定額減税って私たちの生活にどんな影響を与えるの?
配信日: 2023.12.29
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
減税額は1人4万円
定額減税は、納税者、配偶者、扶養親族1人につき所得税3万円、住民税1万円、合計4万円で2024年6月から実施される予定です。納税者本人、専業主婦(夫)、子2人の4人家族の場合4万円× 4人=16万円(所得税12万円、住民税4万円)の減税になります。
しかし、そもそも税金を納めていなければ減税できません。では、年間16万円の減税を受けられる年収とはどの程度でしょうか。
来年度は扶養控除の改正も議論されていますから、現時点で不明です。しかし、仮に扶養控除が改正されたとすると納税者+専業主婦(夫)+16歳から18歳の子2人の4人家族の場合、納税者の年収は600万円程度が目安となりそうです。この年収以上であれば所得税は12万円以上納めるため、減税を1年間で受けられます。
ただし、生命保険料控除や住宅ローン控除などは考慮していませんし、仮に、納税額が小さく、減税分を納税額から引ききれなかったとしても、翌年の住民税から減税しきれなかった分を差し引くようですから、恩恵を受けられないということはなさそうです。
現総理大臣の発言によると、減税は「過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で、国民負担率の高まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者の皆さまにわかりやすく、国民に税の形で直接還元することといたします。
具体的には令和6年度税制改正において定額減税をお願いしたいと考えております」とのことです。今回の減税は税収増を納税者に還元するものとのことですが、年収2000万円という所得制限を設けることも合意されているようです。高所得者ほど納税額が大きくなるのが税制の仕組みですから、もはや還元ではなくなりそうです。
住民税非課税世帯は1世帯10万円給付
住民税非課税世帯においては、多くの自治体で物価高対策として重点支援地方交付金にて1世帯 3万円の支援を行っています。今回は7万円を上乗せして、合計10万円を目安に支援を行うことが盛り込まれました。
低所得の子育て世帯への対応
住民税非課税世帯ではないけれど、住民税の定額減税対象外となる世帯や低所得世帯のうち世帯人数が多い子育て世帯などにおいては、別途公平な支援が検討されています。
減税は実感しづらい
今回、検討されているのは給付ではなく減税方式です。家計において、減税は実感が湧きづらいため管理が難しいという点が懸念されます。特に住民税は所得税のように年末調整で税金が戻ってくる仕組みではありません。税金が少なくなるという仕組みです。
先に述べた4人家族の例だと、住民税は年間4万円減額されますが、差し引かれる住民税が年間4万円減税されたとしても、普段いくら納めているか認識がなければ減税の実感は湧きづらいでしょう。
所得税のほうが減税額は大きいため、実感が湧きやすいかもしれませんが、いずれにしても、この定額減税を有効なものにするには、普段の納税額より税額が小さいことを把握し、その差額を活用する必要があるでしょう。
ここまで、現時点(2023年12月)でわかっている内容をもとにお伝えしましたが、今後、内容が変更になる可能性はあります。最新情報は随時ニュースなどでご確認ください。
出典
首相官邸 政府与党政策懇談会(令和5年10月26日)
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士