「定額減税」って基礎控除や配偶者控除などとなにが違うのでしょうか?
配信日: 2024.07.28
本記事では、定額減税の概要について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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定額減税は基礎控除となにが違う?
定額減税では、所得税3万円と住民税1万円の合計4万円が納税額から控除されます。扶養に入る親族も対象です。よって、家族構成次第では高い減税が望めます。
ところで、減税措置には所得税を抑えることにつながる「基礎控除」があります。所得控除の一つである基礎控除では、控除額が納税者の合計所得金額に応じて決められています。一方、定額減税では、所得税と住民税の最終的な納税額から合計4万円が控除されます。つまり、これら2つの措置は控除されるタイミングに違いがあるのです。
例えば、年間所得金額200万円の人が所得税10%を納税するとき、基礎控除48万円を適用した際の課税所得金額は152万円で、所得税額は15万2000円です(実際の計算では源泉徴収や税額控除などほかの制度によって課税所得金額は変動します。あくまで基礎控除のみで考えた場合である点にご注意ください)。
この事例では、基礎控除前と後での差は4万8000円です。定額減税の減税額と大きく変わりません。数字上では48万円と4万円で10倍以上の差がありますが、減税効果は同程度だと分かります。
定額減税の減税額
定額減税における具体的な減税額は、図表1の通りです。
図表1
所得税 | 本人:3万円 生計をともにする配偶者または扶養親族:3万円×人数 |
住民税 | 本人:1万円 控除対象配偶者・生計をともにする配偶者・または扶養親族:1万円×人数 |
国税庁「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」より筆者作成
図表1の金額は給与所得者と個人事業主のどちらでも変わりません。また、共働きである場合はそれぞれが納税者であるため、個別に定額減税が適用されます。
個人事業主と給与所得者における定額減税の違い
定額減税の流れは、個人事業主と給与所得者で異なります。
図表2
【個人事業主】
所得税 | 1. 2024年分の確定申告分の納税額から差し引かれる 2. 予定納税は納税額から計算した1期分から控除額が差し引かれる 3. 同一生計配偶者・扶養親族の定額減税分は個別に減額申請手続きを行うことが必要 |
住民税 | 1. 2024年6月の第1期から定額減税分が控除される 2. 6月に第1期・8月に第2期・10月に第3期・2025年翌年1月に第4期を口座振替や納付書で納める必要がありますが、1年分の一括支払いも可能 3. 控除しきれない分は2024年8月の第2期以降に順次控除される |
国税庁「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」より筆者作成
図表2の予定納税とは、同年5月15日時点で前年分の所得金額や税額等を基に計算した納税額が15万円以上の場合、所得税の一部を事前に納付する制度です。
図表3
【給与所得者】
所得税 | 1. 勤務先が「年調減税事務」を実施して正しい税額と定額減税の控除額を精算 2. 2024年6月以降、最初に支払われる給与や賞与から給与天引きされる所得税額から、定額減税の控除額が差し引かれる |
住民税 | 1. 2024年6月分の徴収はない 2. 控除分を差し引いた税額を同年7月~2025年5月までの11ヶ月間で均等に分割して給与や賞与から徴収される |
国税庁「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」より筆者作成
定額減税は適用時に余った控除分は次回または翌年に繰り越されるため、対象者全員に合計4万円分の減税効果が適用されるように設計されています。
定額減税は高い減税効果がある
定額減税は基礎控除と違い、納税額から合計4万円分が控除される制度です。余った控除は繰り越されるため、対象者は所得の多少にかかわらず平等に減税されます。今のところ、来年度以降の本制度の実施は政府としては考えていないようですが、基礎控除と同等の減税効果が期待できるため、毎年の納税で負担が多い方にはありがたい制度といえるでしょう。
出典
国税庁 定額減税について
国税庁 給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.2040 予定納税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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