更新日: 2020.04.07 その他税金
知らないでは済まされない子供のアルバイト代と税金 親は大打撃の可能性も!?
しかし、保護者としてはアルバイトを頑張りすぎて学業がおろそかになってしまうことは避けてほしいことですが、もう1つ知らないでは済まされない落とし穴が潜んでいるのです。
大学生を持つ保護者と、大学生本人のための知っておきたいアルバイトのお金と税金について事例を元に解説します
執筆者:黒須かおり(くろす かおり)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。
2007年にFP資格取得。独立系ファイナンシャルプランナー事務所にて個人相談、執筆、セミナー講師などを経験
その後「パートナーに頼らない経済的自立を目指す女性」をサポートするため2016年FPoffice Rapportを立ちあげる。
現在、年間80回以上の資産運用セミナーや金融機関にて資産形成のアドバイザーとして活動中。また金融サイトへの執筆も年間50本を越える
特定扶養控除
19歳から23歳までの特定扶養親族の大学生のお子さんを持っている人は、年末調整や確定申告のとき特定扶養控除を使うことができます。特定扶養控除は所得税が63万円、住民税が45万円をそれぞれ所得控除することができます。
配偶者などの一般扶養控除が所得税38万円、住民税が33万円なのに比べると金額的に優遇されています。
大学生の子供を持つ家庭では教育費の負担が大きくなるので、税金の負担が軽減されることは家計にとって大変助かる制度ですね。この特定扶養控除を申告することによって、申告した保護者の所得税と住民税が軽減される制度です。
ある日突然、子どもに住民税決定通知書が届いた理由
特定扶養控除のつもりで年末調整をしていたのに、ある日突然、大学生本人の元に住民税の決定通知書が届いたらきっと驚いてしまうことでしょう。実はアルバイト先で年末調整をしていた大学生本人の収入が103 万円を超えていたために、住民税の決定通知書が送られてきたのです。
決定通知書の収入額は127万円でした。そこで初めて特定扶養控除の対象にならないことに気づいたのです。
特定扶養控除の対象にならないと、年末調整で終わったはずの所得税と住民税を修正しなくてはなりません。また学生自身も勤労学生控除の申請をしていなかったので勤労学生控除の更生の請求をすることになります。
修正申告とは、税額を過少に申告したことがわかった場合、訂正して申告を行うことで、更生の請求とは納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合に、正しい金額に訂正することです。
ですから保護者は修正申告、大学生本人は更生の請求になるのです。
親は大打撃の修正申告
修正申告をすると、どのくらいの金額を追加で支払わなければならないのでしょうか。所得税と住民税それぞれ税率10%と仮定して考えてみましょう。
所得税の特定扶養控除金額 63万円×10%=6万3000円
住民税の特定扶養控除金額 45万円×10%=4万5000円
所得税と住民税を合計すると、10万8000円が追加で支払わなければならない金額になります。
一方学生本人はというと、勤労学生控除を更生請求することで、所得税の還付と、住民税額の修正ができます。しかし、勤労学生控除は下記の条件をすべて満たすことが必要です。
勤労学生控除の条件
(1)給与所得などの勤労による所得があること
(2)合計所得金額が65万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
例えば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となります。
(3)特定の学校の学生、生徒であること
この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。
・学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
・国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校または各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
・職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で、一定の課程を履修させるもの
(出典:国税庁HP)
学生本人は、勤労学生控除の更生の請求をすることで所得税が全額還付されます。また、住民税は124万円以下であれば非課税ですが、今回はその金額を超えているため減額されますが、それでも何千円かの負担は残ります。
103万円以下であれば住民税の負担も、改めて手続きをする必要もなく、保護者が追加で税金を支払うこともありませんでした。学生本人も扶養を超えても働くのか、扶養範囲内で働くのかよく考える必要があります。
いきなり10万円以上追加で税金を納めるなんて、予想もしていない保護者にとっては大問題です。
そうならないためにも、大学生本人とアルバイトで稼ぐ金額とそれを超えてしまうことによって起こる家計への影響など、事前にきちんと話し合っておくことをお勧めします。
Text:黒須かおり(くろす かおり)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)