更新日: 2020.01.31 確定申告

会社員に多い社会保険料の控除漏れ。家族分は確定申告が必要って知っていますか?

会社員に多い社会保険料の控除漏れ。家族分は確定申告が必要って知っていますか?
会社員の皆さまは、医療費控除などを受けない限り、税金の申告を年末調整で済ますことができ、確定申告は不要です。ご自身の社会保険料控除も当然、年末調整で済んでいます。今回は、会社員に多い社会保険料の控除漏れについてお話しします。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

家族それぞれの社会保険と社会保険料控除

【家族構成の想定】
夫…45歳・会社員/健康保険・厚生年金保険・雇用保険
妻…45歳・フリーランス/国民健康保険・国民年金
子A…20歳・大学生/健康保険の被扶養者・国民年金
子B…19歳・フリーター/国民健康保険
 
妻はフリーランスで、社会保険の扶養基準を超える収入を得ているので、妻自身で国民健康保険と国民年金に加入し、それぞれ保険料を払っています。そのため、妻自身の確定申告でこれらの社会保険料控除を受けます。
 
子Aは大学生なので、健康保険については、夫(=子にとっては父親)の被扶養者になっています。それに伴い、健康保険料の負担はなく、健康保険については社会保険料控除の適用はありません。
 
しかし、子Aは20歳を過ぎていますので、国民年金保険料の支払いの義務があります。この国民年金保険料は納付書によって、(当該ケースの場合)夫(父親)が払っています。またこの場合、子Aの国民年金保険料については、保険料を払っている夫(父親)が社会保険料控除を受けることができます。
 
子Bはフリーターで一定以上の収入があり、健康保険に関しては夫(父親)の被扶養者になることはできません。そのため、自ら国民健康保険に加入しています。そして、この国民健康保険料は子Bが負担しています。
 
また、子Bは経済的には自立していますので、「生計を一にする」という状況にも当てはまりません。つまり、子Bの社会保険料控除(=国民健康保険料)は、子Bだけが受けることができるのです。なお、子Bは19歳ですので、国民年金保険料の納付の義務はありません。
 

社会保険料控除を受けるための手続き

さて、子Aの国民年金保険料に関して、社会保険料控除の手続きです。
 
国民年金保険料を、毎年1月1日~9月30日までに、国民年金保険料を納めた実績のある方については、秋ごろに社会保険料(国民年金保険料)控除証明書が送られてきます。2019年の場合ですと、10月31日に日本年金機構が発送しています。
 
子Aの国民年金保険料に関する社会保険料(国民年金保険料)控除証明書が届いた後で、夫(父親)が年末調整の手続きを行うのでしたら、夫(父親)は、他に申告がなければ確定申告の手続きは不要です。
 
しかし、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書が届く前に夫(父親)の年末調整が済んでいる場合は、確定申告で控除を受けます。
 
なお、国民年金保険料を初めて納めたのが10月1日~12月31日の場合は、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書は2月の発送です。2019年の場合、日本年金機構は2020年2月6日に送るようです。
 
このときは、夫(父親)の年末調整は間に合いませんから、確定申告をすることで子Aの国民年金保険料についての社会保険料控除を受けることになります。
 

留意点

会社員の場合、「20万円以下の雑所得は確定申告が不要」と言われていますが、それは年末調整で所得税の計算が済んでいる人に限られます。
 
例えば、本稿の例のように、「子Aの国民年金保険料に付き社会保険料控除を受けるために確定申告を行う」や、「医療費控除を受けるために確定申告を行う」など、年末調整だけで所得税の計算が済んでいないような場合ですと、たとえ20万円以下の雑所得であっても、申告書に記載しなくてはならないのです。
 

まとめに代えて

家族のあり方や働き方の多様化に伴い、本稿の例に挙げた家族のように、家族の社会保険も複雑になっている場合があります。必要な書類と情報を集めて、賢く年末調整&確定申告を行いましょう。
 
(引用)
国税庁「No.1130 社会保険料控除Q&A」
国税庁「生計を一にする」
日本年金機構「令和元年の社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について」
国税庁「No.1130 社会保険料控除」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役


 

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