株式の配当所得や売却益の確定申告を行うことによる影響とは?
配信日: 2023.03.09
しかし、源泉徴収ありの特定口座、簡易申告の特定口座、一般口座などで、確定申告を行う場合、確定申告を行うことによる影響を考えなくてはなりません。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
確定申告を行ったら
株式の売却益(=譲渡所得)および配当所得の確定申告(総合課税もしくは分離課税)を行う場合、繰越控除前の譲渡所得の額や配当所得の額が合計所得金額に含まれます。
■控除の対象になっている人の合計所得金額が48万円を超えたら
先述のとおり、繰越控除前の譲渡所得の額や配当所得の額が合計所得金額に含まれます。もし、配偶者控除の対象になっている配偶者や扶養控除の対象になっている子ども等の合計所得金額が48万円を超えた場合、配偶者控除や扶養控除などの対象から外れてしまう可能性が生じます。
■国民健康保険料(税)、そして65歳以上の介護保険料
株式の売却益(=譲渡所得)および配当所得の確定申告(総合課税もしくは分離課税)を行う場合、繰越控除前の譲渡所得の額や配当所得の額が合計所得金額に含まれるのは国民健康保険料(税)等も同じで、65歳以上の方の介護保険料等にも影響する可能性が生じてきます。さらに、75歳以上の方が対象になっている後期高齢者医療制度の保険料も同じです。
■納める保険料だけでなく、自己負担の割合にも影響が
繰り返しになりますが、繰越控除前の譲渡所得の配当所得について、確定申告を行った場合、合計所得金額に含まれます。この合計所得金額は70歳以上の方の医療費や、65歳以上の介護費などの自己負担の割合(1~3割)に影響する可能性もあります。
源泉徴収ありの特定口座で課税関係が完結するのなら
株式の売却益(=譲渡所得)に対する課税や、特定口座内での損益通算など、(源泉徴収ありの)特定口座内ですべてが完結するものでしたら、何も問題ありません。
しかし、源泉徴収ありの特定口座でも、配当所得について総合課税で確定申告を行ったり、損益通算しきれなかったりした損失の繰越控除を行う場合などは、確定申告を行わなくてはなりません。
そもそも、源泉徴収のない特定口座、つまり簡易申告口座、それに特定口座ではない一般口座の場合、株式の売却益(=譲渡所得)や株式の売却損失や配当所得の損益通算については確定申告が必要です。
源泉徴収ありの特定口座は、原則として確定申告は不要です。しかし、あえて申告することで得ることができるメリットがある一方で、デメリットもありますので、その両方について理解しておく必要があるでしょう。
出典
総務省 上場株式の配当等への課税方式の選択
厚生労働省 医療保険制度の「現役並み所得者」について
厚生労働省 介護保険における現役世代並みの所得のある者の利用者負担割合の見直し
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役