子、兄弟姉妹などの間で生活費として渡した財産については、贈与税の対象外です。そのため、離れて暮らしている親に生活の支援を目的にお金などを渡しても、贈与税は発生しません。
 
ここでの「生活費」とは、通常の日常生活に必要な費用や病気やけがの際の治療費、子育て費用などをいいます。贈与税が非課税となるのは、これらの生活費に必要なたび、直接充てるための財産のみです。
 
生活費として渡したつもりのお金でも、生活費や教育費に使用しないで預貯金となっている場合や、株式や不動産などの購入に使用した場合は贈与税がかかるため注意しましょう。
 

離れて暮らす親への生活費支援は扶養控除の対象になる

離れて暮らす親に生活費を常に支援している場合、親の合計所得金額が48万円以下であれば扶養親族とみなされ、所得税や住民税の計算時に扶養控除が受けられます。
 
控除額は親の年齢が控除を受ける年の12月31日時点で70歳未満(一般の控除対象扶養親族)の場合と、70歳以上(老人扶養親族)の場合で異なります。具体的な金額は、図表1のとおりです。
 
【図表1】

親の年齢
(扶養親族の種類)
控除額
70歳未満
(一般の控除対象扶養親族)
所得税:38万円
住民税:33万円
70歳以上
〔老人扶養親族(同居老親等以外の者)〕
所得税:48万円
住民税:38万円
70歳以上
〔老人扶養親族(同居老親等)〕
所得税:58万円
住民税:45万円

出典:国税庁 No.1180 扶養控除、東京都主税局 個人住民税より筆者作成
 
なお、もともとは同居で親の長期入院によって離れて暮らしている場合は、同居しているのと同様とみなされます。ただし、老人ホームなどへの入居は別居として扱われます。
 

扶養控除の適用可否を判断するための合計所得金額の計算方法

生活を支援している親が扶養控除の対象になるのは、常に生活費の支援をしていることに加えて、年金などを含む1年間の合計所得金額が48万円以下である必要があります。
 
親の収入が給与のみ、老齢年金のみ、給与と老齢年金両方の場合の合計所得金額の計算方法と扶養控除を受けられるボーダーラインは、それぞれ次のとおりです。
 

■親の収入が給与のみ

給与収入から収入額に応じた給与所得控除を差し引いた金額が、合計所得金額です。給与収入103万円が、合計所得金額48万円以下に収まるボーダーラインです。
 

■親の収入が老齢年金のみ

年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いた金額が、合計所得金額です。親が65歳未満の場合、年金額が108万円以下であれば合計所得金額が48万円以下となります。親が65歳以上の場合は、年金額158万円がボーダーラインです。
 

■親の収入が給与と老齢年金の両方

親に給与と老齢年金の両方の収入がある場合は、合計所得金額の計算時に「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」(以下、所得金額調整控除)を考慮する必要があります。
 
所得金額調整控除は、給与所得控除と公的年金等控除の金額引き下げによる影響を調整するために設けられた控除です。
 
給与と公的年金の両方の収入があり、給与所得控除、公的年金等控除額をそれぞれ差し引いたあとの合計額が10万円を超える場合に、次の式で計算した金額(最大10万円)を給与所得の金額から控除できます。
 
控除額=[給与所得控除後の給与の金額(上限10万円)+公的年金等控除後の公的年金の金額(上限10万円)]-10万円
 
なお、合計所得金額には、配偶者の遺族年金など非課税の収入は含みません。
 

親へ生活費の支援をした人は贈与税非課税と扶養控除の対象

お金を渡す方法で離れて暮らす親を支援する場合、そのお金が生活費として使われれば、渡したお金には贈与税が課税されません。
 
しかし、貯金や投資などに使用された場合は、贈与税の課税対象となるため注意しましょう。また、常に生活費の支援を続けている場合、親の合計所得金額が48万円以下であれば扶養親族とみなされるため、扶養控除を受けられます。
 
ただし、親の年齢や収入の内容で控除を受けられるかどうかや控除額が変わるため、ルールを確認しておきましょう。
 

出典

国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1180 扶養控除
国税庁 専門用語集
東京都主税局 個人住民税
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1411 所得金額調整控除
日本年金機構 年金Q&A Q 控除対象となる配偶者や扶養親族に所得がある場合、年間の所得見積額が配偶者は95万円以下、扶養親族は48万円以下でないと控除対象に該当しないこととなっていますが、所得の見積額はどのように計算するのでしょうか。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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