「金」を売って利益が出たら確定申告は必要? 株式投資の申告方法とは違うの?
配信日: 2024.12.29
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
金価格の高騰:2023年の背景
金価格はここ20年で大きく上昇し、2000年以降では約10倍、直近の2023年8月には国内小売価格が1グラム1万円を突破しました。この歴史的な高値更新は、ウクライナ問題や世界的なインフレ、ドル円相場の変動などの影響を受けています。金は安定した資産として評価され、地政学的リスクや通貨価値の変動時に注目を集める傾向があります。これらの要因から、多くの人が資産の一部を金として保有する意義を見直しているのです。
金の売却益にかかる税金の基本
金を売却した際に税金が課されるのは、売却額から購入額と売却費用を差し引いた「売却益」に対してです。具体的には、「売却額-購入額-売却費用=売却益」という計算式で求められます。購入額が不明な場合は、売却額の5%を購入額として計算するルールがあり、この場合は売却益が増えるため税負担が大きくなることがあります。最終的に税金が課されるのは、売却益から特別控除などを適用した後の「課税所得」であり、この金額をもとに税額が決まります。課税所得は所有期間や他の所得との合計によっても影響を受けるため、注意が必要です。
株式投資と金の売却益の違い
株式投資と金の売却益には課税方法に大きな違いがあります。
株式投資の場合、課税方法は「分離課税」であり、売却益には所得税15.315%と住民税5%を合わせた一律20.315%の税率が適用されます。また、株式投資では損益通算が可能で、他の株式の売却損と利益を相殺することで税負担を軽減する仕組みがあります。
一方で、金の売却益は「総合課税」が適用され、他の所得(給与所得や事業所得など)と合算して累進課税が課されます。
そのため、金の売却益にかかる税率は所得金額に応じて5%から45%、住民税を含めると最大55%に達する可能性があり、株式投資と比べて税率が高くなる場合があります。
確定申告は必要? 金の売却益に関するルール
金の売却益について、確定申告が必要となるのは年間50万円以上の利益が出た場合です。
この場合、翌年の3月15日までに申告を行う必要があります。特に、一度の売却額が200万円を超える場合、買取業者が税務署に支払調書を提出するため、申告漏れが後で指摘される可能性もあります。
一方で、給与所得者で年収2000万円以下かつ給与以外の所得が20万円以下の場合には、確定申告が不要になる特例があります。
ただし、この場合でも住民税の申告が必要となるため、忘れずに自治体へ手続きを行うことが重要です。
金の所有期間と税負担の関係
金を売却した際の税負担は、その所有期間によって異なり、短期譲渡所得と長期譲渡所得で計算方法や優遇措置が変わります。所有期間が5年以内の場合は課税対象額が大きくなる傾向があり、5年を超える場合には税制優遇が適用されるため、課税額が軽減されます。それぞれの計算方法を具体例を交えて確認しましょう。
所有期間が5年以内の場合(短期譲渡所得)
金の所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」として扱われ、課税対象額は「売却額-購入額-特別控除50万円」で計算されます。たとえば、100万円で購入した金を300万円で売却した場合、課税所得は「300万円-100万円-50万円=150万円」となります。この課税所得に累進課税の税率が適用されるため、他の所得が多い場合は高い税率がかかることがあります。
所有期間が5年超の場合(長期譲渡所得)
金を5年以上保有して売却する場合は「長期譲渡所得」となり、税制上の優遇措置が適用されます。課税対象額は「(売却額-購入額-特別控除50万円)×1/2」で計算され、短期譲渡所得と比較して税負担が軽減されます。たとえば、同じ条件で計算すると「(300万円-100万円-50万円)×1/2=75万円」が課税所得となります。長期保有することで、課税対象額を抑えることが可能な点が大きなメリットです。
金投資口座と金貯蓄口座の税務上の取り扱い
金投資口座や金貯蓄口座で得られる利益は、金地金の売却とは異なる税務扱いがされます。これらは金融類似商品の収益とみなされ、特定の税率が適用されます。
金投資口座や金貯蓄口座で得られる利益には、一律20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率で源泉徴収が行われます。この仕組みにより、他の所得と合算して確定申告をする必要がありません。給与所得などの影響を受けないため、税額が安定している点が特徴です。また、扶養控除の判定基準にも含まれないため、負担を軽減する仕組みが整っています。
まとめ:正しい知識で賢く資産運用を
金の売却益において重要なのは、年間の利益が50万円以下であれば特別控除によって税金が発生しない点です。この控除は短期譲渡所得にも長期譲渡所得にも適用されるため、事前に計算を行い、控除をうまく活用することで税負担を軽減することが可能です。また、総合課税の仕組みによって、他の所得と合算されることで税率が変動する点も理解しておくべきポイントです。
売却タイミングを所有期間や特別控除を考慮して計画することで、節税効果を最大化できます。不明点があれば税務の専門家に相談し、正確な情報をもとに判断することが大切です。正しい知識と計画的なアプローチで、効率的かつ有利な資産運用を実現しましょう。
出典
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー