株式投資で利益が出たときの税金対策。確定申告や控除についても解説
配信日: 2022.06.12
そこで本記事では、株式投資で生じる利益には、どのようなものがあるのか、確定申告は会社員でも必要なのかなどを詳しく紹介します。株式投資をこれから始めようか悩んでいる方や、株式投資初心者の方は、ぜひ参考にしてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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株式投資で生じる利益でかかる税金は2種類
株式投資で生じる利益は、大きく分けて「譲渡益」と「配当金」の2種類があります。まず、ここでは、それぞれの利益でかかる税金について紹介します。
株式投資では、どのようなタイミングで株を購入すればよいのか、投資のタイミングなどの知識ももちろん大切ですが、税金についての知識も重要です。「譲渡益」と「配当金」の違いが分からない方は、ここでしっかりと理解しましょう。
譲渡益(譲渡益課税)
譲渡益とは、株式などの資産を売却したときの「利益」に対する課税のことで、「Capital Gain(キャピタルゲイン)課税」ともいわれます。反対に、株式や不動産を売却したときに、損失が出た場合は「Capital Loss(キャピタルロス)」といいます。
税務上、キャピタルゲインは「譲渡所得」にあたるため、個人の場合は原則として確定申告が必要です。
また、利益に対する税金の区分は「申告分離課税」となり、住民税・所得税をあわせて20%ですが、2037年末までは復興特別所得税が上乗せされるので、20.315%となります。
株式投資で得た譲渡所得は、次の区分に応じた金額が源泉徴収されます。
・譲渡益:申告分離課税(所得税15.315%・住民税5%)
・配当金:申告分離課税(所得税15.315%・住民税5%)と、総合課税(所得額により15~55%)のいずれかを選択
なお、損失が出た場合は、譲渡益が発生しないため税金もかかりません。
配当金(配当課税)
株式投資の配当金とは、企業が得た利益の一部を、株主に還元(分配)する金銭のことをいいます。ただし、企業の判断で分配されるため、必ずしも配当金が受け取れるとはかぎりません。
企業に利益があっても還元されないケースもあれば、利益がなくても還元されるケースもあります。
・中間配当:一事業年度中の決算期以外に還元される配当
・剰余金の配当:企業の決算によって確定する経営成績を踏まえて還元される配当
株式投資で得た配当金は、次の区分に応じた金額が源泉徴収されます。課税方法は、源泉徴収のほか、確定申告で総合課税か分離課税を選択できます。
・上場株式等の利子等・配当等の場合:20.315%×譲渡益
・一般株式等の配当等の場合:20.42%×譲渡益
株式投資で利益が出た場合、原則として確定申告が必要
株式投資で利益が出た場合、原則として会社員も確定申告が必要です。
ただし、多くの会社員などはNISA口座を利用しているとの前提があります。特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、確定申告の必要はありません。特定口座にすれば、証券会社が個人に代わって1年間の損益を計算して、「年間取引報告書」を作成してくれます。
なお、特定口座には、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類がありますので、確定申告の手間を省きたい方は「源泉徴収あり」で口座を作りましょう。「源泉徴収あり」にすると、源泉徴収によって納税が完結するため、確定申告は不要です。また、譲渡益や配当金も自動的に損益通算されるので、株式投資初心者の人も安心でしょう。
損失が出た場合は繰越控除ができる
繰越控除とは、株式投資で損失した場合に、翌年以降3年間にわたり繰り越しができる制度のことです。株式投資は、必ずしも誰もが利益を得られるわけではありません。投資のタイミングや情勢によっては、大きなマイナスになる可能性もあるでしょう。
なお、繰越控除は、次で挙げる注意点があります。
1.株式投資にかかる「譲渡所得」の金額から控除する
2.1で控除しきれない損失がある場合は、次に「配当所得」の金額から控除する
また、繰越控除をする場合は、繰り越す年と翌3年間は必ず毎年確定申告しなくてはいけません。仮に、3年間で株式を売却しなかった場合でも必要になるため、忘れないようにしましょう。
確定申告で迷ったら特定口座(源泉徴収あり)がおすすめ
株式投資で利益が出た場合、会社員でも原則として確定申告が必要です。確定申告は、毎年2月16日~3月15日までの間に行わなくてはいけません。確定申告し忘れてしまうと、申告分の税金にプラスして、無申告加算税などが課される可能性があるため、注意が必要です。
また、資産運用を行う際に、複数口座をお持ちの方も多いでしょう。複数口座を持てば、各証券会社のよいとこ取りができるなどのメリットがありますが、開設した口座すべてが「源泉徴収ありの特定口座」だと、税金が過払いになるケースもあります。そうならないためにも、特定口座を作ったからと安心せずに、自分でしっかりと計算することをおすすめします。
なお、資産運用をする場合、どの口座を使うかによっても制度が変わってきます。例えば、NISA口座なら、少額投資非課税制度が適用されるため、条件が適用されれば譲渡益や配当金などが非課税対象となるでしょう。
以上のことから、株式投資で利益が出たときの税金対策を正しく理解をしたうえで、申告漏れなどせず適切な納税をして、税負担の軽減につなげましょう。
出典
国税庁 株式・配当・利子と税
国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー