更新日: 2022.06.15 その他税金

円に戻していないのに課税対象!? 暗号資産(仮想通貨)課税の落とし穴

執筆者 : 新井智美

円に戻していないのに課税対象!? 暗号資産(仮想通貨)課税の落とし穴
暗号資産(仮想通貨)の課税については、売却したときのみならず、決済したときや、ほかの暗号資産を購入した際にも発生します。
 
ちなみに、これらの取引で利益が出た場合、日本円に換金せず、暗号資産のままで行った場合でも課税対象となります。今回は、暗号資産の取引にかかる税金の取り扱いについて解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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暗号資産売却時

暗号資産を売却した際には、その売却した時点で損益が確定し、利益が発生した場合には所得税の課税対象となります。その際の所得金額の計算方法は以下のとおりです。
 
暗号資産の譲渡価格から譲渡原価(その暗号資産1単位あたりの価格×売却した数量)を差し引いた額
 
ここでの取得価格については、暗号資産を取得した際に使った金額のことで、手数料なども含まれます。また、仮に暗号資産を日本円に換金した場合の所得金額は、その暗号資産の譲渡価格(日本円)と取得価格などの差額です。
 

暗号資産決済時

暗号資産取引で商品を購入した場合も、所得が発生します。所得が発生するタイミングは暗号資産で決済したタイミングです。
 
なぜなら、商品の購入においては所得の計算上、その暗号通貨をいったん売却し、そして日本円に換金したうえで商品を購入したことになるからです。そして、その所得金額の計算方法は以下のとおりです。
 
購入した商品の価格から譲渡原価(その暗号資産1単位あたりの価格×売却した数量)を差し引いた額
 
そのため、取引において利用した暗号資産の価格が、商品の購入時よりも値上がりしている場合は、その差額が所得となります。
 

暗号資産交換時

保有している暗号資産で、ほかの暗号資産を購入することもあるでしょう。その際にも所得が発生します。このような取引でも、商品を購入して決済したときと同様に、暗号資産を売却していったん日本円に換金したうえで、別の暗号資産を購入したとみなされるからです。
 
そして、その際の所得金額の計算は以下のとおりです。
 
購入する暗号資産の譲渡価格から譲渡原価(その暗号資産を購入する際に支払った暗号資産1単位あたりの価格×交換のために売却した数量)を差し引いた額
 

NFTやFT取引における課税関係は?

NFT(非代替性トークン)やFT(代替性トークン)を暗号資産と交換した場合、その取引についても課税対象です。ただし、その暗号資産が財産的な価値を持っていることが条件です。
 
また、暗号資産の交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合も、課税対象です。なぜなら、暗号資産を返還できない場合に支払われる補償金については、その保証金と同じ額で暗号資産を売却し、それによって利金銭を得たと考えられるからです。
 
金銭の補償を受けたからといって損害賠償金となるわけではなく、雑所得として扱われる点に注意しておきましょう。
 
[出典:国税庁 No.1525-2 NFTやFTを用いた取り引きを行った場合の課税(※1)、国税庁 No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合(※2)]
 

確定申告が必要になるケースとは?

通常、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計が20万円超の場合は、確定申告が必要になります。この所得には、もちろん暗号資産の取引も含まれます。
 
ここで注意したいのは、暗号資産の取引によって得た所得金額が20万円超ということですので、日本円に換金して振り込まれた金額で判断するのではないということです。
 
また、暗号資産の取引で得た所得は、原則として雑所得です。雑所得は総合課税となり、その所得金額が大きくなればなるほど、高い税率が適用される累進税率となっています。
 
また、損失が出た場合もほかの利益と損益通算できないことや、損失についても、翌年以降の繰り越しはできない点にも注意が必要です。
 
[出典:国税庁 No.1500 雑所得(※3)]
 

まとめ

暗号資産の取引によっては、円に戻していなくても課税対象と判断されるケースが多くあります。
 
そのため、取引内容によって課税対象なのか、それとも非課税扱いなのかを、しっかりと確認しておくようにしましょう。そして、確定申告が必要と分かった場合は、確定申告の期間内に必ず申告し、納税額があるなら納めるようにしてください。
 
もし、支払う所得税額が高額で支払うことが難しい場合は、税務署に換価の猶予、もしくは納付の猶予を申請してみましょう。そうすることで、1年間の納付猶予を受けることができるほか、その間に適用される延滞税についても軽減、もしくは免除の扱いとなります。
 
軽減対象となった場合、2022年であれば最大で年8.7%の延滞税が加算されますが、それが年0.9%になるなど、かなりの軽減率となっています。確定申告を行わないまま放置しておくと、指摘された際には加算税や重加算税の対象です。
 
また、暗号資産取引における収入を計算する際、評価方法については「総平均法」もしくは「移動平均法」のどちらかを選択する必要があります。選択しなかった場合、総平均法により計算された額となるため、事前に確認しておくことも忘れないようにしてください。
 

出典

(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合
(※3)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1500 雑所得
国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和3年12月22日)
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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